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スタートアップのコーポレートサイトまとめ2016-2017 第5回

お菓子のスタートアップが展開する2つの自社メディアの裏側を聞く

オウンドメディアの数字では測り切れない価値とは

2017年04月19日 09時00分更新

文● 三浦優子 編集●北島幹雄/ASCII STARTUP 撮影●曽根田 元

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 さまざまな効果を狙って、自社サイトにコンテンツを掲載する「オウンドメディア」を実践する企業が増えています。スタートアップ企業の中でも、「オウンドメディアを持ちたい」と考えるケースが多いようです。しかし、実際にオウンドメディアを展開すると、当初の予想以上に手間、コストがかかり、せっかくスタートしたオウンドメディアが放置されたままの状態になってしまっている――という例も少なくありません。
 そんな中、切り口の異なるオウンドメディア数種類を自社サイト内で掲載しコンテンツの面白さから多くの読者を集めているお菓子のスタートアップ・株式会社BAKEと、ウェブサイト制作ソフト『BiND』を開発し、最近ではスモールビジネスに向けたウェブサイト構築のノウハウも提案している株式会社デジタルステージとの対談を行ないました。オウンドメディアの運営にどれくらいの手間がかかっているのか、収益には見合うのか――そんな疑問を率直にぶつけてみました。

BAKE ファンクション本部 本部長 春山佳久氏(写真右)、デジタルステージ ディレクター 洪泰和氏(写真左)

お菓子の進化を考えるワクワク感に共鳴

洪氏(以下、敬称略):まず最初に、BAKEがどんな会社なのかをご紹介いただけますか。

春山氏(以下、敬称略):BAKEの代表(長沼真太郎氏)は北海道の老舗洋菓子店「きのとや」の長男として生まれ、「お菓子を進化させる」という熱い思いを持って焼きたてチーズタルトや新食感シュークリーム、焼きたてアップルパイなどを販売しています。チーズタルトでいえば本来は冷やして食べるタルトを、工房一体型、製造場所で販売まで行なうことで、できたて熱々で食べて頂くスタイルで提供することで、人気を博すようになりました。その他もスマホやPCから簡単にオーダーができる写真プリントケーキサービスなど、2種類のオンラインサービスも展開しています。
 ただし弊社では、実はお菓子を進化させる方法については、あえて具体的に示していません。どのようにお菓子の進化を進めていくのかは、社員1人1人考えていくことが必要になります。ひたすらにお菓子の未来に向けて考えていく企業がBAKEです。

BAKE

洪:インターネット業界で仕事をしてきた春山さんが、BAKEというお菓子の会社への参加を決めたことは意外な感じもしますね。

春山:お菓子のマーケットは、日本だけでなく、世界に向けて開かれていることも魅力に感じました。外資系企業で働いてきた経験から、「日本発」で発信できる企業は実はそう多くないという実情も感じていました。その中で当たり前のように、日本だけでなく、海外をターゲットにできることも魅力でしたし、「ラーメンは日本発で海外展開をしている企業はたくさんあるが、お菓子で日本から世界に出ている企業はまだない」と代表とも話になるんです。

株式会社BAKE ファンクション本部 本部長 春山佳久氏                 電通、Googleを経て、IT系農業やアドネットワークでの起業を経験。その後Hulu日本支社にてデジタルマーケティング責任者や航空券比較サービスのスカイスキャナー日本法人設立を手がけ、2015年にBAKEへ入社

目的が異なる2つのオウンドメディア

洪:そんな中、「THE BAKE MAGAZINE」と「CAKE.TOKYO」という2つのオウンドメディアをお持ちですよね。

春山:THE BAKE MAGAZINEは、リクルーティングを目的のひとつに持っています。当社はいろいろな業界の人が集まっており、それぞれの得意分野が活かせる社風です。どんなバイオグラフィーを持ったメンバーが集まってきたのかを紹介するために、あえてラフな感じでメンバーの素顔を紹介していきたいと考えています。
 一方的に「うちは素晴らしい会社ですよ」といっても、「ぜひ一緒に働きたい」とは思ってもらえません。オウンドメディアとしてはあえて外に出さないような苦労話や失敗談なども交えながら、スタートアップならではの等身大のBAKEを感じていただきたい。また企業風土や私たちの大切にしていること、そして日々お菓子の進化に真摯に向き合う社員の姿に共感をしてもらい、そこに自分のキャリアを重ねたり、今までの経験を活かしてBAKEの成長を手助けできるかもしれない。と感じてもらえたらうれしいですね。

THE BAKE MAGAZINE

洪:一方で「CAKE. TOKYO」はどんな狙いがありますか?

春山:お菓子を進化させるというのが我々のステイトメントだとお話ししましたが、そのためにはお菓子業界全体の活性化も大切なことだと捉えています。「おいしいには、ストーリーがある」をコンセプトに、チェーン展開はしていないけどユニークな取り組みをしている会社や、大々的なPRはしないものの本当に美味しいお菓子をつくっている個人のお菓子屋さんはたくさんあります。実際に企業やつくり手に会って取材をし、食べて、写真と文章で発信しています。それぞれストーリーやこだわりを深堀りし、紹介していくことで「だから美味しいのか!」と知ってもらえたり、「食べてみたい」と感じてもらうことを狙いとしています。今、専任で1人のスタッフと全国のライターさんと一緒に記事を作っています。

洪:コストや工数でのリターンはどのようなものがあるのでしょうか。

春山:作り手の情熱や店舗作り、原材料へのこだわりなどを取材させてもらうことで刺激をもらうことも大きいです。これを当社のステイトメントである「お菓子の進化」に対する考え方のヒントとしていくことができれば、投資するだけの価値はあると考えています。実際にそのお店に行くことで、お菓子の味や作り方だけでなくブランドが提供する体験そのものを感じとって発信してほしいと考えています。そうすることで社内にもマーケットにも良い気づきを与え、お菓子の可能性はもっと広がっていくと確信しています。

洪:競合になるかもしれない会社を紹介することに抵抗はなかったのですか?

春山:始めた当初は、取材先にどのように受け止められるか、という観点では 「大丈夫なのか?」という声はありましたが、お菓子の作り手の思いや商品へのこだわりをしっかりと紹介することで、お菓子業界全体を盛り上げたいという私達のテーマに共感してくださっています。また、記事のクオリティーに対する情熱にまた取材に来てよと言ってもらえるようになりつつあることは大変ありがたく嬉しいことです。
 専任スタッフが月に1度、CAKE.TOKYOの記事をレイアウトし、社員に渡す給料袋と一緒に全社員に手渡してくれています。「みんなお菓子に対して、意識を高く持っていこう」という旗振りの役目を果たす役割もあります。

CAKE.TOKYO

洪:技術、情報といったことは、個人が持ってしまって、共有するのが難しい部分があると思います。全社員で共有できる意識を高めていくというのはすごくいいですね。

春山:担当者が、自分たちの取材してきたことを、社内で情報共有する場を作ろうと努力をしてくれています。

洪:自発的にそういう提案が出てくるというのは理想的ですね。

春山:意見が出てきやすいように、フラットな環境がいかに作れるのかは注力しています。お菓子を進化させるという試みでは、毎日の朝礼で1日に1人「あなたはどうお菓子を進化させようとしているのか」をテーマにスピーチをしてもらっています。経理担当者がお菓子の進化をどう考えているのかといった話は、とても参考になることも多いですし、意識共有を行なっていくためのよいきっかけになります。

各社で考えるべき「オウンドメディアの使い道」

洪:我々でいうと、プロのウェブ制作者や専任者がノウハウや技術を身に付けるメディアは多くありますが、専門ではないウェブ運営者も世の中にいっぱいいるところに着目しました。何から手を出したらいいかわからない、成果が結び付かず困り果てている人たちです。そうした人たちに特化してノウハウを伝授するための「BiND CAMP」というオウンドメディアを作りました。ウェブに必要な知識や伝え方など、デザイン構築だけでなく、ウェブサイトがもたらす成果に貢献できるようなコンテンツ発信を意識して、モチベーションを上げていくのが目的です。
 オウンドメディアを始めるにあたり、ターゲットや目的を明確にするのは必須ですが、THE BAKE MAGAZINEやCAKE.TOKYOは最初から今の形を想定されていたのですか?

デジタルステージ ディレクター 洪泰和氏                     ウェブデザイナーを経て、デジタルステージのウェブ全般のディレクションを担当。一方「BiNDシリーズ」の開発にプロジェクトマネージャーとして携わる

春山:僕らは最初から計算してこうなったわけではないんです。取り組みを始めてみたら、「あ、これは社員全員に有効な情報になる」「これはリクルートに活用できる」といったことにやってみて気がついたというのが正直なところです。
 オウンドメディアだけで完結するのではなく、「オウンドメディアから派生してこんな還元ができるのではないか?」と考えたことが良かった点かもしれません。
 現在のスタイルをいつまで続けていくのかについても、きちんと、数値的な指標は計測しながら、投稿数だけでない評価を行ない、管理しながら進めています。
 たとえば現場のメンバーからは、「これをもとに新しいビジネスはできないか?」という提案が上がってきます。例えば広告収益をとるかどうかなどです。ですが、「それは本当に自分達がやるべき仕事なのか?」と問いかけ直します。一度変えてしまったら、また元に戻すことは難しい。現状は覚悟してやっていこうと。

BiND CAMP スキルレベルごとにWeb制作のノウハウを解説するオウンドメディア

洪:オウンドメディアは始めるよりも、続けることのほうが難しいですからね……。
 BiND CAMPも成果につながるウェブ作りをよりアシストするために、この3月にリニューアルして、具体的なスキルを伸ばすためのノウハウを教材として提供し始めました。運営しながら新たなニーズを発見して拡張していくこともあれば、最初の目的や軸をブラさず何を提供していくべきか取捨選択していくことは重要なことに思います。そうすることで、運営する側も集中した運用ができますし、目的がはっきりしている分トライアンドエラーもし易いです。そして何より、オウンドメディアの目的が明確だと見る側の理解度が上がるメリットもあります。

春山:今、BAKEは社員が100人超えましたが、社員3人時代からあまり変わることなく、利益だけではない視点でオウンドメディアを考えていこうという発想があります。
 創業者の思いについてもオウンドメディア(THE BAKE MAGAZINE)の中で紹介しているため、企業としてのブランディングに貢献してくれていますし、広報部門の担当者からは、「取材に来る人が各オウンドメディアを読み込んで来てくれるので、取材がスムーズに進む」という声が上がっています。
 数字的な利益にどれだけ貢献するのか? という視点だけでは測り切れない効果が生まれるのもオウンドメディアを継続する価値だと思いますね。
 とはいっても、人材紹介会社を通した場合と比べ、どれくらい低コストで人材募集ができたのかなどデータ計測はしています。明確な数字が出てくれば、THE BAKE MAGAZINEがどれだけ効果を出しているのかがはっきりしますので。その数字が妥当か、否かも数字を見たうえで考えることになると思います。
 今はTHE BAKE MAGAZINEと人材応募が直結するような仕組みにはなっていないので、今後はCVR(Conversion Rate/コンバージョン率)がはっきりわかるような仕組みにしていくことで、さらにはっきりと効果を算出することができるのではないかと思います。

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