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ボストン連邦準備銀行副総裁、ブロックチェーンの問題点を指摘

2017年04月20日 05時19分更新

文●Mike Orcutt

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MITのロブレ・アリ研究員(イングランド銀行電子通貨部元部長)とボストン連邦準備銀行のジェイムズ・クーニャ副総裁は、ブロックチェーンが金融システムを揺るがすには、まだ多くの課題があると指摘した。

ビットコインの出現は金融業界を慌てさせている。業界幹部や規制当局は、電子通貨やブロックチェーンを、仲介者を省いて金融システムを効率化するテクノロジーと見なしている(“What Bitcoin Is, and Why it Matters”参照)。しかしビットコインがそれ以上のことを達成し、世界の金融をすっかり変えてしまうことはあり得るだろうか?

まずは決済を正すことだ、とふたりの中央銀行幹部はいう。ふたりともブロックチェーン・テクノロジーを中央銀行の新たなツールに変えることに着目している。

イングランド銀行電子通貨部元部長で、現在はマサチューセッツ工科大学(MIT)に在籍するロブレ・アリ研究員は「決済は他のすべての基盤になります」と4月18日にMIT Technology ReviewとMITメディアラボが共催した「ブロックチェーンのビジネス」カンファレンスの壇上で述べた。

ビットコインは「決済がどうなるか根本的に再考しています」とアリ研究員はいう。ビットコインの基盤になるブロックチェーンは、従来の決済システムに比べ効率がいいことで人気となり、金融業界の注目を集めた。

アリ研究員とともに登壇したボストン連邦準備銀行のジェイムズ・クーニャ副総裁(財務・金融サービス担当)は、中央銀行は、決済以外にも、個人認証やトランザクション検証、回復、安全システムなど、ブロックチェーン・テクノロジーが既存のシステムに改良を加える可能性にも関心がある、と述べた。

仲介者を排除するとは「信用関係を構築していた人がいなくなる」ことを意味する、とクーニャ副総裁はいう。「他人と直接取引するのです。これは法的にも従来とは全く異なる構造であり、相手側との間でどんなリスクがあるかを理解しなければいけません」

たとえば、送り手と受け手は取引成立をどのように知るのだろうか? 現在の金融システムでは、電信送金は取り消せない。連邦準備制度も返金してくれない。金融システムの利用者にとって、システムの信用は重要だとクーニャ副総裁はいう。ブロックチェーンのプラットフォームでは、取引成立の確定は、プラットフォームごとに異なる管理構造に依存する。「効率は魅力的ですが、決済機関がいつ終了するかわからないとすればどうでしょう 」とクーニャ副総裁はいう。連邦準備制度はブロックチェーンに関心はあるが、独自の電子通貨を発行する計画は今のところないという。


転載元(MIT Technology Review)の記事へ

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