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住商が欧米バナナ市場参入、総合商社がなぜバナナ?

2017年03月15日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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ファイフスはバナナ以外にパイナップルなども取り扱い、住友商事はこれらの顧客基盤に新商品投入をもくろむ Photo:Bloomberg/gettyimages

 非資源ビジネス強化を加速させる住友商事が、さらにアクセルを踏み込んだ──。そんな印象を市場に与えたのが、アイルランドの青果卸大手ファイフス(ダブリン)の買収だ。住商は先月、約910億円を投じてファイフスの全株式を取得し、完全子会社化に踏み切った。

 日本人にはなじみの薄い会社だが、ファイフスは欧米の青果物市場で強固なシェアを誇る。バナナの販売シェアは欧州1位、北米4位。特に欧州は、日本の6倍近い年3億箱(1箱18キログラム換算)のバナナを輸入する巨大市場だが、うち約15%のシェアを占めるファイフスの存在感は大きい。

 住商のバナナ取扱量は、日本向けを中心に年1500万箱程度だが、ファイフス買収で一気に同7800万箱へ増加する。「規模が大きい欧米市場への進出は長年の悲願だった」と山名宗・住商食料事業本部長が語るように、住商は今後、ファイフスを足掛かりに巨大市場へ参入していくことになる。

見えにくい相乗効果

 ただし今回の買収に関し、首をかしげる市場関係者も少なくない。住商が持つ既存事業との相乗効果(シナジー)が見えにくいためだ。

 住商は1960年代からバナナの輸入を始め、生産、加工、販売へと拡大し、現在は国内トップの輸入シェア約3割を誇る。その調達先はフィリピンのミンダナオ島だ。一方、今回買収したファイフスの農園は中南米が中心で、いずれも欧米市場向けの産地だ。

 バナナは生鮮食品のため、消費地に近い産地から調達する「地産地消」(井村公彦・住商常務)が基本だ。例えば日本向けのフィリピン産の生産量が台風による被害などで低下しても、遠方の中南米産を代替とすることは難しい。

 つまり、いくら調達先を多様化してもシナジーになり得ない。住商自身、「市場が違うアジアと欧米でシナジーを無理につくり出すことは、基本的には求めない」(同)というスタンスだ。

 では買収によりファイフスをどう成長させるのか。住商は農園拡大や物流の効率化などを挙げるが、市場では「相応のシナジーがなければ投資額以上のリターンは得られない」と懐疑的な見方が根強い。

 バナナビジネスといえば、伊藤忠商事が2013年、米ドールのアジア青果物事業と全世界の加工食品事業を約1350億円で買収したことが記憶に新しい。

 なぜ総合商社がバナナに着目するかといえば、バナナが景気変動に影響されにくく安定的に消費される商材だからだ。だが伊藤忠のドール事業は台風や干ばつによる生産量の低下に苦しんだ。

 住商は資源ビジネスの減損損失を経て非資源強化にかじを切ったが、非資源にも存在するリスクをどう低減するのか。具体的な戦略を示さなければ、市場を再び覆う「高値つかみ」の疑念を払拭できない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 重石岳史)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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