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グーグルが人工知能で作り出したいのは「芸術」そのもの

2017年03月30日 07時57分更新

文●James Temple

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グーグルのAI研究部門は深層学習のツールを開発しており、このツールを利用する人々と協力して音楽や芸術作品を生み出そうとしている。

最近の機械の作品から判断すると、近い将来、画家やシンガー・ソングライターの仕事が機械学習アルゴリズムに奪われることはなさそうだ。しかし、火曜日にMIT Technology Review主催のEmTech Digitalカンファレンスで講演したグーグルの人工知能研究部門に所属するダグラス・エック上級科学者によると、グーグル・ブレインが開発中のツールでは、芸術家と深層学習ツールが協力することで、これまでにない芸術作品を制作できるという。

エック上級科学者の期待は、人類がこれまでキーボードやドラム、機械、カメラで芸術作品を作ってきたのと同じように、グーグル・ブレインが開発中のプラットフォーム「マゼンタ」で全く新しい種類の音楽や芸術作品を生み出すことだ。エック上級科学者によると、前衛的なエレクトリック・ギターの開発を支えたレス・ポールのような役割をマゼンタは果たすという。また、楽器を逆さまに使用し、弦を曲げ、音を歪めたジミ・ヘンドリックスのように、マゼンタの限界を興味深い方法で拡張するために、芸術家にマゼンタの最新情報を常に伝えたいとエック上級科学者は述べた。

「マゼンタの限界を突破し、利用の幅を広げる新手法を発見するのが楽しいのです」

エック上級科学者はモントリオール大学コンピューター科学部元准教授で、自身が「挫折したミュージシャン」だったために、グーグル・ブレインのプロジェクトに引き抜かれたと述べた。かつてギタリストやピアニストとして「ポストパンク風の民族音楽」を喫茶店で演奏していたエック上級科学者には、「数十人」のファンがいたという。

グーグル・ブレインは日々、作曲や、画像を芸術作品に変換するマゼンタのアルゴリズムを改良している。エック上級科学者は講演で、コンピューターが生成したピアノの旋律を再生した。旋律の聴き心地は、マゼンタにルールを追加するほど着実に向上し、歯磨き粉の広告の音楽に使われていたようなフレーズを生成した。

現在の重要な課題は、マゼンタの使い勝手を向上させることだ。研究者はコマンド入力と同等のインターフェイスの開発から始めたが、エック上級科学者は、ギターのストンプペダル(足で操作するペダル)の「自然さ」により近づけたいという。マゼンタの性能を高め続け、新しい方法で利用するために、才能あるミュージシャンやプログラマーがマゼンタに魅力を感じることをエック上級科学者は期待している。

「単に芸術のための芸術を作り出す機械そのものは、皆さんが考えるほど興味深くありません。研究の課題は、人間が新しい種類の芸術を作るのに機械は役に立つのか、なのです」


転載元(MIT Technology Review)の記事へ

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