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西側諸国の規制厳格化で、次世代原子炉は中国が大幅リード

2017年02月06日 11時53分更新

文●Jamie Condliffe

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原子力産業の発展のため、原発の安全基準を最小限まで撤廃しよう、とはいかないのが民主主義国の悩みであり強みだ。手続きによって権力の暴走を食い止めるのが民主主義の根幹であり、科学のために安全を犠牲にはできない。

The Tricastin Nuclear Power Plant in France uses generation II pressurized water reactors.
第2世代の加圧水型炉を採用したフランスのトリカスタン原子力発電所

従来よりも安全で単純な原子炉の実現は、西洋諸国では困難な状況にある。

ブルームバーグによると、原子力産業は現在、第三世代プラス型(Generation III+)の新型加圧水型ウラン核分裂炉を設置する発電所の建設がうまくいっていない。1996年から使われている第三世代の原子炉の改良版である「プラス」型原子炉には安全機能が追加されており、作業員の操作が簡略化される。

しかし問題もある。第三世代プラス型の原子炉の建設は、実際かなり複雑だとわかったのだ。フランス(三菱重工がアレバに出資して、プラス型の原子炉開発に関わっている)やフィンランド、米国のプロジェクトは計画から遅延しており、予算超過の状態だ。また、英国のヒンクリーポイント等、新規に承認されたプロジェクトには、驚くほど高額な予算が割り当てられている。

何が原因で? 米国原子力規制員会のレイク・バレット元職員はブルームバークの取材に対して「予算超過は、社会が猛烈に原子力のリスクを避けているのが原因です。極度に厳しい規制のせいで建設は複雑になり、原子力業界のノウハウでは対処できなくなったのです」と述べた。

一方、世界最大の原子力発電産業国を目指す中国は順調だ。以前の記事に取り上げたように、中国は従来型原子炉の建設だけでなく、従来になかった次世代原子炉(トリウム溶融塩原子炉や超高温原子炉、ナトリウム冷却高速炉等)への投資でも活気付いている。

昨年の夏、米国エネルギー省は高度な原子炉の研究開発予算として8200万ドルを割り当てると発表した。潤沢とはいえない予算額だが、原子炉の研究開発が真剣に考えられている証にはなる。ただし、新大統領がホワイトハウス入りし、米国エネルギー省の研究予算が大幅に削減される可能性が高まっているため、米国では新原子炉の将来展望はまったく立たない

(関連記事:Bloomberg, “イギリス政府 巨大原発の新設を許可,” “安全で安価な原子力発電 米国が中国に「無償提供」,” “U.S. Government Wants to Jump-Start Next-Generation Nuclear Reactors”)


転載元(MIT Technology Review)の記事へ

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