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あらゆる面で「IoT導入後の効果」は「導入前の期待」を上回る。では導入障壁は?

IoT投資のROIは「20~40%」が約半数、HPE Arubaが世界調査

2017年04月19日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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日本企業はIoTの領域を「狭く」捉えており、導入に「消極的」である

 日本企業の動向についても見ておこう。

 同調査では「IoTの理解度」や「IoTの導入傾向」について、国別の成熟度も明らかにしている。「理解度」はIoTの定義をどれだけ理解しているかを問う設問、また「導入傾向」は自社におけるIoTの導入計画を問う設問で、グローバル全体としては「IoTに対する理解度が高い国では、導入も活発である」と結論づけられている。

 この設問群において、日本はIoTの理解度で「20位(最下位)」、IoTの導入傾向でも「19位」とランキングされている。さらに将来的な導入計画を追っていくと、2年後には導入率においても「最下位」になるという。

 ただしこの結果について、HPE Aruba事業統括本部 事業統括本部長の田中泰光氏は、国内顧客におけるIoT導入の実態を知る立場から「実感とは異なる」と注意を促した。

 同調査でこうした結果が出た要因にはさまざまなものが考えられるが、そのひとつとして、日本企業がIoTというカテゴリーを他国よりも狭く、限定的に捉えていることがあるようだ。同社 マーケティング部 マネージャーの宮川塁氏は、次のように説明した。

 「日本では『日用品をインターネットに接続させる』ことはIoTだという認識が高い一方で、『産業用コンポーネントをつなげるプラットフォーム』をIoTの守備範囲と捉える割合が最も低い結果となっている。世界から“日本のお家芸”と見られているこの分野がIoTの応用領域だという認識が低く、この分野でのビジネスがIoT活用の主戦場であると認識されていない」(宮川氏)

 同様に、個々のデバイス/技術についても、それが「IoTに該当する」と回答する割合が、ほぼすべての項目でグローバル平均よりも大きく低い結果が出ている。こうした“IoT観”から、他国企業ではIoT導入と見なしている取り組みでも、そうは見なさなかった日本企業が多かった可能性はある。

IoTの定義に該当するものはどれか、という設問。日本企業はIoTに該当するものを「狭く」捉えている

一般的なIoTデバイス/技術はどれか、という設問。ここでもグローバル平均よりも「狭い」IoT解釈がなされている

 「(個人的な感想としては、この調査結果とは)真逆だと思っていた。国内の顧客を訪問すると、さまざまな業種で、高度なIoT活用の方法を非常にクリエイティブに考えている。むしろ日本は、IoTだと捉える(IoTと呼べると思う)レベル感が高いために、こうした結果になったのではないか」(田中氏)

 もっとも、IoT導入に対して日本企業が他国企業よりも「消極的」な姿勢であることは否めないようだ。導入前の企業に「IoT導入で恩恵を受けると考える部署」を聞いた設問において、日本企業はあらゆる部門でその割合が他国よりも低く、「どの部署も恩恵を受けない」と考える回答者が13%に上る(グローバル平均は2%)。

IoT導入で恩恵を受けると予想される部署は、という設問を国別で比較。日本は緑色が目立ち、その期待が低いことがわかる

 ただし、実際に導入済みの企業において「導入前の期待」よりも高い効果を上げているという点は、前述したグローバルの結果と変わりない。

「ClearPass」を中心としたNWプラットフォーム提供で企業を支援

 こうした調査結果から田中氏は、日本企業が望む高度なIoT活用を促していくためには、できるだけ導入障壁を低くしていくことが肝要であると述べ、HPE Arubaとしては「インテリジェントエッジ」ソリューションの提供で企業の動きを支援していく方針だと説明した。

 「IoTは、日本企業の苦手とする“攻め”のIT投資に該当する。それならば、IoTの導入障壁となっているセキュリティ懸念などの課題を取り払わないと、日本企業の積極的な投資は呼び込めず、他国をリードしていくようにはならないのでは」(田中氏)

 具体的には「HPE Aruba ClearPass」を中核として、ネットワークに接続されたIoTデバイスの認証と情報収集、ポリシーベースのファイアウォール制御やQoS制御、トンネル化による通信保護、さらにはAPIを介したサードパーティ製品との情報連携を行うプラットフォーム(Mobile First Platform)を提供する。

HPE Arubaが提供するネットワークプラットフォームの概要

 田中氏は、米HPEが今年2月にセキュリティベンダーのニアラ(Niara)を買収したことにも触れ、将来的にはこのニアラが持つ機械学習に基づく「異常なふるまい」の検知技術も、ClearPassに統合される予定だと述べた。

 「HPE Arubaのできることは、IoTについて高度なアイデアを持っている顧客に対して『セキュリティやインフラ周りのことは気にせず、われわれに任せてください』と言える環境を作ること。そうしなければ、発想豊かなIoT戦略を考えている日本企業の足を引っ張ってしまうことになりかねない」(田中氏)

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