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AK380との差はどれだけあるか

注目の新プレイヤー「KANN」を比較とロードテストで遊び尽くす

2017年05月02日 15時00分更新

文● 天野透/ASCII

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AK380そっくりな音に驚く

 それでは肝心の音を聴いてみよう。リファレンスに使用したイヤフォンはラディウスの「ドブルベ ヌメロ4」、これに発売されたばかりの純正バランス駆動用ケーブルを使っている。

 まずは定盤中の定盤として「Waltz for Debby」。ビル・エヴァンスの傑作でハイレゾ初期からリファレンス音源として用いられており、今でもハイレゾ売上チャートにひょっこり顔をだすことがある。

 ピアノの音はなかなかしっかりと身の詰まったもので、普段使っているAK380にそっくり。詳細に聴き比べをしてみないとその違いを言い当てるのは困難かもしれない、というのがファーストインプレッションだ。さすがに同じDACを使っているだけある。強いて言うならば、AK380よりは響きが少しあっさり目で、音形が若干丸いというところか。

 また、低音はKANNの方が耳に入ってきて、ダブルベースに存在感を感じる。これはAK380を上回る高出力アンプの効果だろう、なかなかに骨太サウンドを聴かせてくれる。

 定番タイトルをもうひとつ。イーグルスの「Hotel California」もリファレンスとして名高い楽曲で、ハイレゾ機材の試聴用音源としてそこかしこで使われている。肝心のKANNとの相性だが、情報量の多い現代的なサウンドは変わらず。音の丸さはこちらの方が少し顕著で、ヴォーカルがちょっと出てきているだろうか。

 ベースもやはり存在を示しているが、やはりAK380と比べると少々あっさり気味に感じる。少なくとも価格はおよそ4倍違うが、音も4倍違うのかと問われると、絶対にそんなことはないと断言をする。バランスがかなりハイレベルなまとまりを見せており、音源を選ばずなんでも鳴らせそうな予感がした。

ご存知「Waltz for Debby」「Hotel California」。まずは定番中の定番で基本的なパフォーマンスをチェック

比較試聴をやりたくて仕方がない、ならばやってしまおうじゃないか

 今までは頭の中のイメージと比較をしていたが、ここまでくると本格的にAK380と比較がしたくなる。ということで、ここからは比較試聴を試みた。さて、5倍の価格差は音にどう影響するだろうか。

KANNの音がAK380とよく似ているものだから、比較したい気持ちが沸き上がってきた。手元に機材があるのだから、これはやるしかないっ!

 まず試した楽曲は、カルロス・クライバー指揮、ウィーン・フィルハーモニーの「ベートーヴェン 交響曲第5番 第4楽章」。これまた言わずと知れた定番で、オーケストラのダイナミズム表現を主眼に比べてみた。まずKANNは単独試聴から感じていた細部の丸さが指摘できる。カッチリと細部を出すAK380と比べてみると、ピアニッシモは極わずかに明瞭さに欠ける。

 KANNの音はほんの気持ちのっぺり気味で、空間表現はAK380の方が一枚上手だ。もっともこれはDACを2個独立で使っているAK380と比べて、の話なわけだが。そのほかフォルテッシモでわずかな、しかしながら決定的な迫力の差を感じたほか、ピアニッシモの緊張感もAK380の方が上手に聴こえた。KANNはドキドキするけどあと一歩が足りないが、AK380には今にも消えてしまいそうな繊細さがあった。やはり価格の差は大きいのか……。

 こういった差はDSD 5.6MHzになるとよりハッキリする。2015年末に開かれたT-SQUAREのライブ音源から、F1のテーマとして有名な「Truth」を聴いてみた。比較すると音のキレの差がハッキリしていて、これは明らかにAK380の方が音の鮮度が上だ。しかしベースをはじめとした音の厚さはKANNの方が上な印象。1音1音にエネルギー感があり、塊がぶつかってくるようなパワーをKANNからは感じた。

 ただ音の勢いという観点ではPCM系よりも明確に違いが聴かれ、KANNの中音楽器は少々埋もれ気味。ドラマチックなメロディーを奏でるウインドシンセの気持ちよさもAK380が上だ。

 せっかくなのでアニソンも聴いておこう「涼宮ハルヒの完奏」から、長門の超絶ギター「God knows…」をチョイスしてみた。ハイハットやベースといった高低それぞれの音の鋭さはAK380に軍配。長門ギターのキレもAK380が優れている。

 だが平野綾のリードヴォーカルはKANNの方がエネルギーを感じた。バックバンドは少々控えめで、その分主役の歌が前に出てくるといった感覚だろうか。このあたりは高出力アンプの表現力によるものだと推察できる。もしかするとKANNはヴォーカル曲を心地よく聴くのに最適なのかもしれない。

クラシック、フュージョン、そしてアニソンで音質比較。やはり基本はAK380がいいが、ヴォーカルのパワー感はKANNの方が好印象だった。ハイパワーアンプがいい効果を与えている

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