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IoT&H/W BIZ DAY 3 by ASCII STARTUP 第27回

SAO Future Labコラボ製品第1弾がついに発表!

「口説けるロボットほしい」SAOをテーマにベンチャー代表、編集者が熱く激論

2017年03月27日 16時00分更新

文● 平澤寿康 編集●ASCII STARTUP

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 3月21日、IoTおよびハードウェアビジネスにフォーカスを当てたスタートアップイベント“IoT&H/W BIZ DAY 3 by ASCII STARTUP”が開催された。そして、特別セッションとして行なわれた「SAO Future Labコラボ製品発表会」では、アスキーの『ソードアート・オンライン(SAO)』コラボプロジェクト「SAO Future Lab」に参画するベンチャーを交えたトークが繰り広げられるとともに、「SAO Future Lab」のコラボ商品第1弾が発表された。

「IoT&H/W BIZ DAY 3 by ASCII STARTUP」でSAOコラボ商品第1弾を発表

劇場版SAOは興行収入20億円突破! ハリウッドでの実写ドラマ化も進行中

 特別セッションには、『SAO』の原作担当編集兼アニメプロデューサーである株式会社ストレートエッジの三木一馬氏と、今回のプロジェクトに参画している株式会社オリィ研究所の吉藤オリィ氏と、ユカイ工学株式会社の青木俊介氏が参加し、トークが繰り広げられた。

 まず初めに、『SAO』の現状について三木氏より説明があった。現在『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』が絶賛公開中だが、すでに興行収入が20億円を超え、アニプレックス配給の映画として歴代ナンバー1の興行収入を達成するという、大きな成功を収めていることが公表され、来場者から大きな拍手が沸き起こった。また、原作は全世界で累計発行部数1900万部を突破するとともに、ハリウッドのメジャースタジオ「スカイダンスメディア」よりオファーを受け、実写ドラマ化に向けたプロジェクトが進行中であることも報告された。

特別セッションに参加した3名。左から『SAO』の原作担当編集兼アニメプロデューサーでの三木一馬氏、株式会社オリィ研究所の吉藤オリィ氏、ユカイ工学株式会社の青木俊介氏

セッション冒頭、三木氏が『SAO』の現状を説明

『劇場場SAO』は、公開4週目には興行収入20億円を突破している

原作の発行部数は全世界で1900万部を突破

ハリウッドのメジャースタジオ「スカイダンスメディア」による実写ドラマ化に向けたプロジェクトも進行中

今後はセンサーやAIの進化に興味あり

 今回の特別セッションに参加したオリィ研究所とユカイ工業は、どちらもロボットを開発するベンチャー企業だ。

 オリィ研究所が発売しているロボット「OriHime」は、遠隔操作型のロボットで、主目的は”操作する人の分身になる”というものだ。OriHimeには、カメラ、マイク、スピーカーが内蔵され、入院や身体の障害、単身赴任などさまざまな要因によって行きたい場所に行けないという人が、OriHimeを設置することで、自分がその場にいるかのように周囲の人とコミュニケーションがとれる。吉藤氏は、もともと車椅子を研究していたそうだが、その過程で「心を運べる車椅子は作れないものか」と考え、分身として使えるロボットの研究を始めたという。

 またユカイ工業では、「2025年までにすべての家庭にロボットを届けたい」という想いでさまざまなロボットを開発している。販売中のロボット「BOCCO」では、子供やお年寄りとコミュニケーションを図ることを目的としており、スマートフォンと連携し、スマホから呼びかけたり、センサーを利用して子供の帰宅などの情報をスマホに伝えたり、といった機能を備えている。

 このように、双方が開発するロボットは、どちらも”コミュニケーション”に重点が置かれている点が特徴となっている。そういったなか、「少し先に見えるテクノロジーで注目と思っているものは?」という問いに対し吉藤氏は、「指先ひとつ、眼球すら動かせない患者が、意識を伝えるにはどうすればいいのか。脳波や筋電、またはそのほかの何かでもいいので、外部とつながるためのデバイスの研究は興味のあることです」と指摘。

 また青木氏は、「音声合成の技術は進んでいるので、そういったものがロボットなどに搭載されていくと思います。また、自分たちができそうだなと考えているのが、人間の感情を読み取れるセンサーです。ちょっとした人の気持ちの切り替わりを感知できるセンサーは、割と近い将来にできると思ってチャレンジしています」と、どちらもセンサーやAIの進化に興味があると述べた。

 ロボットのハードウェアを構成する重要なパーツであるモーターやバッテリーなどは、すでに技術が枯れていて今後の画期的な進化はあまり望めないのに対して、センサーやAIは伸びしろが大きいため、ベンチャー企業にとっても興味のある部分だという。もちろん、なんでも取り入れればいいというわけではない。

 たとえばOriHimeでは、遠隔操作で操作者がその場にいるかのような振る舞いを重視して、あえてAIは取り入れていないそうだ。ただ吉藤氏はコミュニケーションを取るのが苦手な自身を引き合いに、「円滑なコミュニケーションを助けるようなAIがあるとうれしい」(吉藤氏)と、AIの進化にも期待を寄せていた。

吉藤氏は「心を運べる車椅子は作れないものか」と考え、分身として使えるロボットの研究を始めた

青木氏は「2025年までにすべての家庭にロボットを届けたい」という想いでさまざまなロボットを開発

ゲームの中でも居場所があることで、気持ちが前向きになれればいいんじゃないか

 続いて、『SAO』の作品内で共感した部分について聞かれた青木氏は、「普段できない想像の世界を体験できるというところが、すごくおもしろいと感じました。テクノロジーが進化しても、人間の感情のようなものを伝えられる技術は、我々が目指している部分ですが、そういったところが描かれているのが良かった」と回答。

 また吉藤氏は、オンラインゲームをやっていた経験があるため、『SAO』の展開に共感する部分が多かったという。”人は役割が欲しい生き物”と表現しつつ、「自分はこの世にいない方がいい存在なんじゃないかと思ってしまうことが最悪」と指摘。そして「オンラインゲームは引きこもりを増長すると言われていて、そういう側面もあるかもしれませんが、ゲームの中でも自分の居場所があることはいいことだとポジティブに捉えています。寝たきりの友人も、そういった居場所があればいいなと思いますし、SAOを見ている時にも感じていました」と、SAOの内容を評価しつつ、ゲームが果たす優位な側面について語った。

 それを受け三木氏は「”しょせんゲームだろう”と言われることもあるんですが、SAOの魅力は、登場人物全員がそう思っていないところです。全員が、目の前のことにたいして、本気で向き合い、一喜一憂しています。ゲームというものに真剣に取り組んでいる姿が、しっかりドラマとして描かれているところが支持されているんだと思っています」と、SAOの魅力を語りつつ、「現実では弱い人もいるし、がんばりたくてもがんばれない人もいます。しかしゲームは基本裏切らないんです。真面目にプレイすれば結果が出るし、片手間でやればなにも評価されない。とくにコミュニケーションできるオンラインゲームでは、成果を出せば自慢できるし、感謝もされます。それはもう現実世界と同じなんですね。なので、ゲームをやって、自分の気持ちがちょっとでも前向きになればそれでいいんじゃないかと思います」(三木氏)と、作品に共感し評価してもらったことに感謝していた。

三木氏は「ちょっとでも気持ちが前向きになるという部分があればいいんじゃないか」とゲームの優位な側面を力説

夢を持つことは、生きる意欲につながる

 続いて、三木氏からユカイ工業のロボット、BOCCOに対して次のような要望が語られた。それは、「仮にBOCCOが女の子キャラだとしたら、口説きたいんですよ。この子の性格こそ天気予報にしてもらいたい。女の子って基本きまぐれで、理不尽さもいれて再現してほしい」という一見無茶なお願いだった。たがその真意としては、「遠く離れた方や、自分が動けないときにコミュニケーションを取る手段として、ゲームを一緒にプレーするというのもありだと思っています。たとえば、SAO内でもユウキとアスナはゲームで打ち解け合ったというのもあるんですが、ゲーム要素が1つでもあると面白いんじゃないかな、と思っているんです」(三木氏)と述べた。

 青木氏は、「攻略までは考えたことがなかった」と笑って返したが、真意を聞いて納得の表情を浮かべていた。また、話を聞いていた吉藤氏も「まさにその通り」と共感を示した。「我々が思い出を作るのはどういったものかと考えると、たわいもない雑談だったり、いたずらなどが思い出に残ったりするんです。だから雑談は非常に重要で、AIにはできないことなんです。実際にOriHimeを使っている人に聞いたうれしいことというのが、一緒に家に帰ってテレビを見ることなんです。だれかと一緒になにかをやっているという感覚がうれしいんです。不登校だったある高校生が、OriHimeを使って学校に行って、友達とゲームをしたり、文化祭の裏方でがんばったりしたことで自分の居場所を見つけて、それをきっかけに登校できるようになったという事例もあったんです」(吉藤氏)と、具体例を示しつつ、「患者さんにOriHimeの事例を見せることで、夢を持つことにつながるんです。夢を持つことは、もうちょっと生きてみよう、といった意欲につながるんです。実際の事例はもちろん、アニメや小説の世界を紹介することも、非常に意味のあることなんです」(吉藤氏)と、自らの取り組みにもSAOが役立っていると語った。

「BOCCOに攻略要素を入れて欲しい」と無茶ぶりする三木氏

最初は「攻略までは考えたことがなかった」返しつつ、真意を聞いて納得する青木氏

ゲームの役割も重要と、実例を挙げつつ力説する吉藤氏

第1弾のSAOコラボ製品は「DENDAMA SAO Ver.」

 そして、セッションの最後に、SAO Future LabのSAOコラボ商品第1弾として、「DENDAMA SAO Ver.」が、2017年5月よりアスキーストアで受注開始になることが発表された。

 DENDAMAは、”けん玉をハック”した製品で、世界中のけん玉を遊ぶ人と楽しめるもの。国内300万人、全世界で1000万人と、世界的に競技者が増えているけん玉の世界だが、DENDAMAでは、けん玉にさまざまなセンサーを入れて、遠くの人と遊べるという部分が最大の特徴となっている。また将来は、AR技術を組み合わせ、対戦情報を可視化してリアルタイムに確認しながら楽しめるようにしたいという。

 今回発表されたDENDAMA SAO Ver.は、SAO仕様の特別カラーリングで、キリトの二刀流をイメージしたデザインと、キリト役のボイスを一部取り入れるなど、SAOの世界観を実感してもらえるような商品にしたいという。製品はグローバルでの販売も予定しているが、価格や仕様などの詳しい情報は、今後ASCIIにて続報をお届けする予定。

 SAO Future LabのSAOコラボ商品は、このDENDAMA SAO Ver.を皮切りに、今後もさまざまな展開を進めていく予定なので、期待してもらいたい。

SAOコラボ製品第1弾として発表された「DENDAMA SAO Ver.」。2017年5月にアスキーストアで受注開始予定

キリトをイメージしたSAO仕様のカラーリングやキリトのボイスを採用している

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