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東電の原発再稼働遠のく、現場と本社の連携ミスでまたも失態

2017年03月21日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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3月11日、東京電力福島第1原子力発電所敷地内の新事務本館で黙とうする東電社員。失態を演じる本社を、最前線の彼らはどう思うのだろうか Photo by Yasuo Katatae

「原子力を扱う資格があるのか、あらためて問われている」

 東日本大震災による東京電力福島第1原子力発電所(1F)事故から6年が経過した3月11日、地震が発生した午後2時46分から1分間の黙とうを終えた石崎芳行・東京電力ホールディングス副社長福島復興本社代表は、廃炉に携わる社員約700人を前にした訓示の中でこう述べた。

 だが今の東電は、その資格があるかどうか評価できるような状況にはない。

 現在、東電は新潟県に立地している柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働を目指して、原子力規制委員会の審査を受けている。その中で、緊急時対応の前線基地となる免震重要棟の耐震性に関する説明をめぐって、2014年4月に実施した解析で、7種類の基準地震動の全てにおいて規制基準を満たさないというデータがあったにもかかわらず、その説明が抜け落ちていたことが今年2月14日の審査会合で明らかになったのだ。

 規制委の田中俊一委員長は、「東電の体質の問題。非常に重症だと思っている」と批判。同28日に廣瀬直己社長に直接、申請書の再提出を求める事態に発展した。

 原因究明に動いた東電は3月9日、本社での情報共有の不備や、部署間での連携不足が背景にあったと規制委に報告。これに憤慨しているのが、柏崎刈羽原発の現場だ。「連携ミスするなんて、本店はいったい何やっているんだ」との怒りの声が噴出した。3年近く取り組んできた審査対応の最終段階だったから無理もない。

 1F事故直後から、情報を共有する体制の不備や本社と現場の連携の悪さは問題視されてきたことだ。事故から6年たった今も、東電には依然として悪弊が残っていることが明らかになってしまった。

 廣瀬社長は「原子力を扱う資格があるかないかではなく、常に努力を続ける」と決意を表明したが、その言葉も空虚に響く。

遠のく再稼働

 今回の失態は、東電の運命を大きく左右する可能性すらある。

 16年12月、東電の改革の方向性を議論する「東京電力改革・1F問題委員会」(東電委員会)で、柏崎刈羽原発の再稼働は1F廃炉や除染、賠償のコストを稼ぐために重要だと位置付けられた。

 ところが、今回の失態で立地自治体である新潟県からの信頼も地に落ち、原発再稼働は遠のく可能性が高い。再稼働の見込みが立たない事態が続けば、東電委員会でも議論された、東電の原子力事業を分離し、他の電力会社と共同で再稼働を目指すという案が現実味を帯びることも考えられる。

 柏崎刈羽原発の現場だけでなく、信頼回復に向けて汗を流す全ての現場社員の努力が水泡に帰す恐れがあることを、経営陣を含め、本社はあらためて肝に銘じるべきだろう。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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