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旅人から複業家、そしてコミュニティマーケティングの伝道師へ

AWSだった小島英揮さん、パラレルキャリアの道をただいま爆走中

2017年03月10日 10時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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小島さんがスタートアップを起こさなかった訳

大谷:なるほど。ここまでで小島さんの複業家への道程はだいたいわかったんですが、ソラコムの玉川さんのようにスタートアップを自ら起こすという選択肢もあったわけですよね。

小島:これはなぜ私が今までサラリーマンだったかという話とリンクするのですが、実家が自営業だったんです。店を夜まで開けていて、お客様が来たら、子供の僕たちは夜ご飯を食べられない。それがいやだったわけではないのですが、なにより営業から、経理から、全部をやるのは大変だと思いました。これは無理だなというのがわかったんです。

「実家が自営業だったので、全部やるのは大変だと思いました」(小島)

だから、僕はある年齢から特定領域のプロフェッショナルになって、このスキルを組織に買ってもらおうという考えになりました。僕の場合はそれがマーケティングで、大学もマーケティングを専攻だったし、就職してからも一貫してマーケティングの仕事に就いてこられた。今回はそのマーケティングスキルを買ってくれる会社がたまたま複数になっただけと捉えています。個人事業者っぽく見えますが、気分的にはそうではない。全部の会社にマーケターとして参画しているという感じです。

大谷:小並感で恐縮なんですが、単純に複数の会社って混じりません?

小島:うーん。AWSにいたときも、製品のラウンチがあったり、イベントがあったり、いくつかのプロジェクトをパラレルで動かしていたんですよね。だから、自分の中ではできると思ってます。

たとえば、Rider's GarageやEventRegst、Moongiftの3つは製品とオーディエンスが違うだけで、やることは似ているのでできます。1社はプロダクトマーケティング、1社はイベント、1社はデジタルマーケティングだったら難しいですけど、この3社はやることがコミュニティマーケティングなので、基本的には同じです。

大谷:小島さん自体はパラレルで行けそうですが、受け入れる側の日本の社会はそうではないですよね。

小島:そうですね。多くの会社が複業を前提としていないので、税制や社会保険などの制度は付いてきてないですね。正と副の副業は整備されますが、正がいっぱいあるというのは想定されていない。だから、いきなり年金周りでつまづきます(笑)。僕みたいな働き方が増えるのであれば、もう少し制度面のバリアが下がった方がいいですよね。

コミュニティマーケティングの盛り上がりは「原点回帰」

大谷:次に小島さんがCMC_Meetupでやっているコミュニティマーケティングについてもう少し深掘りさせていただきたいんですが、なぜここまでコミュニティマーケティングが盛り上がっているのでしょうか?

小島:僕の理解では、きわめてマーケティング的な要素が大きいです。マーケティングって、誰に、何を、どう伝えるかが重要。でも長らく差別化や価格戦略など「自分のお客様との関係」以外の施策が大きかった。正直、「施策がありすぎた」んですよね。でも、どの施策でもあまり市場が拡がらないということで、おそらく原点回帰しているんです。

コミュニティマーケティングって言葉だけが先行して、なにやら新しい施策のように見えますが、基本的にはお客様に向き合うマーケティング手法。「お客様がおっしゃっていることを、ほかのお客様にも気づかせる」「お客様がお客様を呼んでくる」というのが、コミュニティマーケティングの本質だと思っていますが、これは実はビジネスの根源的なもの。その意味で原点に回帰しているんです。

今までこうした手法ってクチコミマーケティングという形でB2Cではできるけど、B2Bは無理だというイメージがありました。でも、JAWS-UGがそういう常識を打ち崩したので、他社も同じようにやってみたいという流れになっているのだと思います。

大谷:確かに最近うちのマイクロサイトの話が響くのも、B2Bの領域です。JAWS-UGみたいなのやりたいと、リードGen重視で今まで見向きもされなかったところから、お声がかかるようになりました。

小島:マーケティングの教科書では、「B2Bの製品選定は合理的なはず」と教えられます。同じ機能だったら、価格が安い方を選ぶはず。価格が同じだったら、機能が高い方を選ぶはずと教えられてきたんです。でも、実際はそうではないです。

大谷:いいねを100回くらい押したいです。

小島:B2Bの製品選定は実にエモーショナルで、合理性の逆。ベンダーの声より、ほかの人の意見が入ってくるんです。だから、ほかのお客様の声を聞いてもらうのは、非常に効くんです。今、コミュニティに関心ある人は、その価値に気がついたんじゃないかと思います。

正直、僕もJAWS-UGだけではコミュニティの成功を自信をもって言えなかったです。「JAWS-UGは突然変異ですよね」と言われたら、グーの根も出ないので。その意味ではサイボウズのkintone Caféの存在は大きいです。JAWS-UGの原則やフォーマットに則りつつ、オリジナルの部分を加えて、うまくドライブできています。CMC_Meetupの初回にサイボウズの伊佐政隆さんに登壇いただいたのも、そういった流れが背景にあります。

大谷:そういえば、小島さん、伊佐さん、大谷のコンビでコミュニティの話もしましたしね(笑)

Cybozu Daysではユーザーコミュニティのセッションを3人で担当した

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