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オールフラッシュが“ニューノーマル”になる時代への適合、「3PAR」新版や新機能も

HPE、ストレージ製品責任者らが戦略と新版製品を発表

2017年03月24日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 米ヒューレット・パッカード エンタープライズ カンパニー(以下、HPE)のストレージ事業部門の製品責任者らが来日し、3月17日、HPE日本法人(日本ヒューレット・パッカード)が開催した記者会見で同社のストレージ関連製品の戦略を説明した。先日HPEが買収を発表したニンブルストレージ(Nimble Storage)についてもコメントしている。

HPEのストレージ戦略は「オールフラッシュ」「Software-Defined&HCI」「ビッグデータ&Webスケールアーカイブ」の3点を重視している

米HPE データセンター・ハイブリッドクラウド CTO、アジアパシフィック部門のポール・ハーバーフィールド氏

日本ヒューレット・パッカード データセンター・ハイブリッドクラウド製品統括本部 統括本部長の本田昌和氏

米HPE ストレージ3PARワールドワイドプロダクトマネージャのアラビンダン・ゴパラクリシュナン氏

米HPE ストレージデータプロテクションソリューションズ ワールドワイド プロダクトマネージャのアシュウィン・シェティ氏

米HEP ソフトウェアデファインドデータセンター アジアパシフィック部門ゼネラルマネージャのジャンポール・ボバイルド氏

フラッシュストレージが「新しい常識=ニューノーマル」の時代に対応

 米HPEのハーバーフィールド氏は、「現時点では15%の企業がオールフラッシュに移行しているが、裏を返せば、既存のストレージがまだ85%も使われているということだ」と述べ、既存のストレージをフラッシュストレージ環境へと移行させていくことが重要だと語った。

 「もともとオールフラッシュは、データベースなどの特定分野のパフォーマンス向上を目的に導入が始まったが、現在ではそれ以外の幅広い領域にも活用されはじめており、今後はフラッシュが『ニューノーマル』になる時代がやってくる。フラッシュを最大限活用する新しいソフトウェア群が登場する一方で、従来のストレージには対応しないというソフトウェアも増える。これがフラッシュストレージへの移行を加速させることになる」(ハーバーフィールド氏)

オールフラッシュはパフォーマンス(第1段階)、経済性(第2段階)を経て、あらゆるワークロードに適用される「ニューノーマル」(第3段階)の時代へ

 ハーバーフィールド氏は、HPEでは2013年からオールフラッシュ製品を投入しており、現在は第3位の市場シェアを持つと説明し、フラッシュがニューノーマルになる今後のストレージ市場において「HPEはメインプレーヤーになることができる」と述べた。

HPE 3PARの大幅な機能拡張、中小企業での導入を促進するパッケージも

 今回は「HPE 3PAR」ストレージに関する大幅な機能拡張が発表されている。

 具体的には、最新版「HPE 3PAR OS」をリリースしたほか、平均75%の容量削減が可能な「3PAR Adaptive Data Reduction(ADR)」、遠距離間にある3カ所のデータセンターでのディザスタリカバリにも対応した「3PAR Peer Persistence」、データ保護対象を3PARアレイ以外にも拡大する「HPE Recovery Manager Central(RMC)」、自動化機能の拡張やデータモビリティの強化により、業務の俊敏性を実現しながら一元的な管理を実現する「3PAR StoreServ Management Console(SSMC)」の各機能拡張が発表された。

インライン重複排除や圧縮、パッキングなどで平均75%の容量削減が可能な「3PAR Adaptive Data Reduction(ADR)」

 最新版HPE 3PAR OSでは、iSCSIのレイテンシーを最大40%削減し、iSCSI経由で実行されるアプリケーションを高速化。拡張性の拡大とプロビジョニングの自動化、異なるプロトコル間のファイル共有を可能にした「3PAR File Persona」の機能強化により、さらに多くのワークロードに対応することができるという。

 RMCでは、競合バックアップソフトウェア製品に比べて23倍のバックアップ速度と、7倍のデータリストア速度を実現。さらに、CPUのリソース消費を9分の1に削減。3年間のバックアッププロセスコストは、最大50万ドルの削減が可能になるという。

 米HPEのシェティ氏は、「最新版のRMC 4.0は、新たなライセンスモデルによって、追加コストを払うことなく利用できる。多くのアプリをサポートし、さらなる柔軟性を持つことできた。さらに、ヴィーム・ソフトウェア(Veeam Software)とのパートナーシップを強化する」と発言した。

 加えて、新たな包括的ライセンスモデルも提供する。3PARのワールドワイドプロダクトマネージャを務めるゴバラクリシュナン氏は、「すべて(の機能)が含まれるソフトウェアライセンスであり、購買プロセスの簡素化とともに、コストを最大30%削減することができる」と説明した。

 またHPE日本法人では、「HPE 3PAR StoreServ 8000」「同 2000」を発売するとともに、同 8000を対象とした「ソフトウェアがコミコミへ!新生3PAR体感キャンペーン」を実施する。これは、中小規模の3PARストレージ導入を支援するもので、保守から導入設置サービスを含めたパッケージを、導入しやすい価格で提供するという。HPE 3PAR StoreServ 8200の場合、オールフラッシュ構成(物理容量2.9TiB)のパッケージで288万円(税抜)から導入できる。

 なおHPEによると、現在、3PARの総出荷台数のうち53%をフラッシュストレージが占めているという。

 また、バックアップアプライアンス「StoreOnce」では、仮想アプライアンス版のStoreOnce VSAがAzureクラウド上に実装可能になった。これにより、導入の柔軟性と2倍の性能向上を実現している。シェティ氏は、「大手企業から小規模企業までが(StoreOnceを)利用できる環境が整うことになる」と述べた。

仮想アプライアンスから大規模物理アプライアンスまでをラインアップする「StoreOnce」

 HPE日本法人の本田昌和氏は、「今回の3PARの新たなリリースは、(HPEの戦略分野の1つである)『ハイブリッドIT』の環境をシンプルに、スピーディに提供できるものになる。日本ヒューレット・パッカードは、エントリー市場で一定のポジションを得ているが、ミッドレンジでのシェア拡大がこれからのキーになる。今回の3PARの機能拡張は、その領域にフォーカスしたものであり、市場においてプレゼンスをあげることができる」と語った。

コンポーザブルインフラ「Synergy」とHCIの現況

 HPEのボバイルド氏は、同社が展開するコンポーザブルインフラストラクチャ製品「Synergy」やハイパーコンバージドインフラ(HCI)製品の戦略と現況について説明した。

 HPE Synergyは、物理リソース(コンピュート/ストレージ/ネットワーク)を単一のリソースプールに集約し、ワークロードの必要に応じて柔軟にITインフラを“組み立てる”ことのできる製品。国内では2016年1月に発表され、ボバイルド氏によれば、日本の企業も含めベータ導入と活用が始まっているという。

 「(Synergyは)その名の通りに、コンポーネントの組み合わせによって、簡単に(幅広い要求に対応するITインフラを)構築でき、Software-Defined技術の活用で、クラウドのように数秒単位でのスピード感を持ったデプロイができるのが特徴。ひとつのプラットフォームで既存のシステムや開発環境を利用でき、活用するワークロードの選択肢を広げ、それを簡素化された環境で実現できる」(ボバイルド氏)

 また、HCI製品の領域においては、「HPE Hyper Converged 380」を投入したことについて触れた。HPE Hyper Converged 380は、ProLiant DL380 Gen9をベースにしたハイパーコンバージドアプライアンスで、2ノードから16ノードまでの拡張を可能とする特徴などを持つ。

、「HPEは、SimpliVityの買収により、さらにコンバージドインフラストラクチャを進化させることができる。エンタープライズクラスのデータサービスを提供し、それを全世界でサポートできる。クラウドのようなスピードが欲しい顧客に対して最適な製品を提供できる」(ボバイルド氏)

 ハーバーフィールド氏は、あらためてHPEのストレージ戦略を明確に語った。

 「HPEは過去2年間で大きな変革を図り、事業を分離する一方で、新たな企業の買収も行っている。ただし、将来に向けた戦略はシンプルであり『世界ナンバーワンのデータセンターインフラストラクチャープロバイダー』としての位置づけを確保していくことである。これは日本でも同じだ」(ハーバーフィールド氏)

 さらに同氏は、米フォーブス誌がまとめた「2017年における5つのストレージトレンド」が、フラッシュストレージの加速、パブリッククラウドの減速、将来のストレージ技術へのフォーカス、サーバーベースのストレージへの対応、新たなデータモデルへの移行だったと紹介。このトレンドに対し、HPEではオールフラッシュ、Software-Defined&HCI、ビッグデータ&Webスケールアーカイブが重要な戦略だと考えており、「HPEでは最大の価値を提供できる」と発言した。

 なおハーバーフィールド氏は、今月買収を発表した米ニンブル・ストレージについても言及。「ニンブル・ストレージの買収は4月末までに完了するだろう。それまで詳細は話せないが、InfoSightによるアナリティクス(予測分析)機能の活用には期待している。HPEの既存ポートフォリオをどう補完するのかにも注目している」と述べている。

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