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シャープ再び迷走へ、裸の王様とイエスマン支配で

2017年04月17日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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「税金対策で日本には1年の半分しか滞在しない予定」(シャープ幹部)のトップが、「改革者」の振る舞いで上場企業を経営している Photo:つのだよしお/アフロ

再生に向け構造改革を進めていたはずのシャープが揺らいでいる。過去に液晶事業で巨額の損失を抱えた教訓を無視し、再び無謀ともいえる拡大路線に走り始めた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)

 わずか2%──。これは、シャープの中小型液晶で2016年の総出荷量に占める、中国のスマートフォンメーカー・小米科技(シャオミ)向けの構成比(英調査会社のIHSテクノロジー調べ)だ。

 液晶事業が一時的に息を吹き返した3年前、シャオミのスマホ向けは米アップルに次いで2番目に出荷量が多く、構成比は23%にも上っていた。

 アップルのiPhone需要に依存する構図から抜け出すため、躍進する中国のスマホメーカーとの取引拡大は、シャープの液晶事業の安定化にとって喫緊の課題だったはずだが、その後の経営の迷走によって、見放されるように取引が激減してしまったわけだ。

 さらに、肝心のアップルとの取引も漸減しており、競合のジャパンディスプレイとはiPhone向けの出荷シェアで、20ポイント以上もの差をつけられてしまった。

 また、シャープはスマホ以外にも液晶の収益源を多様化しようと、自動車向けの液晶パネルの拡販を進めていた。しかし、得意客の米フォード・モーターと関係の深かった幹部が会社を去ってしまい、拡販への道程が足元で一気にかすんでしまっている。

 昨夏に台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入って以降、再生の要となるべき中小型液晶の収益は安定せず、むしろ病巣が広がってしまっているのだ。

 迷走しているのは中小型液晶だけではない。シャープ再生の要となるテレビ用液晶事業にも異変が起きている。鴻海グループの液晶子会社である堺ディスプレイプロダクト(SDP)が、16年度に600億円近い最終赤字に転落したのだ。

 そうした中で、三重県の亀山工場をはじめ、巨大な液晶工場の稼働率を中長期的にどう保つか。鴻海から送り込まれた戴正呉(たい・せいご)社長がひねり出した苦肉の策が、18年度に液晶テレビ販売1000万台という方針だった。

 16年度のテレビ販売台数は500万台前後。販売を倍増させれば液晶工場の稼働を保つことができ、SDPの収益改善にもつながると判断したとみられる。

 鴻海としては、過去に赤字だったSDPを黒字化させたことこそが、再生手腕をアピールするよりどころになっており、そのSDPが販売不振でまたも大赤字に陥っては具合が悪い。そこでなりふり構わない手に打って出たわけだ。

 さらに、SDPを素早く黒字に持っていくために、価格で折り合いがつかない韓国サムスン電子など外部の取引先への液晶供給を停止し、傘下に取り込んだシャープに“言い値”で大量に「自家消費」させることにしたのだ。その結果、サムスンからは賠償を求められる事態を招いている。

 かつてシャープは、液晶工場の高稼働を前提とした事業・販売戦略によって自ら供給過剰に陥り、大量の在庫を抱えて、計1兆円を超える最終赤字を垂れ流した。そうした教訓は完全に忘れ去られてしまったかのように映る。

 同じ轍を踏みかねないテレビ拡販の経営方針に、業界内では「迷走がまた始まった」と、先行きを不安視する声が相次ぐ。

裸の王様による企業再生に活路はあるか

「おい、あれはOKってことでいいんだよな」「ごめん。実は俺もよく聞き取れなかった」

 大阪府堺市のシャープ本社では今、2階の社長室を後にする社員たちが、そう声を潜めながら話す光景が日常になっている。戴社長が拙い日本語で、まくしたてるように話すため、OKとNGの区別すらまともにつかないようなコミュニケーションを、部下たちと日々繰り返しているわけだ。

「わたし、300万円からケッサイしてます」。事業の隅々にまで目を光らせ改革を進めていることを折に触れアピールする戴社長だが、その経営手腕は実に心もとない。

「経営、難しいこと、あるね」。中国の家電大手、海信集団(ハイセンス)への米州でのシャープブランドの供与によって、現状、米国ではシャープのブランドを付けたテレビが販売できないにもかかわらず、米国でテレビ用の液晶工場建設を検討していることを問われたとき、戴社長はそう言って煙に巻くしかなかった。

 それもそのはずだ。米国の工場建設も、中国・広州に10.5世代という世界最大の液晶工場を鴻海主導で設けることも、鴻海の郭台銘(テリー・ゴウ)会長が最終判断しており、戴社長は忠実な「イエスマン」でしかないからだ。

 自らのグループで液晶の供給過剰状態をつくり出し、かつてのシャープが歩んだ自滅への道を驀進する「裸の王様」に、苦言を呈する部下はいない。そんなトップの下でシャープは今、再生への道を歩もうとしている。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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