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すでに8Kは実用段階に突入、「NHK番組技術展」レポート

2017年03月04日 12時00分更新

文● 折原一也 編集●南田ゴウ

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 2月26日から28日、NHKの放送現場発の技術を展示する「第46回NHK番組技術展」が開催された。リオ五輪でも活躍した8Kスーパーハイビジョンから、日本全国の放送局の現場から生まれた未来のNHKの放送で使われる最新技術までピックアップして紹介する。

東京・渋谷のNHKで開催された「第46回NHK番組技術展」

17型8K液晶モニターも登場
小型化が進む8K制作機器

 NHKの次世代放送技術の象徴と言えば、解像度7680×4320ピクセルの8K映像を中心とした「スーパーハイビジョン」。パブリックビューイングなどの用途ではリオ五輪でもすでに実戦投入されているこの技術の最大のテーマは“小型化”だ。

 8K関連の最新機器となるのが、世界最小17.3型でリアル8K液晶解像度、500ppi以上のモニター。ジャパンディスプレイ製の低温ポリシリコン(LTPS)技術を使ったもので、NHKが8K制作を行なう制作現場に導入されている。4Kの4倍、フルHDの16倍をリアルに表示する表示性能は、まさしく世界最高峰の高画質だ。

 8K撮影用カメラは、すでに8K撮影で用いられている日立国際電気の約1.5kgのカメラが出展された。中継・ロケ用で専用SSDにより約60分のロケが可能となる。会場にはRED社のHELIUM 8Kセンサー搭載カメラ(ロケ用)も用意され、南極でのロケなどで運用されているとのこと。

17.5型で8K映像を表示するリアル8Kモニター。ラックへのマウントも可能だ。

すでにスーパーハイビジョン撮影で活用されている、日立国際電気の8Kカメラ

ロケ用にはRED社のカメラも運用開始

リオ五輪でも活躍した
「8Kスーパーハイビジョン中継車」

 8K関連では「8Kスーパーハイビジョン中継車」が特別出展。NHKが「SHC-1」「SHC-2」と2台所有する中継車で、リオ五輪では2台ともブラジルに送られ運用されたものだ。

 車内には55型の8Kモニターを配備し、最大カメラ10台、収録機4台、ライブスロー4台を用意。五輪だけでなく大相撲、紅白歌合戦にも投入済み。未来の技術と思われがちのスーパーハイビジョンだが、NHK局内ではすでに運用されている。

8Kスーパーハイビジョン中継車(画像はSHC-2)

中継車内で8K映像の確認も可能

過去の番組を64分割で表示する
「8K TIME MACHINE」

 8Kによる新しい体験として展示されていたのが「8K TIME MACHINE」。8Kのタッチパネルで自分の生まれた年代、見たい年代を選ぶと、その時代NHKの番組が64分割画面で流れるというもの。NHKは過去の番組をライブラリ化しているが、番組名を覚えていないと見つけるのが難しい。

 8K TIME MACHINEなら、その時代の番組が64分割映像として同時に再生されるので、その中から見ていた番組を思い出しやすい。もちろん、選んだ番組は視聴できる。

 8K TIME MACHINEのハードウェアはPCベースで、現時点では容量1TBのSSDにNHKのおよそ70年ぶん1300本の番組(白黒~8Kまで)を収録。ライブラリはネットワーク上に置くことも考えられる。

 すでに2017年1月より試作機がスタジパークで常設展示されており、春から新番組のスタジオ内演出でも利用が決まっているとのこと。

8Kモニターとタッチパネルによる「8K TIME MACHINE」

NHKの持つ過去の番組を64分割画面で同時再生

動作するハードウェアはPCベース

映像だけで速度情報を抽出する
「データライブ解析」

 番組制作関連でユニークな出展が、仙台放送局による「データライブ解析システム」。例えば、陸上競技の中継の映像なら選手の走る速度、加速度、歩幅などの情報をライブ解析してデータを取得、ライブ中継に役立てようというものだ。

 震災時の津波で、自衛隊ヘリから撮影された津波の映像から速度を算出できないかということが開発のきっかけで、最初に解析する対象を指定すればカメラのパンや撮影位置の移動、ズーム操作が行なわれてもすべて補正してライブで解析する。

 非常に汎用性の高い技術で、陸上競技や動物の動き、飛ぶ鳥の移動速度なども映像から速度測定ができる。今後は東京五輪・パラリンピックでの実用化を目指して検証していくとのこと。

NHK仙台放送局の「データライブ解析」

中継の映像だけで動くものを認識して速度を測定

開発のきっかけは津波映像からの速度予測にあった

ゴルフのボール軌跡を正確に表示する
「飛翔体軌跡表示システム」

 NHKのスポーツ中継で用いられる、ボールの軌跡表示をカンタンに行なう仕組みとして研究が進められているのが「飛翔体軌跡表示システム」。

 フルHDカメラの画像認識用カメラによる映像解析と、新開発の飛翔体弾道計算式を組み合わせることで、ゴルフショットを即座に速度を算出して軌跡表示も可能とするもの。着弾点も含めて正確に予測するために、レーザーセンサー併用による高精度計測も可能。俯瞰図を表示することも可能になる。

 ゴルフ向けに開発されているが、陸上のやり投げのような決まった位置からモノを飛ばす競技であれば、カメラ撮影地点のフルHDカメラのみでも使えるため導入しやすく、番組制作への活用が予定される。

画像認識による「飛翔体軌跡表示システム」

ショットからリアルタイムで軌跡を表示

撮影用カメラと同じ位置に画像認識カメラを置くだけで導入可能

GoogleMapを利用した「緊急報道サポートナビ」

 報道の現場を支える技術として札幌放送局が開発してすでに運用中の「緊急報道サポートナビ」。これは緊急報道時に出動するCSK(衛星中継車)をすばやく確実に現場に到達させ、中継することまでをカバーするサポートシステムだ。

 放送局内からアクセスできるシステムでGoogleマップ上にリアルタイムの車両位置を表示でき、交通状況や通行止めなどの情報を踏まえた上で、もっとも早く現場に到達できる車両を確認できる。

 さらに、中継地の映像伝送で必要になる中継局間にビルがないかといった必要情報も、GoogleEarthと連携して表示。過去の伝送実績も登録できる。緊急報道時にすばやく現場に到達して中継するための必要な情報が、いちどに確認できるシステムだ。

NHK札幌放送局で運用中の「緊急報道サポートナビ」

GoogleMap上に中継車の位置をリアルタイムで表示

伝送時の妨げになるビルの有無もGoogleEarthと連動して確認できる


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