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スタートアップのコーポレートサイトまとめ2016-2017 第4回

サイト作りに経営者はどう関わるべきか?

弁護士ドットコム元榮太一郎代表が8期連続赤字でも貫いたビジョンとは

2017年02月15日 09時00分更新

文● 三浦優子 編集●北島幹雄/ASCII STARTUP

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新興企業は、どのようにウェブ上でのサイト構築を進めればいいのか? その答えを見つけ出すために、今回は2005年に設立され、株式上場も果たしている弁護士ドットコムの創業者、代表取締役社長兼CEOである元榮太一郎氏にお話を伺いました。同社はどのようにしてサイト作りに欠かせないスタッフを集め、多くの人が利用するサイトを構築したのでしょうか。実践した中で得たノウハウ、ポイントはどこにあるのかを、デジタルステージのディレクター洪泰和氏との対談の中で明らかにします。

弁護士ドットコム 代表取締役 兼 CEO 元榮太一郎氏(写真右)、デジタルステージ ディレクター 洪泰和氏(写真左)

よい“旗”を高く掲げると共鳴する人が集まってくる

洪氏(以下、敬称略):企業ホームページをどう戦略的に活用していけばいいのか、多くの企業が悩んでいます。そこでサイトを戦略的に活用した先輩企業に話を聞いてみようというのが今回の企画です。まず、サイト自体の作り方のお話を伺う前に、そもそも弁護士ドットコムを起業したきっかけからお聞かせください。

元榮氏(以下、敬称略):引っ越し業者の比較サイトを見たのがきっかけでした。弁護士選びにも、こういう比較サイトがあったら便利だろうと思ったのですが、当時は世界のどこにもそういうサービスがない。それなら自分で作ってみようと思ったのです。

 最初はインターネットの知識もほとんどない、ネットビジネスの素人でした。起業することを決意したのも自分1人でしたし、本当にゼロからのスタートでした。

洪:弁護士選びの比較サイトとなると、当然ウェブサイト作りは必須です。実際どのように構築されていったのでしょうか?

元榮:ありがたいことに、まず「こういうサイトを作りたい」と周囲に話したところ、すぐに「一緒にやりたい」と言ってくれる弁護士の後輩があらわれました。しかも、彼の友人にヤフーで『Yahoo!オークション』を開発した経験を持っていた人がいて、サイトのコンセプトをプレゼンしたら、「是非、協力したい」と言ってくれました。

 ほかにもイメージロゴなどもデザイナーの友人にお願いして、5万円で作って貰いました。周囲の助けが大きな力になりました。

洪:賛同者を作ることはベンチャー企業には、大きな力になりますね。元榮さんはどのように仲間を増やしていったのでしょう?

元榮:人脈を意識したことはありません。ただ、小学校・中学校・高校・大学と友達は少なくない方でしたし、それまで勤務していた弁護士事務所を辞めて起業すると決めた後は、付き合いのあるあちこちに顔を出して、『弁護士ドットコム』について話をするように努めました。弁護士事務所に勤務していたときは本当に忙しかったのですが、辞めた途端に時間ができたという事情も大きかったですけど(笑)。

 そうやってあちこちで話しをすると、私が掲げている“旗”に賛同してくれる人が現れたのです。これはやろうとしていたことのコンセプトの良さもあったのでしょうし、世界で初めてのサービスという点を評価してくれてのことでもあったのでしょう。なにより、「弁護士に依頼するのは敷居が高いが、これを変えたい」という思いに共鳴してくれる人が多かったように思います。掲げている旗が良いものであれば、それを高く掲げると賛同してくれる仲間が増える。私が掲げている旗が良いものに見えた――だからこそ、賛同者が次々に出てきたのだと思います。

弁護士ドットコム 代表取締役 兼 CEO 元榮太一郎氏                慶應義塾大学法学部法律学科を卒業後、1999年に司法試験合格。2001年にアンダーソン・毛利・友常法律事務所へ入所。2005年に独立し、弁護士ドットコム株式会社および法律事務所オーセンスを設立。2014年に弁護士としては初となる東京証券取引所マザーズ市場への上場を果たす。2016年、参議院議員通常選挙に当選(千葉県選挙区)

「どうしてもおじいちゃん、おばあちゃんのイラストを」

洪:最初のサイト作りの実作業としては、どのように進めていったのですか?

元榮:僕がしゃべったものを、絵コンテのようにして、サイト作りに関わるメンバー全員で共有しながらサイトを作っていったと思います。

 今でも覚えているのは、最初にできあがったサイトデザインには、おじいちゃん、おばあちゃんのイラストが入っていなかった。そこで、「どうしてもおじいちゃん、おばあちゃんのイラストを入れてほしい」とリクエストしました。

当時の弁護士ドットコム

洪:確かにイラストに幅広い年齢層の人が描かれていると、そのサイトのターゲットが明確に伝わりますね。

元榮:法律で困っている人は年代を問いません。しかし、弁護士という仕事は現在に至るまで、遠い、冷たい存在と思われている方が多い。そのイメージを払拭したいという願いも、起業の狙いの1つでした。ですから、すべての年代の人に関係があるサービスだということを伝えたいと思ったので、そこはこだわったのです。

 サイトの色も、暖かいイメージをもってもらえるようにオレンジ色をベースにしました。

洪:我々も、まずはサービスの対象を具体的にしたうえで、コンセプトに基づいたビジュアル作りを開発の初期段階で行ないます。ビジュアル化するメリットは、そこに関わるすべての人たちが同じ認識を共有できることです。個人による認識のブレを少なくできれば、軸をぶらさずに製品を作りあげられます。

 また、経営者自身が自分の会社のコンセプトにワクワクしていると周囲も感化されていきますよね。モノ作りは、そういう熱を持っていることで周囲に広まって、協力者が増えていく側面がありますが、まさに弁護士ドットコムのサイト作りは、そういう熱があって進んでいったのですね。

デジタルステージ ディレクター 洪泰和氏                     ウェブデザイナーを経て、デジタルステージのウェブ全般のディレクションを担当。一方「BiNDシリーズ」の開発にプロジェクトマネージャーとして携わる

元榮:そしてその熱に助けられたのが、創業後です。起業こそスムーズにいったものの、8期連続赤字という時期があり、給料はほとんど上がらなかったのに、辞めるメンバーがほとんどいませんでした。

洪:8期連続赤字? それは厳しい時期ですね。そうなると、サイトの作り換え、デザイン変更も必要になったと思いますが、どのように変えていったのでしょう?

元榮:サイト利用者を増やすために、「これは安心できるサービスだ」と思ってもらえるよう、UI、UXよりも、相談件数を表示するなど、数字から安心感をもってもらえるようにつとめました。

 また、外部のニュースに記事として掲載してもらうことで、サイトを訪れる人が増えることは創業当時から経験していました。特に大きな力となったのがYahoo!のトップページにニュース記事が掲載されることです。偶然、ニュースとして取り上げられるのではなく、こちらから仕掛けて、記事化してもらうことはできないだろうか? そう考えて始めたのが『弁護士ドットコムニュース』です。

弁護士ドットコムニュース

元榮:このサービスを開始する前、ある医療系ニュースがYahoo!に取り上げられているのを偶然目にしました。専門サイトの記事だったので、私はそのサイトを存じあげなかったのですが、医療の専門家からの見解が入っていることで大変参考になる記事でした。その記事と同じように、「1つのニュースに対し、弁護士の見解を入れた記事を書いて、掲載してはどうだろう?」と思ったのです。

 そこでまずは、社内で文章の心得がありそうなスタッフに記事を書かせました。2012年、猫ひろしさんが国籍をカンボジアに移しましたが、ロンドンオリンピックには出場できないことが決まり、「それでは国籍を日本に戻すことができるのか?」という疑問に対し、弁護士に聞いてみるという記事でした。掲載後、狙い通り、あちこちで取り上げられ話題になりました。

洪:ニュース記事には弁護士さんの協力が不可欠になりますが、コストに対しては無料で協力してもらっているのですか?

元榮:はい、弁護士さんは案外目立つ機会が少ないのです(笑)。有名ニュースサイトにコメントが紹介されるということで、無料で答えてもいいと賛同してくれる弁護士仲間が複数いました。だからこそ、『弁護士ドットコムニュース』を始められました。

 まずは、サイトに来る人を増やしたかった。そこで、当初は月に10本の記事をあげることを目標にしました。すると、2012年4月にスタートした中、7月には月間100万人を達成し、その後1年ちょっとで300万人に到達しました。ニュースの効果は絶大で、狙っていたわけではなかったのですが、副次的にSEOでも絶大な効果を生み出しました。当社のサイトだけでなく、TwitterのようなSNSでバズワードのように盛り上がり、それが結果的にSEO効果となったのです。

洪:オウンドメディアを作ると、SNSで盛り上がるのを嫌がるケースも多いのですが、じつは最終的に自社サイトに効果が出てくるケースはありますね。自社サイト以外での盛り上がりだけを狙わなかったことは正解でしたね。

元榮:思わぬ派生効果でしたが(笑)。ニュースでサイトに来る人が増えたことで、手応えを感じまして、2013年からはニコニコニュースの編集長だった亀松太郎さんに参画してもらい、専任担当者を置いて半年で月間100本のニュースを掲載するようになりました。そこから弁護士業界でもかなり高い認知率になりました。

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