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再生可能エネルギーのバーチャル発電所で送電網を効率化

2017年02月24日 08時51分更新

文●Jamie Condliffe

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再生可能エネルギーの余った発電量や各家庭のバッテリーなど、小さな設備をソフトウェアで統合して「バーチャル発電所」を作る実験が、オーストラリアの2地域で始まる。

Rooftop solar panels, such as these in Melbourne, currently account for around 16 percent of renewable electricity generation in Australia.
オーストラリアでは現在、メルボルンにあるような屋上太陽光パネルが、再生可能電力発電の約16%を占める

住宅の太陽光パネルを活用し、不安定な電力の供給と需要を均一化するため、オーストラリアの新たな再生可能市場では住宅所有者の太陽エネルギーを管理するちょっとした支配人が登場している。

ガーディアン紙によると、オーストラリア政府が支援する「分散型エネルギー交換 (Distributed Energy Exchange)」という制度により、住宅所有者や企業は太陽光の発電能力や貯蔵能力を効率的に貸し出せるようになった。たとえば、スマートデバイスを使えば、送電網のどこかで余剰電力が使えるようになった時、別の建物の装置が予備電池の容量を提供できるのだ。

個々の建物のシステムは単独では非力でも全体として見れば非常に大きな規模がある。たとえば、テスラ・パワーウォールのような家庭向け電池は5kWの電力を供給でき、仮に5000世帯の電池が同時に稼働すれば、25MWの電力を供給できる。これは小さな値ではない。

この制度によって、オーストラリアの送電網には、新たな発電施設を建設せずに、需要と供給がより一致するようになるメリットがある。電力の使用が緩やかな時間帯にエネルギーを蓄えれば、各装置をつなげたネットワークは電力需要の急増により上手く対処できる。また、太陽発電の断続性を軽減させるのにも同じ考えが役立つ。

オーストラリアの取り組みの基本的なコンセプトには「バーチャル発電所」 (ソフトウェアと蓄電池により、個々の小規模な太陽パネルを組み合わせ、ひとつの大規模な資源として扱う)がある。バーチャル発電所の試験はドイツ米国で多数あるが、これまでのところ、バーチャル発電所のテクノロジーが広い範囲に適用されたことはない。

オーストラリアの市場での実験も、最初は狭い範囲でされるだろう。今回の試験はふたつの地域で実施され、それぞれの地域には約5000世帯が住んでいる。

(関連記事:The Guardian, “Virtual Power Plants Get Around Solar Power’s Intermittency Problem,” “Real Electricity Flows from Virtual Power Plants”)


転載元(MIT Technology Review)の記事へ

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