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中国の成長鈍化を襲う3大リスク「トランプ、債務、人民元」

2017年03月15日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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李克強首相(中央)が政府活動報告において、習近平国家主席を「核心」と位置付けたのも、成長率目標と並んで話題になった Photo:REUTERS/アフロ

中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)が3月5日に始まり、今年の実質GDP成長率目標が6.5%前後に引き下げられた。「安定成長」を全面的に掲げたものだが、不動産バブル崩壊懸念やトランプリスクなど先行きは不透明だ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 大坪稚子)

 中国の全国人民代表大会(全人代)が3月5日に開幕した。李克強首相は「政府活動報告」で、今年の実質GDP(国内総生産)成長率目標を「6.5%前後」とした。

 習近平国家主席(中国共産党総書記)が掲げる2020年までの、対10年比での「所得倍増計画」を達成できる水準ではあるものの、昨年の目標「6.5~7%」より引き下げた。言うまでもなく、図のように、中国の実質GDP成長率が鈍化していることが背景にある。

 その要因は、構造改革が進まず、過剰設備、過剰在庫、過剰債務が成長の重荷となっていることにある。長年、構造改革を課題に挙げ続けているが、進捗していない。

「中国共産党は何より経済の安定を重視している。昨年12月の中央経済工作会議においても、“穏中急進(安定を保ちつつ経済成長を促す)”を繰り返し使っていた」(西濱徹・第一生命経済研究所主席エコノミスト)

 今年は、中国では5年に1度の共産党大会があり、最高指導部の入れ替えが行われる。それだけに、習主席としては、経済の失速を避けて、次の指導体制づくりに向かいたいところだ。

 足元では中国経済の失速懸念は薄れている。米国などがけん引し、循環的要因で世界景気は回復局面にある。中国の輸出が拡大し、製造業PMI(購買担当者指数)は2月まで7カ月連続で50を超え堅調さを見せている。

 李首相の言葉に従えば、中国は、16年は鉄鋼や石炭関連で目標以上の生産能力削減を進めたとされる。それにより、市況が底打ちするとともに、中国経済が上向いたことで、新興国市場にもプラス効果が出てきた。

 もっとも、好循環が続くかどうかは不透明だ。(1)トランプシフト、(2)金融システム不安、(3)米国の利上げや欧州の選挙などに起因する市場の変調といった三つのリスクがあるためだ。

米国利上げや欧州の選挙次第で資金流出も

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 第一のリスクであるトランプシフトとは、グローバル企業が生産拠点を中国から、ベトナムなど対米貿易赤字の小さい国にシフトさせる動きだ。米国のドナルド・トランプ大統領は、“米国第一主義”を掲げており、米国にとって最大の貿易赤字相手国である中国からの輸出に対する風当たりは強まるとみられる。「中国での製造コストが上がり、グローバル企業がサプライチェーンを見直している中、トランプシフトがその動きを加速させかねない。そうなれば、中国国内の民間投資が減少し、中国経済の成長力をさらに鈍化させる」(三尾幸吉郎・ニッセイ基礎研究所上席研究員)。すでにグローバル企業が中国への直接投資を減らしている一方、中国企業が海外への直接投資を増加させる動きも出始めている。

 第二のリスクは債務過剰による金融システム不安。BIS(国際決済銀行)によれば、16年6月末時点で民間部門の債務は対GDP比で209.4%に達している。ちなみに日本のピークは、1994年の149.2%。投資家の間では「債務が大きいため、いつバランスシート調整が進んでもおかしくない」との懸念が強い。そうなれば、債務返済のために投資が冷え込んで景気が鈍化し、不良債権が増加する公算が大きくなる。

 不動産市況も不透明だ。一部の都市では不動産価格が急上昇し、バブルの様相を見せている一方、地方では過剰在庫のため低迷している。地域ごとにきめ細かい金融政策(金利や住宅ローン規制など)が求められるが、不動産投資は借り入れに頼る部分が多く、いったん下落し始めるとコントロールし切れず、急落する恐れがある。不動産市況下落は、米国で起こったサブプライムローン問題のような金融システム不安につながらないともかぎらない。

 第三のリスクは、米国の利上げや欧州の選挙などに伴う新興国通貨ならびに人民元の下落だ。トルコなどの新興国市場で資金流出が起き、通貨が急落した場合、市場がリスクオフ(リスクの高い資産を嫌う投資行動)となり、人民元に波及し急落する恐れもある。中国はさらなる介入が必要になる。現在、中国の外貨準備高は2月末で約3兆ドル。余力はまだあるが、14年のピークより1兆ドル前後減少しており、いつまでも介入を続けているわけにはいかない。

 ドイツやフランスなど欧州での総選挙、大統領選挙でポピュリズム政党・候補が勝利するようなことになれば、そのときも市場のトレンドはリスクオフとなる。

 全人代で中国は安定成長路線を示したが、構造改革も進まず、自律的な成長に向けたけん引役も見当たらない。中国の政策が綱渡りになる可能性すらある。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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