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Beatsの最安価モデル、実力は?

ひっそり発売された1万円ヘッドフォン「Beats EP」レビュー

2017年03月24日 08時00分更新

文● 貝塚/ASCII

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ひっそりと発売されたヘッドフォン

 「Beats EP」というヘッドフォンをご存知だろうか。ビーツ・エレクトロニクスのラインアップの中で最も安価なヘッドフォンである。

 開発元のビーツ・エレクトロニクスは、2014年にアップルに買収されている。このため、2016年秋のiPhone 7の発表会ではワイヤレスヘッドフォン「Beats Solo3 wireless」やワイヤレスイヤフォン「Beats X」が合わせて発表され、いずれも昨年と、今年に入ってからそれぞれ発売された。

価格はおよそ1万円!

シンプルだがさりげなく上質感のあるデザイン

 Beats EPも、同時期に市場に投入されたヘッドフォンと見られる。「見られる」というのは、この製品、なぜかアップルからプレスリリースが出されず、ひっそりとApple Storeや家電量販店などで販売が開始されていたのだ。私の場合は、年始になんとなく家電量販店へ出かけたときに偶然発見した。オーディオを取り扱う編集部に在籍していると、ほとんどの製品は発売前に存在を知っていることが多いため、量販店ではじめて存在を知ることがかえって新鮮に思えた。

 この製品の最も大きな特徴は価格だろう。実売価格で2万5000円からのヘッドフォンを中心にラインアップする同社の製品としては安価な、税抜き9800円。はじめ値札を見間違えたのかと思ったが、よく見てみると、ラインアップの積極的なワイヤレス化を進める同社の新製品なのに、平べったいケーブルが伸びていて、造りもほかの製品より比較的簡素だったため、値札が間違いではないとわかった。プレスリリースが出されなかった理由も、このあたりにあるのではないか。

優れたデザイン性は健在

 デザインは、昨年生産が終了したDJ向けモデル「Beats Mixr」によく似ている。ハウジングが、だ円形でなく円系であり、ヘッドバンドから伸びる金属のハンガーで固定されるデザインだ。ただしBeats Mixrの場合は、金属パーツに鋳造の厚みのあるものを使用していたのに対し、Beats EPでは、薄い金属板をプレスして曲げたパーツが使用されている。

 写真の「ブラック」モデルは「b」ロゴを除き筐体のすべてが黒いが、カラーバリエーションの「レッド」「ブルー」「ホワイト」はシルバーのパーツを採用し、よりポップな印象に仕上げている。

 「Beats Mixr」は昨年生産を終了したヘッドフォン。回転できるハウジングや、太めのカールコードなど、DJプレイに適した仕様をそなえていた。

 続いて外観の話になるが、実売1万円前後のヘッドフォンとして見ると、金属パーツの蒸着塗装の綺麗さや、樹脂パーツの成形の丁寧さが際立つ。

イヤーパッドは合成皮革。ふかふかとしていて、側圧はほどよい

金属パーツの仕上げが価格に対してかなり丁寧だと思う

 樹脂パーツ、金属パーツともに歪みがなく、また、断面やプラスチックの流し込み口にあたる部分が、表から見えない位置にくるように設計されているため、一見して、非常に洗練された印象を受ける。原価で言えばそれほど高価な素材は使っていなさそうだが、設計や加工で高い質感を演出しているところは、少し前のiPhoneにも通ずる部分がある(最近のiPhoneは高価な金属やガラスを使っているので)。

ワイヤレスじゃないけど
いろいろ便利

4極プラグで、通話や音楽のコントロールができるリモコンマイクを搭載

 ヘッドフォン、イヤフォンのワイヤレス化が進む中、時代遅れになりそうな予感もするワイヤード仕様というのは、賛否がわかれる部分かもしれない。

 ケーブルには絡みにくい平形を採用し、また着信の応答/通話、音楽の再生/停止/頭出し/先送り/巻き戻し/早送りに対応したリモコンをそなえている。このリモコンはiPhoneに付属する「EarPods」と共通なので、EarPodsからの乗り換えでも戸惑うことなく操作できるだろう。

ポーチの質感はベロア超。昔のウォークマンに付属していた巾着に似ている

 キャリングポーチが付属するのも嬉しいポイント。なお上位モデルになるとポーチではなく、ファスナーで開閉する立派なキャリングケースが付属するが、この価格なので多くは望まないことにしよう……。

音はこれまでのBeatsとひと味違う

 最後になったが、音質について手短にまとめたい。ビーツ・エレクトロニクスのヘッドフォンに共通の特徴として、「低域が強く出る」という傾向があるが、その具合は各モデルによって微妙に異なる。たとえば、最上位モデルの「Beats Pro」になると、モニタリング用途での使用を想定してか、ほかのモデルと比べて強調しすぎない低域の表現がされているし、前述の「Beats Mixr」は、側圧が強く、より音圧感のある低域の出方をしていた。

 このBeats EPはというと、硬めで広がりすぎない低域が特徴で、いわば「Beatsのヘッドフォンっぽくない」音作りにも思える。このくらいの低域の量なら「出過ぎている」ということはない。特性は公開されていないものの、Beatsのほかのモデルと比べると、限りなくフラット寄りなチューニングなのではないかと感じる。

 低域の広がりにマスクされない分、中域以上がクリアに響いてくれるのもポイント。特にボーカル、スネアドラムの芯になる1000〜3500Hzあたりの帯域が前に出てくるため、ポップスの再生が楽しい。これまでのBeatsのヘッドフォンに見られたような「特徴的な低域」を期待すると少々肩すかしを喰らうかもしれないが、品よくまとめたオールマイティーな音作りである。

 総合して、実売1万円前後で外観、音質ともに高いレベルのヘッドフォンだと感じた。付属ヘッドフォンからのステップアップだけでなく、軽くて気軽に使える外出用ヘッドフォンとしてもオススメできる。

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