2000円台Bluetoothイヤフォンが迷わず買うべきな良いレベルだった

文●四本淑三

2017年01月28日 12時00分

iPhoneに代表されるように、イヤフォン端子のないスマートフォンは徐々に増えつつあります。microUSBやLightningのアダプターを使えば従来のイヤフォンも使えますが、利便性から言ってイヤフォンのBluetooth化は進んでいくでしょう。

そこで、2016年の秋からe☆イヤホンさんが、通販でよく知られているTaoTronics(タオトロニクス)製品の実店舗販売を始めました。なかでも評判なのが「TT-BH07」。価格は2699円。現在市販されている最低価格帯のBluetoothイヤフォンです。

一度試してみたいとは思っていたのですが、Amazonを見るとTT-BH07と似たような仕様、似たような外観のイヤフォンが複数のブランドで売られています。どれから手を付けるべきか悩ましいところでしたが、国内の販売店で手にとれる製品ということで、TT-BH07を試してみることにしました。

なおメーカーのTaoTronicsはBlutoothイヤフォンやスピーカーのほか、スマートフォンの車載ホルダーや自撮り棒を販売する、アメリカに本拠を置くグローバル企業で、TT-BH07の生産国は中国です。

高音質かつ低遅延のaptX対応スポーツモデル

TT-BH07はスポーツタイプのイヤフォンということで、脱落やズレを防ぐスタビライザーが付いています。左右のハウジングをつなぐケーブルはフラットタイプで、ケーブル長の調整機構はありません。再生機との接続はBluetooth 4.1。対応コーデックにはaptXが含まれていることから、内蔵チップには比較的新しいものが使われているはずです。

パッケージはコーティング加工などしていない素の厚紙。2000円台のイヤフォンというとブリスターパックが一般的ですが、質素ながらセンスよくまとめられています。

付属品はキャリングポーチ、充電用USBケーブル。そして交換用のイヤーピースとスタビライザー(ともにS/M/Lの3サイズで、いずれもMサイズは本体装着済)。マニュアルには日本語での記載もあります。

ハウジングの背面はヘアライン加工された金属で、これがアクセントとなって不必要に安っぽくは見えません。この背面は磁石になっていて、左右のハウジングが吸着するのがおもしろいところ。これはイヤフォンを両耳から外して首にかけている際に、ハウジングをくっつけて首輪のようにしておけば落ちるのを防げるだろうというアイデア。確かにこのタイプのイヤフォンは、その状況でよく落としてしまうので、なかなか気が利いています。

コントローラーとヘッドセット用マイクはケーブルの右ハウジング側にあり、充電用のmicroUSBポートにはフタが付いています。防水性能は特にスペックには示されていませんが、スポーツモデルとしての防汗対策はしているということでしょう。1時間のチャージで再生・通話の稼働時間は5時間、待機時間は175時間。もう一声ほしいところですが、ちょっとした利用なら十分でしょう。

ボリュームスイッチはスマートフォン側の音量をリモート制御するタイプ。動作状態は青と赤のLEDでモニターできます。ちなみにスペックでうたわれている「CVCノイズキャンセル6.0」は、通話のノイズを低減するもので、音楽再生時に環境音を相殺するノイズキャンセルシステムではありません。勘違いしがちなので、お間違えなきよう。

日用品としてのBluetoothイヤフォンの新基準

スタビライザーは取り外し可能。イヤーチップはコンプライの200シリーズと互換性あり

さて、その性能ですが、2000円台で買えるBluetoothイヤフォンは少ないので、クオリティーが高ければ同価格帯のスタンダードということになるはずです。

まずBluetoothで問題になる遅延は感じられません。YouTubeでライブ演奏の動画を見ても、ギタリストのピッキングやドラマーのスティックの動きと音は一致していて、ずれるようなことはない。動画視聴がストレスになるような、遅延のひどい製品がまだまだ多い中で、この点だけでも使う価値があります。

そしてBluetoothであることに起因する、顕著な音質の劣化も見られません。たとえば高域のモジュレーションのようなもの。パワーはそれほどないようで、音量を上げるとかなり早めに歪み始めますが、ごく普通の音量ならS/Nも悪くない。

イヤフォンとしての素性は、どう表現すべきか、ちょっと難しいところがあります。まずBluetoothではない2000円台の有線イヤフォンと較べてどうかというと、これは分が悪い。なにしろこのクラスには1MOREのPiston Classicが存在するので。でも、Piston Classicが存在しなかったとすれば、2000円台のイヤフォンとしては良心的な特性です。

端的に言えば、かなりローエンドに寄った特性ですが、不必要に盛ったことによる飽和は感じられず、中高域とのバランスも損なっていない。はっきり言ってしまうと、日本のメーカーの5000円~6000円のBluetoothイヤフォンより、オーディオ機器としてずっとまとも。スポーツスタイルの密閉カナル型としては、意外や意外、音楽を楽しむには十分な性能です。

それにしても最低価格帯のBluetoothイヤフォンがこのレベルというのは驚きです。イヤフォンは趣味のオーディオ機器である一方、なければ困る日用品でもあります。Bluetoothイヤフォンも以前はあると便利な贅沢品だったはずですが、イヤフォン端子のないスマートフォンが増えてくると、日用品としての価格と性能が求められるはず。

いまどうしてもBluetoothイヤフォンが必要。そういう方は迷わずお求めください。価格以上の価値はあります。

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著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)

 1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ

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