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共感度MAX!JAWS DAYS 2017レポート 第6回

JAWS DAYS 2017の初っぱなは業界カルチャーをえぐるエモいセッション

鍵は実践とリスペクト!組織と自分をクラウド対応にする現実解とは?

2017年05月09日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●JAWS-UG写真班(中井勘介、金春利幸、加我 貴志、平野文雄)

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若者だけじゃなく、経営者だってPractice over Theory(小野)

斎藤:反論するつもりはないんですけど、小野さんみたいにテクノロジー大好きな人であれば、新しい取り組みに気持ちも向くでしょう。でも、経営者って、意外と世の中のトレンド勉強していないですよ。残念ながら。だから、未だに「クラウドはセキュリティが怪しい」とか、「あんなモノ使えるのか」という話を普通にする。

ネットコマース 代表取締役の斎藤昌義氏。2009年よりITの最新トレンドやビジネス戦略について学ぶ「ITソリューション塾」を主宰。最新刊は「未来を味方にする技術」(技術評論社)

大谷:(Amazon S3のダウンを念頭に)実際この前、落ちたじゃないかと(笑)。

斎藤:そうそう。「クラウドは悪い、心配だ。お客様もそう言っている」みたいなネガティブな話で、自分たちが過去にやってきた存在意義を否定されないようにしているんです。決してクラウドに関心がないわけじゃないけど、「まだだよね」という心のブレーキがかかってしまっていると思うんですよね。

大谷:実際、上司が偵察ついでに若い者をJAWS-UGみたいなコミュニティに差し向けるってよくある話だと思うんですけど、コミュニティに参加した若い者は概して意識高くなって戻ってくる。「うちもすぐクラウドやりましょう」と掛け合って、上司が待ったをかける例って、世の中にままあるんじゃないかと思います。

小野:その観点で言うと、私が好きな言葉で伊藤穣一さん(MITメディアラボ所長)の「Practice over Theory」があります。理論よりもまずは実行しろという意味ですね。

実際あった話をします。最近、うちの会社はクレジットカード会社の基幹系システムを作っているので、いわゆるガチガチのSIerです。だから、役員とかは、ブロックチェーンやビットコインに対して、けっこう斜に構えて見ているんです。「当社とは当分はあまり関係ない」とか言うわけです。これはPractice over Theoryで行こうと思って、役員の方にスマホのQRコードを撮ってもらって、登録したインディーズウォレットに、ビットコインを送金するんです。

大谷:キター!!となるわけですね。

小野:そうです。経営者だって、役員だって、1人のエンジニアとしての興味はやっぱりあるので、体験するとけっこう楽しいんですよ。クラウドに対して懐疑的な人も、まずはAWSでEC2のインスタンス立ててもらえば、やっぱりキター!!になるはずなんです。

だから、Practice over Theoryは若い人だけじゃなくて、経営者に対しても有効。うちは社長にもビットコインを体験してもらいました。とにかく触らせちゃえば、役職とか、年齢関係なく、その手触りみたいなものはわかってもらえると思いますけどね。

大谷:出版社の私が言うのもなんですが、新しい技術を学ぶのに、特に年配の方は書籍から入りますからね。まずは体験してもらう方が重要なのかもしれません。

斎藤:それくらいガンガン突き上げる小野さんみたいな人がいて、それを招聘するような経営者がいれば、組織を変える力を生み出せると思うんです。でも、そういうメンタリティを持ってない人は本当に辛い。クラウドだと短期的に工数が稼げないというだけではなく、新しいサービスを作るという判断が経営的にできないこともある。ネガティブなことばっかり言ってますが、そういう問題点は根幹にあると思いますよ。

なんとかしなければと思いつつ、行動していない会社も多い(斎藤)

大谷:では、工数を稼げないという理由でクラウドをやらないSIerや受託開発の会社だけが業界でネックなのかいうと、意外とそうでもない。ユーザー企業側にもあるのじゃないかというのが、次の話題です。

SIerの課題、ユーザーの課題

現在のIT投資はIT部門だけがになっているわけではない。すでにIT部門が決裁できるIT予算は全体の半分を切っているという調査会社のレポートもあります。今まで、われわれのようなIT媒体はIT部門の方に製品やサービスを販売するため、広告という形でベンダーを支援してきました。でも、先ほどのようなデータがあると、そもそもうちの相手にする読者ってIT部門だっけ?という疑問が生じる。実際、現場部門がIT部門を介さずに外部にモバイルアプリの開発を委託してしまうことなんて散見されます。そんな中、IT部門も変わらざるをえないのではないかというのがテーマです。斎藤さん、どうお考えになりますか?

斎藤:僕は「システムインテグレーション崩壊」や「システムインテグレーション再生の戦略」といった本を書いてきて、多くの読者から「その通りです」という声をいただきました。でも、なんとかしなければと思いつつ、行動していない会社もものすごく多い。これはなぜかと考えたら、「お客様が変わらないから」という結論に至るんです。つまり、お客様がこれまでと同じ工数前提の見積もりを依頼する。金額に関しても、効率を上げれば上げるほど、工数が下がるので、お金を払ってくれない。SIerや受託会社の努力は報われないし、モチベーションも当然上がらない。だから、「悪いのはお客様」というロジックも成り立ちうるんです。

そういう状況をなんとか変えられないかと思って書いたのが、今回上梓した「未来を味方にする技術」です。ここに来ている人で、まさか読んでない人はいないと思いますが(笑)、結局ITの専門知識を持たない経営者や事業部門の方に、ITの価値、自分たちの仕事をどのように変えていくのか、生き残るためにはなにが必要なのかを、テクノロジーの話なしに伝えたいと思って書いたのがこの本です。こういう本を読むことでお客様が変わり、SIerがお客様に提供するものが変わってくれるきっかけになってくれるといいなと思っています。

大谷:なるほど、システムインテグレーション崩壊や再生への道の後にこの本が来たのはそういう意図があったんですね。

斎藤:もう1つ、こういう価値を訴求するのは、本質的にはSIerだと思っています。SIerの方々からは口をそろえて、「経営者や事業部門に会うにはどうしたらいいですか?」って聞かれるんですけど、個人的には「なにを言ってるんだ。お客様に語る言葉を作れよ」と言いたい。テクノロジーではなく、ITがどんなにお客様の仕事の役に立つか、伝えられないようなエンジニアや営業が問題だと思う。IT部門じゃなくて、エンドユーザーを変えれば、結果としてもっといい世の中になると信じています。

大谷:紹介された本をいきなりディスるのはなんですが、私からすると、この本の内容はけっこう知っている内容。簡単なんです。でも、経営者の方がこれを読んだら、目から鱗なんですよね。AIや自動運転のインパクトも、この文脈だったら、経営者や年配の方にも伝わるのではないかと感じました。

斎藤:そういう思いで、難しくないように書くのは、僕としてのかなりチャレンジでしたね。

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