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業務を変えるkintoneユーザー事例 第6回

kintone hive nagoyaで聞いた珠玉の現場主導型ITの事例レポート

脱Excelを目指すエイチーム、「私にもできた!」の感動が業務を変えた

2017年04月20日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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フロントエンドは現場部門が率先してアプリを作成

 もう1つのフロントエンドの業務改善では、脱Excelを目指して、日々の業務フローを改善していくのが目的。「これまでExcel+αでがんばってきた業務をkintoneでアプリ化していく。実際に使い出してみると、現場でもすごく使ってくれるので、親和性は高いと思う」と矢島氏は語る。

 従来、発注業務は本当にExcelの塊だった。まずマスターとなるデータは、ファイルサーバー上にある4つのCSVファイル。発注データを入力すると、別のExcelファイルにデータがマクロで飛び、それを元にCSVを手で作成する。その後、仕入れ作業に移るのだが、ここでも納期管理のために別のExcelとCSVが作られ、会計システムにエントリするためのCSVをさらに作ってようやくゴール。とにかく人手がかかり、大量のExcelとCSVのファイルができるという業務だったという。

Excel、CSV、手作業の嵐だった発注管理

 そして、こうした複雑な業務を、現場は今までなんの疑問もなくこなしていた。これに対して、矢島氏は現場への聞き込みを続け、業務フローを見える化して、改善を訴えかけた。「(業務フロー図を)みんな見たら唖然としていました。でも、これが改善されれば楽になるので、担当者のメリットを提示することが重要だと思った」(矢島氏)。

 管理部ではこれらのExcelをkintoneで作った発注アプリに集約した。発注情報をkintoneアプリにエントリする際は取引先と科目のデータベースをルックアップできるので、すべてのフローが1つのアプリで担えるようになった。最後、会計システムに登録するところだけは、計上用に自動生成されたCSVをダウンロードし、人手で登録する必要があるが、その他の発注の依頼、履歴の管理、納品管理、自動採番などはkintoneアプリだけでカバーできるようになった。「手動の操作が今までは5回あったが、今は自動生成されたCSVファイルを会計システムに登録するだけで済むになった」(矢島氏)。

発注業務はkintoneアプリに集約。会計システムへの登録だけ人手が行なう

 新しい仕組みのすごいのは、これらを非エンジニアの発注担当者が1人で作っているところ。基本的なユーザーインターフェイスは担当者がドラッグ&ドロップで作成し、JavaScriptに関してもゼロから学び、税計算や入力制御などを実装してしまったという。「僕は最後のCSVダウンロードの部分しか触っていない。担当者が既存の業務を大きく変えてしまった」(矢島氏)。「シチズンプログラマー」という用語が適切かわからないが、現場の問題解決能力をkintoneが発露させたのは間違いない。

私にもできた!の感動の輪が業務改善の原動力に

 もう1つのフロントエンド事例は、契約管理のリマインドだ。通常、新規に契約を行なった場合は、担当者が管理簿に内容を記入し、1年後の更新作業を行なう必要がある。しかし、1年後の契約満了日直前に更新の通知に気がつき、間に合わないということはよくある。これを防ぐためには、1年後のカレンダーに予定を入れたり、運用でカバーすることが多い。ここで使ったのがkintoneのリマインダー機能だ。

管理簿に登録しても、更新日付を忘れて、間に合わないという「業務あるある」

 エイチームでは商標の管理を従来Excelでやっていたが、これをkintoneに移管。有効期限は切れる半年前に法務関係者にメールで通知するようにした。これならデータを登録した時点で、契約更新の通知設定が完了する。メールに関しても、グループ宛てにすることで、読み逃しがないようにした。こちらも現場の担当者がExcel管理簿からアプリを作ってしまった。「『私にもできた!』という感動を周りの人に共有してくれた。リマインダの機能もマニュアル読み込んで、自分で設定してしまったんです。こういう感動を与えてくれるのは、kintoneのすごいところ」と矢島氏は語る。

 矢島氏はkintoneのメリットとして「アプリ作成の敷居が本当に低い」という点を挙げた。「初めて触った人でも、管理簿を1時間以内にアプリにでき、運用をこちらに切り替えますということができる仕組みだと感じた」(矢島氏)。エイチームの管理部では非エンジニアが「使う側」から「作る側」に回り、もはや矢島さんが介入しなくても、kintoneでできることが共有されるようになっているという。「現場の方の行動が変わります。一度ちゃんと作れるようになると、ほかの人か困っているのを助けるようになって、kintoneでやってみようという機運になるんです」と矢島氏は語る。今後は部内のアプリ作成者を拡大し、グループ会社にも展開していきたいという。

 ツールとちょっとした後押しで、現場が業務改善に動き出したエイチームのkintne事例。まさに現場主導型ITのお手本ともいえる好例と言える。

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