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松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 第156回

スマートホームで意外と重要になってくる「見えない壁」

2017年03月17日 10時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII.jp

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もう1つ重要になるポイント「ジオフェンス」

 さて、スマートホームの自動化を作る上でもう一つ重要になってくるのは、ジオフェンスです。直訳すると位置情報の壁。しかし実際に壁を立てるわけではありません。

 ジオフェンスは、スマートホームが設定されている、多くの場合自宅と自分との位置関係によって、自動化を設定した機能を発動させるきっかけを作る考え方です。

 たとえばAppleのHomeKit対応デバイスを束ねるiOSアプリ「ホーム」では、自分が自宅からどれだけ離れたら、あるいはどれだけ近づいたら、そのオートメーションを実行するかという設定ができます。

 最小半径は100m。例をあげると、自宅から100m以内に近づいたときに電気を点ける、100m以上離れたときに電気を消すという条件を設定することができます。

 電灯なら100m程度で良いですが、暖房器具であれば、家から1km離れた駅に到着したらONにすると設定しておけば、15分ほどの徒歩のうちに部屋を暖めておくことができるのです。逆に家を出かけるときには、100m以上離れたら暖房を消すという設定を仕掛けておけばいいでしょう。

 自宅を中心とした範囲に見えない壁を設定し、ここに入る、ここから出る、という移動をトリガーにしているのが「ジオフェンス」による自動化です。家に帰ってくるときにどうなっていたらよいか、家から出かけるときにどうなっていれば良いか、という自動化ができるというわけです。

やっぱり、アプリには家族を把握してもらわないと難しい

 1人暮らしであれば、自分だけの行動でジオフェンスを設定しても問題なさそうです。しかし家族で住んでいる場合は問題が起きます。

 スマートホームをコントロールする人が自分だけである場合、もし家族が家にいたとしても、自分が家から離れれば、前述のジオフェンスにより、家の電気が消えます。当然家に残っている家族は困ってしまうわけで、ここでもデバッグが必要になりますね。

 ただし、そのデバッグ方法は、ジオディフェンスを使う限りにおいては、『家族がまだ家にいることを認識させる』以外にありません。つまり、スマートホームを束ねるソフトウェアは、誰がその家に住んでいる家族なのか、どのデバイスがその家族のものなのかを把握し、その人がいる場合は自宅を『不在』モードにしないようにする必要があります。

 Appleの「ホーム」アプリでは、家族のiCloudアカウントを追加することができますが、どうも家人のアカウントがうまく追加できません。ホームアプリを立ち上げると、家の中のデバイスをスキャンしているとの表示で止まってしまうのです。

 できればこの原稿までに解決しておきたかったのですが、上手くいかないので、当面ジオディフェンス機能はオフにしておく必要があります。

 とはいえ、自分の家との位置関係がスイッチになるという状況を考えてみると、面白い法則に気づくことができるかもしれません。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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