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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第397回

発売直前に明かされたRyzenの詳細

2017年03月06日 11時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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消費電力と価格がインテルより優れる
Ryzen 7の性能評価

 さて、製品に関してはこの程度だが、AMDによるRyzen 7の性能評価の結果があるので、これを最後に紹介したい。下の画像はPOV-Rayを利用したレンダリングの結果で、単に性能だけでなく性能/消費電力比の比較も同時に示し、Ryzen 7の優位性をアピールしている。

レンダリング性能。POV-RayはフリーのCGレンダリングソフト。ベンチマークモードも内蔵されており、Single CPUとAll CPUでの比較ができるあたりはCineBenchに近い。実際結果もCineBench R15と良く似た傾向を示す

 下の画像はビデオのエンコーディングで、こちらはHandbrakeを利用しての結果である。こちらも、エンコード速度はより高速で、かつ性能/消費電力比が高いことをアピールしている。この2つは当然そうなるであろう、という結果である。

ビデオエンコーディング性能。HandBrakeはオープンソースのトランスコーダーである。ただどんなソースをどんなフォーマットにトランスコードしたかは不明

 エンコードやCGレンダリング、あとAMDのデモでは示されていないがデジタルカメラのRAWデータ現像などに、Ryzen 7の8コア16スレッドは間違いなく強力な武器である。

 AMDはさらにSPECviewperf 12の結果を示しているが、よく見るとスコアそのものではRyzen 7は競合製品に負けているのである。というのはSPECviewperfは本来、OpenGLを使った業務向けアプリケーションの性能ベンチなのであって、性能はCPUというよりはGPUで決まることになる。

SPECviewperf 12の結果。アプリケーションの中には、若干ではあるがCPU性能が聞いてくる場合もある。とはいえ大きなものではない

 CPUの役割は、なるべくGPUの性能をフルに引き出すようにすることというのは大げさにしても嘘ではない。問題はOpenGLのディスプレードライバーはマルチスレッド化されていないことで、こうなるとむしろシングルスレッド性能が重要になってくる。こうしたケースで、Ryzen 7は必ずしも性能的に有利とは言えない。

 性能/消費電力比にしても、それでもRyzen 7 1800XはCore i7-6900Kよりも良いスコアになっているが、Ryzen 7 1800とCore i7-7700Kでは同等というか、微妙にCore i7-7700Kの方がマシかもしれない。そのあたりもあってか、AMDは価格性能比をポイントに打ち出してきているのがわかる。

価格性能比。嘘か本当かはわからないが、インテルも価格改定の噂がある。ただあくまで噂レベルであるが

 では実際にゲームではどうか? という結果が下の画像3枚である。テストはいずれも同じで、CPUおよび解像度が異なるだけである。

Ryzen 7 1800X vs Core i7-6900K。これのみ解像度が4Kである

Ryzen 7 1700X vs Core i7-6800K。ここから解像度は1440p

Ryzen 7 1700 vs Core i7-77000K。こちらも解像度は1440p

 3つの結果を見ていただくとわかるが、決定的にRyzen 7が有利、というものはない。いずれのグラフも左が99th % FPS(全体のフレームレートの99%が含まれる最大の値)、右が平均フレームレート(単なる相加平均)となっている。

 実情としては左の99th % FPSの方が体感性能に近い値ではあると思うが、たとえば最初のグラフではGTA V、Alien:Isolation、Battlefield 4、DoomがRyzen 7有利、Civilization VIはCore i7有利という結果になっている。

 が、Ryzen 7有利といってもその差は4~5fps(Battlefieldだけは10fpsの差があるが)程度でしかなく、確かに高速ではあろうが大きな差とは言いにくい。逆にCivilizationでは14fpsの差だったりするため、トータルとしてどうかというと「大きく変わらない」ということになる。

 こうした話は他の2つのグラフでも見て取れることで、実のところゲームでRyzen 7がCore i7をしのぐという結果には正直なところなっていない。

 これには理由が2つある。1つは純粋にRyzen 7のシングルスレッド性能が、必ずしもCore i7と同等レベルまで達していないことだ。筆者の測定では、かなり近いところまではいっているが、微妙に追いついていないというあたりだ。

 もっともCore Mから数えると11世代もの改良を積み重ねてきたKabyLakeコアのCore i7-7700Kと同等のIPCを、Zenコア初代のRyzen 7が簡単にしのげると思うほうがどうかしているという気もする。

 もう1つは、昨今のゲームはもはやCPUよりもGPUの方がボトルネックになりつつあるということだ。

 最初のグラフでは両方のシステムにNVIDIAのTITAN X 12GBを、次のグラフではGeForce GTX 1080を、3つ目のグラフではGeForce GTX 1070をそれぞれ利用して比較しているが、これらを使ってもまだGPUがボトルネックというおそろしい状況であり、CPUが性能に介在できる余地が少ないという状況がある。

 もちろん、ここにAMD-FXやA10-7800クラスのCPUを持ち込んだら間違いなく性能が下がるので、その意味では「GPUボトルネックになる程度にRyzenは高速」とは間違いなく言えるのだが。

 正直言えば、ゲーム用途としてはRyzen 7はいずれもオーバースペックであって、4コア/8スレッドでも現実問題として十分ではある。ただインテルの4コア/8スレッド製品と同程度の価格帯で8コア/16スレッド製品を投入してきたことが、インテルにとっては大いなる脅威であることは間違いないだろう。

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