メルマガはこちらから

PAGE
TOP

グロースハックは汗をかいて取り組め!ITサービスに営業が必要な理由

国内外3200アプリ以上に導入されたサービスに学ぶ改善方法

連載
スタートアップのコーポレートサイトまとめ2016-2017

提供: デジタルステージ

1 2

知見を公開するオウンドメディアで最後に大事なのは、結局は人

洪:「Growth Hack Journal」というオウンドメディアも発行されていますね。こちらを開始した狙いはどこにあるのですか?

Growth Hack Journal

平田:BtoBビジネスでは、コンテンツマーケティングが重要です。我々の知見を公開することで、インバウンド型の受注件数が見込めると判断しました。始めるからには腰を据えて取り組まなければなりません。最低1年は成果が出なくても続けると決意してスタートしました。

洪:そこまで本気で取り組むというのはすごい決意ですね。

平田:専任担当者も置いています。その1人、伊藤は私がある会社にセールスに行った際、面談相手として出会いました。話しをしているうちに、「1年間、当社に出向しませんか?」と誘ったのですが、出向制度はないということで交渉しているうち、入社してくれることになったんです。

洪:セールス先で必要な人材をスカウトしてしまうというのはすごいですね。実際にオウンドメディアを開始されたあとの反響はどうだったのでしょうか?

平田:公開している内容を見て、「こんなにノウハウを公開してしまって大丈夫なのか?」という声もいただきます。が、オウンドメディアをきっかけとして製品のリードを作ることができますし、「この会社は、ツールを使っていて困ったことがあっても助けてくれる会社なんだ」とお客様に認知してもらう流れを作ることができれば、むしろプラスに働くと判断しました。

洪:『BiND』を使っているユーザーの多くは従業員10人以下の事業規模で、いわゆるスモールビジネスでの活用がメインで、社内にウェブ担当者や専門家がいないケースがあります。実際にセミナーで、ユーザーが機能を使いこなせていない事実を目の当たりにして、操作マニュアルではカバーしきれないことを痛感したんです。もっとTIPS的なことや実務で役立つ応用的なことを提案していかなければ真の意味でのユーザーは増えていかないと考えました。
 うちのデザインチームは日々サイトをBiNDで更新しているので、ある意味、トップクラスのヘヴィーユーザーです。カスタマイズ方法も知っているし効率化にも詳しい。そのノウハウを惜しみなく広く提供していくことでユーザーの、ひいてはサービスの成長を促そうと。なので、全デザイナーが自分のノウハウを記事化することをタスクにしています。
 機能の使い方だけでなくウェブを通してのものの伝え方など、目的に適う内容を届けられるよう、意識して書いています。我々デザイナーにとっては当たり前でも、一般の方には知られていないノウハウなどもあるので、さまざまなリテラシーのユーザーさんに届く記事を作りたいと思いますね。

BiND CAMP スキルレベルごとにWeb制作のノウハウを解説するオウンドメディア

平田:我々が海外の事例紹介をするのも、海外は日本に比べアプリ内マーケティング(プッシュ通知やアプリ内メッセージの巧拙を利用したグロースハック手法)のスキル、リソースについて3年くらい先行しています。これを翻訳して公開することで、本気でオウンドメディアに取り組んでいることがアピールできると考えました。実際に業界のインフルエンサーの方が高評価してくれているので、狙った通りの効果が出ていると思っています。
 もちろんKPIもきちんと算出しています。新たにReproに興味を持ってもらうことが狙いで起ち上げたものですから、オーガニックのトラフィックはきちんと追いかけています。どういった用語から興味を持ってもらっているのかといったことも重要です。
 ただし、興味を持ってもらって、「無料だったらサービスを利用できるよう、登録してみるか」と登録してもらっただけではダメなんです。そのまま使わずに放置という方も多いので、登録してもらったら、その後はフォローする営業活動を行なってこそ成果に結びつくのです。

洪:オウンドメディアでの反応から、営業活動までつなげていくのですか?

平田:日本で業績を伸ばしている外資系企業のマーケティング活動を分析したことがあるんですが、サービスが優秀であるだけでなく、きちんと営業組織を持った企業が支持されているんですよ。この点を忘れると痛い目にあいます(笑)。これも自分達の失敗から学んだことです。
 海外だと、営業活動を行なうことなく大きく業績を伸ばしている企業があるので、自分達もそれでいけるだろうと思っていたら、とんでもありませんでした。ITサービスの会社は、営業せずにつぶれてしまうところが結構あります。当社もこれではダメだと、営業チーム、お客様が成長することをサポートするカスタマーグロースというチームがあることで、業績につなげることができるようになりました。

洪:オウンドメディアを作り、それで目的を達したと考える企業が多いですが、それだけで終わってはダメだということですね。

平田:とくに社内の部署間での連携は意識するようにしています。例えば、カスタマーサポートチームに問い合わせが増えている内容を、オウンドメディアで記事化するようにしています。こうした連携は、機械や仕組みで自動的に行なっているというよりも、人ががんばって実現しています。商談なんて一1回では決まらないものじゃないですか。3回、4回とお客様のところに通うことになります。お客様もReproの社員に会って話しをすると、新たな知見が得られるなどのメリットがあると思えば会ってくれる。オウンドメディアへの反応、サポートチームに寄せられる声といったものは、商談をする際の有効なネタにもなりますから。
 そうやってお客様の声を聞いて、事業に反映させていく活動こそ、グロースハックの実情であり、原点ではないですかね。

コミュニケーションをさぼるとろくなことにならない

洪:グロースハックというと、汗をかいて動くというよりは自動化されたものを思い浮かべてしまいますが、実は汗をかいて動くことこそ原点というのは忘れてはいけないですね。
 たとえばカスタマーサポートに寄せられている声は、製品の機能、今後の事業などに活用できる宝の山なのに、それがきちんと生かされていないケースはもったいないと。
 組織が連携しアプリケーションの現在の課題を的確に共有して、ユーザーの要望を更に上回るアイディアで解決していくことこそ、サービスの成長になります。
 その為には、情報がひとつの部署で停滞しないための体制作りが何より先決だと痛感しています。

平田:私たちもすべてがうまくいっているわけではなく、さまざまに失敗を重ねて、それを取り戻すためにどうするのか?と考えて、動いた結果が今のスタイルになりました。
 最も忘れられないのが2015年末の体験です。あわや、倒産するのではないか? と焦った経験があります。そのころ、初めてReproにDAU10万人単位のアプリが数十登録されたんですが、あるとき社内連絡用に使っているSlackがすごく荒んだ雰囲気になっていました。
 「どうしたんだ?」と理由を聞いてみたら、「管理画面にアクセスできないという問い合わせが止まない」というんです。それほど大量のユーザーを獲得したことがなかったので、キャパオーバーとなってしまっていたのです。
 事実を知って焦りました。顧客がゼロになる事態も想像し、そうならないためにどうすればいいのか、真剣に考えました。最終的には、すべてのお客様にきちんとコミュニケーションを取って現状を説明し、きちんと謝ろう! ということで動き出しました。こちらが正面から向き合ってお詫びすると、「スタートアップが成長していく段階で、キャパオーバーになってしまうことは珍しいことではない。頑張りなさい」と励ましのことばをくださるお客様もいました。結果的には、解約ゼロで済ませることができました。

洪:逃げずに向き合って、きちんとお客様とコミュニケーションを取ることで、厳しい局面でも目の前が開けていくことになると。

平田:コミュニケーションは重要です。社外とも、社内とも。コミュニケーションをさぼると、良いことはありません。成長するために解決しなければならない課題を見て見ぬふりしていることと同義ですからね。

洪:もっとウェブサイトとは何か掘り下げ、さまざまな定義を見直すべきなのではないかとか、いろいろと考えさせられますね。
 『BiND』はHTMLを書かなくても誰もがサイトが作れるソフトとして9年前に世の中にリリースしましたが、今はSNSなどいろんな情報伝達手段があって、どんどん簡単になってきています。そうなるとウェブ制作ソフトとしての役割は大きく変わるべきで、「サイトを作る」そのものをしなくてもいいツールにならないかと考えるようになってきました。

BiNDクラウドのサービスサイト

 私はデザイナーなので作ることそのものも好きなのですが、すべての人がそうではありません。使い手がコンテンツを発信するだけで済み、デザインは思い描いているものをツール側が形にしていくような新規開発を今まさに進めているところです。
 ユーザーが今、どんな壁にぶつかり何を解決したいのか、常にコミュニケーションを取りながらアンテナを立てて、誠意を持って取り組んでいく事がいかに重要かを今日改めて感じました。

(提供:デジタルステージ)

1 2

合わせて読みたい編集者オススメ記事

バックナンバー