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JAWS-UG中部・北陸勉強会レポート第14回

JAWS Festa 東海道でアトラシアン長澤さんかく語れり

クラウドはアジャイル開発本来の力を引き出し、エンジニアの在り方も変える

2017年02月01日 09時30分更新

文● 重森大

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アジャイル開発という考え方は取り立てて新しいものではない。しかし浸透しているかといえば、疑問符がつく。エンジニアとしては新しい機能にわくわくするものの、クライアント企業がついてこなければビジネスにはならない。開発現場では古い手法を踏襲せざるを得ないことも多いのではないだろうか。そこで改めて、クラウドを活用するうえでアジャイル開発が有用であることを述べたのが、アトラシアン 長澤智治さんのセッションだった。

アトラシアンの長澤 智治さん

鬼も読者も重森のことを笑えばいいさ、それでも伝えたいことがある

 「来年のことを言うと鬼が笑う」という言葉があるが、進化の早いITの世界で去年のことを言うと誰が笑うのだろう。そんなことを考えつつ、2017年1月に書いている本稿で取り上げるのは、2016年10月に開催されたJAWS Festa 東海道のセッションレポートだ。速報を掲出したままになっており、その後はみんなの意識がre:Inventに向いてしまったのですっかり後回しになってしまった。いや、言い訳はよそう。サボってた。ごめん。

 でもしっかり掘り下げておきたいセッションがいくつもあったので、「今さらかよ」のそしりを受けることを覚悟して3ヵ月遅れのレポートをお届けする次第だ。アトラシアンの長澤 智治さんの「いまさらきけない、なんでアジャイル? なんでクラウド?」から、スタートしよう。

ITの使われ方の変化とクラウドの登場により、アジャイル開発に再注目

 長澤さんはセッション冒頭で、ビジネスにおけるITの役割が変わってきたと語った。かつてITは、「あったら便利なもの」だった。オフィスにPCが置かれ始めた1990年代のことだ。そんなITだが2000年代には「ビジネスにおいて有効な手段」となり、2010年代になり「ビジネスに不可欠なもの」へと進化。それにともなって、使われ方も、使い方を決める人も変わってきた。

「1990年代には限定的なことしかできなかったため、IT導入の目的も明確でした。2000年代には効率化などビジネスの変化に役立つものとなり、2010年代には新たなビジネスを創出するための道具になりました。意志決定者も現場に近いIT部門から経営陣へと変わり、今ではマーケットの要求がIT導入を左右します」(長澤さん)

ビジネスにおけるITの役割が変化してきた

 マーケットの要求に、他の企業より早く応えることが重要になっている現代、クラウドが大きな力になると長澤さん。かつては何段階ものB2Bを経由していたシステム開発だが、クラウドを使うことで直接タッチできるものになり、開発スピードが向上、競争は激化している。そこで改めて注目されているのが、アジャイル開発なのだという。

 そもそもアジャイル開発とは、最終的なゴールを明確に決めて要件定義を固めた上で開発に取りかかるのはなく、要求の高い機能から作って段階的にリリースし、ユーザーからのフィードバックを受けて方向修正しつつ開発とリリースを繰り返していく手法のこと。アジャイルソフトウェア開発宣言が発表されたのが2001年、その後洗練された手法を取り入れたモダンアジャイルという考え方も生まれているという。

クラウドがボトルネックを破壊し、アジャイル開発の真の力が解き放たれた

 アジャイル開発には、機能単位で作って次々にリリースすることで、ユーザーにスピーディにサービスを提供できるという強みがある。しかしオンプレミスでは、サーバやネットワーク機器の調達にかかる時間がボトルネックとなっていた。

「2週間単位で機能をどんどん作っても、サーバーがなければデプロイできません。それに開発環境と本番環境が違いすぎて、パフォーマンスの実感値をつかみ憎いのも問題でした。どの程度の性能の機器を準備すればいいかわからない、いざ稼動させてみたらパフォーマンスが足りないなどの課題があったのです」(長澤さん)

クラウドが調達のボトルネックを破壊

 クラウドの普及は、こうした調達の問題を破壊した。パフォーマンスはリリース後にでも調整できるようになり、エンジニアは調達待ちの時間という言い訳を失った。代わりにエンジニアが得たものといえば、インターネット経由でアクセスする本番環境とほぼ同じ開発環境、そしてスピーディなフィードバックである。クラウドなら本番環境も開発環境もインターネットからアクセス可能だし、新機能を実装した限定的なサーバを一時的に用意することもできる。こうしてアーリーアダプタや特定の顧客に限定公開すれば、新機能について全体リリース前にフィードバックを得ることもできるようになった。

「クラウドが破壊したのは、調達の問題だけではありません。品質の価値観も破壊しました。継続的デプロイで、機能や品質が足りなければバージョンアップしたり修正したりできるようになったのです」(長澤さん)

クラウドとアジャイル開発が組み合わさることで品質の価値観も破壊

 アジャイル開発を取り入れていればオンプレミスでも近い効果は得られる。しかしシステム増強が必要な改善や、セキュリティ強化のためのシステム構成変更などは、オンプレミスではかなり無理がある。クラウドならより高いパフォーマンスを得るためにサーバをスケールしたり、システム構成を変更することもオンプレミスに比べて容易だ。

現代のエンジニアは歩兵ではなく武将でなければならない

 オンプレミス+ウォーターフォール型開発から、クラウド+アジャイル開発へ。この変化についていくためには、エンジニア側の意識変革も必要だ。アジャイル開発にはゴールがなく、顧客がいまどのステージにあり、何を求めているかによって最適なビジネスアーキテクチャを創出しなければならない。

「かつてのエンジニアは、決定した要件に従ってものをつくるだけの歩兵でした。いまはクラウドだけではなく、スマートデバイスやIoTなど、ビジネスを変えるテクノロジーが次から次に出てきます。ユーザーの要求に対して最適なテクノロジーを選択、活用しなければならない現代のエンジニアには、武将でなければなりません」(長澤さん)

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