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パナソニックがつくる極上のおうちコーヒーサービス「The Roast」体験会レポート

iPhoneで操作する「スマートコーヒー焙煎機」でつくる極上コーヒーは情熱のカタマリだった

2017年04月05日 11時30分更新

文● コヤマタカヒロ 編集●家電ASCII編集部

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そもそも美味しいコーヒー豆とは?

 スマートコーヒー焙煎機の開発、そして焙煎プロファイル作りと来たら、最後はそのさらに上流となる"極上のコーヒー豆の調達"の話だ。『The Roast』では、100年以上の歴史を持つコーヒー豆の輸入商社である石光商事と提携することで、世界中のコーヒー豆の定期頒布を実現している。

 その世界中にあるコーヒー豆を産地に赴き、買い付けているのが、荒川正臣さんを初めとする、石光商事のエリア担当の皆さんだ。現在、荒川さんは、ブラジルとメキシコを10数年担当しているという。

石光商事でブラジル、メキシコなどからのコーヒー豆の輸入を担当している荒川正臣さん。

石光商事が『The Roast』に向けて提供するコーヒー豆の条件。世界中の産地と直接やりとりしているからこそできることだ。

「弊社には世界を4エリアに分けて計8人のエリア担当がいます。コーヒーの産地は日本から非常に遠いんですが、心は産地に近くいるつもりで仕事をしています」(荒川さん)

『The Roast』では1年間で36種類のコーヒーが届けられる。このなかで、大切なキーワードとしているのが、「スペシャルティコーヒー」と「100%シングルオリジン」の2つだ。

 世界中で取れるコーヒー豆の美味しさの尺度を表すものとして、スペシャルティコーヒー協会が認めたのが、「スペシャルティコーヒー」だ。『The Roast』で提供される36種類のコーヒーすべてが、この「スペシャルティコーヒー」として認定されている。なお、石光商事には、社内にこのスペシャルティコーヒーを認定できる認定員がいて、世界中から届くコーヒー豆のカップテストを行い、味の検査を行っている。

 そして、もうひとつの「シングルオリジン」は、生産地域や生産者などを限定し、それらをブレンドせずに提供するということ。そうすることで、それぞれの産地ならではの味わいが楽しめる。また、その産地、地域のストーリーにも思いを馳せられるという訳だ。

 さらに、石光商事が重視しているのが安全性だ。コーヒー豆も農作物であることに違いはない。このため、残留農薬が検出されるなんてこともあるという。そこで輸入するコーヒー豆には、研究開発室による検査態勢を確立。The Roastで提供するコーヒー豆はすべて、農薬検査などを行い、安心・安全が確認できたコーヒー豆を届けるという。

 味にこだわったコーヒー豆調達の苦労を荒川さんはこう語る。「コーヒー豆の輸入商社としては、当然ながら、美味しさを重視しています。しかしせっかく美味しい豆でも、品質管理の面で、時にはコーヒー豆を産地に突き返さなくてはならないこともあるんです。そのとき、コーヒー農家の現場を知る私はどうしても産地側の立場に立ちますから、社内で品質管理の担当と戦うこともしばしばです。弊社が培ってきたブランドと味を守るためには、美味しさと安全性の確認は(戦いながらも)しっかりとやっています(笑)」(荒川さん)

コーヒー豆が取れるエリアを示すコーヒーベルト。赤道に近い標高の高いエリアのコーヒーは派手な味。標高の低いエリアは大人しい味の豆になるという。

スターターキットに含まれるブラジルとエチオピア。標高や緯度が異なるため、味わいも大きく異なるという。

 では産地ではどのようにコーヒーの美味しさを生み出しているのだろうか。エリア担当は、年に数回、実際に現地まで赴き、生産者や農園経営者と深く付き合うことで信頼関係を構築していく。信頼関係と、買い手として品質へフィードバックをすることで毎年、品質を向上させていくことができ、質の高いコーヒー豆の安定供給ができるようにしているという。

 裏話として語られたエピソードの中で興味深かかったのが、農園で働く収穫労働者の食事事情だ。これが実はおいしいコーヒー豆にも少なからずかかわっているという。
「大規模な農園では、収穫労働者たちに給食のように食事も提供します。この食事が実は重要なんです。収穫労働者は基本的に年によって変わってしまいますが、食事が美味しいと次の年にも来てくれます。すると、いちいちゼロから教えなくても、完熟したコーヒー豆をきちんと収穫してくれ、収穫される豆のレベルが上がり、農場のレベルもアップします。『The Roast』ではこうして収穫した、熟した豆を使っています。独特の甘さがある、上品な味わいを楽しんでください」(荒川さん)

収穫するのは左側の熟したコーヒー豆。熟練のスタッフが厳選して収穫することで熟した豆だけを集められる。

左下が収穫労働者に給食を作る女性たち。おいしい食事を作れる彼女たちもまた、コーヒー産業の質を高める担い手なのだ。

36種類のコーヒー豆を1年にわたってお届け。味わいやエリアなどで分けて、毎月コーヒートリップを楽しめるようにしている。

 石光商事では、現地で収穫タイミングごとに分けられたコーヒー豆を、ロットごとにカップテストを行っている。そのなかでも特に美味しいと判断されたものを『The Roast』用のコーヒー豆として選んでいるという。

 そうして集めてきた世界各地のコーヒー豆。これを36種類ものバリエーションで選び出すこと自体が、The Roastのプロジェクトの大きなチャレンジだった。どの豆を、どういうコンセプトで選ぶか? これは、パナソニックの担当者や後藤さんと共に悩みながら選定していくという作業だったという。

「旬も考慮したい、また、せっかく生豆に触れてもらうのだから、色形などのその違いも知って欲しい。香り、味も楽しんで欲しい。個性のあるもの、違うものを楽しんで欲しい。旅をしてもらうというコンセプトから、同じ月には中米、アフリカ、アジアなどエリアを分けて楽しんで欲しい。そんなことをいろいろ考えました。そうしてできたのがこの表です。全部で15ヵ国36種類です。ここまで多い品種を出したのは初めてでした」(荒川さん)

 老舗のコーヒー豆輸入商社とはいえ、これだけのバリエーションを作るというのはまずないことだそう。コーヒー豆のセレクト自体もかなりマニアックな部分もあり、通常は大人の事情で店頭に並ばないような豆まで手元にやってくる、ということになる。

 体験会が終わった後も、スマートコーヒー焙煎機を再び触りにいったり、パナソニックの担当者や、後藤さんや荒川さんに声をかけて、コーヒーに関する質問を語り合う参加者の皆さんがたくだんいた。何人かの人に体験会の感想を尋ねてみたが、皆さん、コーヒーのディープな世界をのぞき見て興奮した様子。参加者の中には、すでに自家焙煎を楽しんでいる方もいたが、『The Roast』の作り出すコーヒー体験への満足度は高かった様子だった。

 パナソニック初となるコーヒーの焙煎サービス『The Roast』。コーヒー好きには、非常に惹かれるものになりそうだ。

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