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肩こりや腰痛の元になる「噛み合わせ」は食習慣で改善できる

2017年04月14日 06時00分更新

文● 夏目幸明 [経済ジャーナリスト](ダイヤモンド・オンライン

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群馬県高崎市の「丸橋全人歯科」。噛み合わせを調整することで、全身のさまざまな症状を改善し、患者に喜ばれている歯科だ。今回のテーマは「歯列矯正も噛み合わせの調整もできなかった昔の日本人が、なぜ現代日本人より噛み合わせがよかったのか」。詳細を聞くと肩こりや腰痛が文明によってもたらされた弊害であることと、その解決策が見えた。(経済ジャーナリスト 夏目幸明)

噛み合わせの悪さは文明病!?
世界中を調査して得た真実とは

「モンゴル人や縄文時代の日本人は、現代の日本人より歯周病になる割合が少ないんですよ」。丸橋全人歯科の亀井琢正医師によれば、モンゴル人や縄文人の歯は噛み合わせもいいらしい。

現代の日本人の噛み合わせが悪いのは、食生活に原因がある。日本人の咀嚼回数は、戦前の半分以下、弥生時代と比べると、なんと6分の1にまで減っているのだという

 これはトンデモ話ではない。丸橋全人歯科の歯科医師たちは、実際に世界のさまざまな地域に赴き、噛み合わせを研究してきたのだ。「我々は、ブータンの奥地や、ケニアのマサイ族まで調査に行きました。そして、これらの民族もまた“日本人に比べ噛み合わせがいい”という結論を得ています」(亀井医師)。

 この調査の中、彼らは奇妙な事実に気づいた。モンゴルでは、馬で移動するような、あまり文明化されていない部族の人は噛み合わせがいい一方、都市部には噛み合わせが悪い人が少なからずいた。ブータン、ケニアでも、同様の傾向が見られた

「すると、怖い仮説が成り立ちます。噛み合わせは、文明が持つ何かによって悪くなっているのではないか、と……。そして、我々は歯列矯正の知識を元に、ほぼ“これだ!”と考えられる原因を突き止めたのです」

 前回記事「ガンコな肩こりが10分で解消、自宅でできる意外な方法とは?」で触れたように、肩こりや腰痛、果てはうつ病まで、噛み合わせの悪さは全身に影響を及ぼす。「単なる歯の問題」と考えるのは危険だ。

 詳細な説明の前に、知っておいてほしい事実がある。亀井医師によれば“歯はゆっくりゆっくり伸びたり動いたりするもの”らしい。「例えば、下の歯を抜歯すると上の歯が伸びてくるんですよ。そもそも、歯列矯正ができるのも、歯が少しずつ動くからです(笑)」。

 そして人間の体は「噛み合わせが悪いと、自然と調節を始めるようにできている」という。「歯には凹凸がありますよね。この凹凸は非常に大事で、上の歯と下の歯は、凹凸が見合ってこそ、うまく機能するんです」

 例えばグッと力を入れるとき、人は歯をくいしばる。歯は骨格の一部だから、文字通り噛み合わせていたほうが骨格全体が安定し筋力を発揮できるのだ。一方、凹凸が合っていないと、全力を発揮することができない。

噛み合わせがよくなると
食べ物の好みも変わる

 ただし、ここで人間の体はすごい力を発揮する。

「先にお話ししたように、歯は動きます。そこで、食事のときによく噛んで食べるうちに人間の歯は動き、自然と噛み合わせが合ってくるのです」

 とくに子どものうちは、ガシガシとよく噛んで食べるうちに、自然と噛み合わせが合ってくる。ではなぜ、近年の日本人の噛み合わせは悪いのか?

「上下の歯をしっかり使っていないからです。直接的に言えば、子どもの頃から柔らかい食事ばかりで育つと、歯を噛みしめる機会が減り、噛み合わせが悪いまま大人になってしまうのです」

 文明は食品を食べやすく加工する。丸橋全人歯科の丸橋賢理事長いわく「モンゴルの肉は噛んでも噛んでも食いちぎれなかった」らしい。しかし日本の肉は、ハム、ハンバーグなどに食べやすく加工されているし、肉そのものも品種改良されて柔らかい霜降りが好まれる。丸橋理事長が話す。

「日本人の咀嚼回数は、確実に少なくなっています。弥生時代に比べると約6分の1、戦前に比べても半分以下です」

 余談だが、ロッテの人気商品「Fit's」が開発された理由が興味深い。ガムの売り上げが落ちたとき、同社は「なぜ最近の若者はガムを買わないのか」と調査した。するとある女子高生が「あごが疲れる」と言った。聞き流さず調べると、現代の若者のアゴは細く、総じて噛む力が弱くなっているという。そこでロッテは柔らかいガムを「噛むとフニャン」というキャッチコピーで売り出し、大ヒットさせた。

 一方、何度も噛まなければ食べられない食品は、若い世代から敬遠されるようになっている。堅いおせんべい、漬物、小魚……。ようするに、文明は人に「噛まない食事」を提供し、人はそれを好んで食べるのだ。

「これが原因で噛み合わせが合わないまま成長してしまうのです。一方、子どもにチューインガムを使って咀嚼訓練を施すと、咬合力が高まって今まで見向きもしなかった食べ物に興味を示した、という例が多数報告されます」(丸橋理事長)。

柔らかいエサで育つと
ネズミの学習能力が落ちる

 よく噛んで食べることにより、噛み合わせがよくなる。大人は長時間がかるが、子どもなら効果が出るのは早い。これにより姿勢がよくなり、集中力が向上し、将来的に肩や首がこりにくくなる、との説には説得力がある。では、具体的に何を食べればよいのか。丸橋理事長が話す。

「不思議なことに、よく噛む必要がある食べ物は、いわゆる“体にいい”場合が多いのです。海藻、玄米、小魚、さらにはブロッコリーやキャベツなど生野菜……。ダイエットにもなる食品ばかりです」

 同時に丸橋理事長は、興味深い事実を挙げる。

「柔らかいエサを与えて育てたネズミと、よく噛んで食べるエサを与えたネズミを比較した実験があります。おなかをすかせた状態で、両方のネズミを迷路に入れ、ゴールに食べ物を置いておく。これを何度も繰り返し、ネズミに迷路の解き方を学習させるのです。すると堅いエサで育ったネズミは袋小路に迷い込む回数が少なく、サクサクとゴールに行くんです」

 人間で大規模な調査をした結果はないが、興味深い結果だ。だが、ここまで書いた事実はあまり世に伝わっておらず、丸橋理事長は危機感を募らせる。

「文明はすばらしいものですが、たとえばスマートフォンによりストレートネックになる人が増えたように、負の側面ももたらします。そして、おいしい食事にも負の側面はあるのです。せめて子どもには、よく噛む食べ物を与えてあげたいですよね」


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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