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東芝メモリ売却、WDに屈服する「新・日米連合」構想が浮上

2017年05月18日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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WDのスティーブ・ミリガンCEO(左)と、東芝の綱川智社長(右)は会談したが、互いの主張は対立 Photo by Reiji Murai

東芝による半導体フラッシュメモリー事業の売却作業が難航する中、「新・日米連合」の構想が浮上している。その主体は、東芝と真っ向から対立する米ウエスタンデジタル(WD)。経営体力の弱った東芝に攻勢をかけており、入札交渉は混迷の度を増している。(「週刊ダイヤモンド」編集部 千本木啓文、村井令二)

 いよいよ強硬手段に打って出た。東芝の半導体新会社、東芝メモリの売却をめぐって、同事業の提携相手である米ウエスタンデジタル(WD)は米国時間14日、売却の入札手続き停止を求めて国際仲裁裁判所に申し立てを行ったのだ。WDは、東芝による一方的な事業売却は合弁契約に違反すると主張している。 

 一方、入札手続きは正当とする東芝は3日付の書簡で、WDと共同運営する四日市工場(三重県四日市市)のデータサーバへのWD社員のアクセスを米国時間15日に遮断すると警告した。泥沼の抗争に突入するかに見られたが、当初強気だった東芝は一転、16日に対抗措置の実施を見送った。

「契約上、事業売却にWDの同意を得る必要はない」と自信をみせていた東芝が「矛を収めた」背景には、これ以上の対立激化で売却手続きを遅らせることができないという弱みがある。この一方でWDのステーブ・ミリガン最高経営責任者は、10日に東芝の綱川智社長と会談したのに続き、経済産業省、産業革新機構、主力取引銀行幹部らを相次ぎ訪問し、東芝の「外堀」を埋め始めている。

 ここで急浮上したのが、WDが官民ファンドの革新機構と共同する「新・日米連合」の枠組みだ。これまでの日米連合は、米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)と革新機構を中心として、富士通など国内企業の出資を集める日本連合を加えるのが基本的な枠組みだった。

 これに東芝と対立するWDの合流が焦点だったが、新たな日米連合の構想では、過半数の出資にこだわるWDが新会社に51%を出資して主導権を握り、革新機構と政投銀が合わせて6000億円程度、残りを銀行団が融資する。銀行団は、東芝メモリが生み出すキャッシュフローを担保にして買収資金を借り入れるLBO(レバレッジド・バイアウト)で資金を拠出する。

 一方で、第1次入札から東芝メモリの入札に参加していたKKRは、革新機構と共同入札する方向で調整していたが、日本連合の資金がなかなか集まらず、東芝とWDの対立が先鋭化する中で、静観する構えに転じた。新・日米連合の合流についてもメリットを見極めながら検討する姿勢だ。

 ただ、東芝の提携相手だった旧サンディスクを170億ドル(約1兆9000億円)で買収したばかりのWDには資金の余裕はない。東芝のフラッシュメモリー事業を運営するには毎年2000~3000億円規模の巨額投資が必要で、WDも16~18年度に50億ドルもの巨費を四日市工場に投資する計画だ。東芝メモリの支配権を手に入れればWDの投資負担は増大するため、3~4年後の新規株式公開(IPO)を目指すスキームが有力だ。

WDへの不信ピーク
主力行の圧力で対抗断念
2次入札前に混沌

 だが、依然として東芝は、WDが主導権を取ることに抵抗を示している。

 10日の東芝とWDのトップ会談では「東芝メモリの主導権を取りたい」と主張するミリガンCEOに対し、綱川社長は「独禁法の問題はどうするのか」と応酬した。

 東芝メモリとWDのフラッシュメモリーの市場シェアを合わせると、首位サムスンに拮抗し、買収に必要な独禁法の認可取得が難しくなるのは当初からの懸案。中国などで承認が遅れて売却完了が18年3月末に間に合わなければ、東芝は2期連続の債務超過になり、上場廃止となる。

 もっとも東芝のWDに対する不信は、独禁法だけの問題ではない。2000年に四日市工場の共同運営で契約を結び、以来、16年間にわたって提携関係を継続してきたサンディスクをWDが買収したのは16年5月だ。サンディスクとは長期にわたる友好関係を築いたが、WDとの付き合いはたった1年。

 この間、サンディスク共同創業者のサンジェイ・メロートラ氏はWDを去り、競合するマイクロン社長に転じた。東芝側とフラッシュメモリーの生産を共に拡大してきた多くのサンディスク出身の幹部の多くもWDを去り、「パートナーの社風はすっかり変わった」(東芝幹部)と嘆きが聞こえる。

 その上で突如として浴びせられたのが、東芝メモリ売却手続きの「妨害行為」(同)だ。東芝では「弱みに付け込んで事業を乗っ取ろうとしているのでは」(同)との不信感がピークに達している。

 だが、主力取引銀行のある幹部は「2年連続の債務超過を避けるには、なるべく早くフラッシュを売るしかない」と東芝に早期売却を迫り続けている。WDが申し立てた国際仲裁裁判所の調停が長引くことは、明らかに東芝に不利。WDの揺さぶりを受けた東芝の対抗措置は、主力行の圧力で封じられたが、急浮上したWDを主体とする新・日米連合の構想は東芝側にとって受け入れ難い。19日に2次入札を控えた東芝メモリ売却の行方を一段と混沌とさせている。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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