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老朽化原発はクリーンエネルギー転換の足かせ

2017年04月27日 01時24分更新

文●Jamie Condliffe

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原子力発電は、二酸化炭素排出量を削減するために欠かせない。しかし、安全への不安から新設できない状況にあり、老朽化した原発を稼働させ続ければ、再生可能エネルギーへの転換を阻害しかねない。唯一の落し所は、新型の小型原子炉だ。

古い原子力発電所の寿命を無理に引き延ばすことは再生可能エネルギーの普及を妨げかねない。

原子力産業は現在、東芝の原子炉事業崩壊の発覚により、切迫した状況にある。MIT Technology Reviewが以前にも伝えたとおり、日本のテクノロジー巨大企業は現在、唯一の新しい原子炉を米国内で建設中だった。東芝が次世代型の小型原子炉の事業化に失敗すれば、今後の発電所新設の勢いを大きく損なうことになる。

実際、原子力産業は数十年に渡る不振が続いている。規制の強化、建設コストの急騰、さらに原発の悪いイメージは、原子力施設の新設計画をいくつも阻んできた。

問題は、原子力が安定的なベースロード電力を供給できる唯一の低炭素エネルギー源であることだ。風力や太陽光といった再生可能エネルギーは、時間帯や気象条件によって発電量が変化してしまう。新たな原子力発電所の稼働予定がひとつもない状況で、二酸化炭素排出量抑制の圧力にさらされ、米国のいくつかの州では旧式の原子炉を老朽化した状態で稼働させる状況に追い込まれている。

ブルームバーグの記事によれば、ニューヨーク州とイリノイ州は古い施設を稼働し続けるために数十億ドルを費やしている。コネチカット、ニュージャージー、オハイオの各州も同様の考え方について州同士で検討中だ。コストのかかるプロセスではあるが、風力や太陽光ではまかなえない需給格差を埋めるために、天然ガス発電所を新設する必要はない、ともいえる。

ただし、ブルームバーグの記事では、こうした投資が再生可能エネルギー業界に与える悪影響を指摘している。クリーンエネルギーの資金提供元は、原子力発電所の稼働維持のため、厳しい状況にある主な再生可能エネルギーである、太陽光と風力発電プロジェクトから撤退しようとしている。一方で、古い原子力発電所を稼働させ続けることで、あまりにも過剰なベースロード電力の供給が続いており、エネルギー価格が低価格に保たれ、再生可能エネルギーへの投資があまり魅力的でなくなっている。

つまり、究極の代替エネルギー源(単に古い原子力発電所を稼働しなくて済む方法)にふさわしいものは何もないのだ。ジョージア大学のデビッド・ガッティ准教授とスコット・ジョーンズ博士(ジョージア大学国際貿易安全保障センター所長)がフォーブズで議論しているように、単純に原子力発電所の利用を一斉に減らすのでは、 パリ環境協定が求める排出目標の達成はまず不可能だ。それではアメリカの原子力科学技術が弱体化してしまう。

現実的な落し所は、おそらく新型の小型原子炉だろう。小型原子炉なら、米国は、安定的なクリーンエネルギーによるベースロード電力を確保しながら、再生可能エネルギーの利用を増やす余地を残せる。最終的に米国民は、古い発電所を送電線から切り離さなければならないのだ。

(関連記事:Bloomberg, Forbes, “東芝の原子力事業崩壊は米国の原子炉新設と研究開発への大打撃になる,” “Giant Holes in the Ground,” “MITが次世代原子炉の研究を再開”)


転載元(MIT Technology Review)の記事へ

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