このページの本文へ

ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情第389回

業界に痕跡を残して消えたメーカー サウンドカードでCreativeと競ったMedia Vision

2017年01月09日 11時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

Sound Blasterの発売で
ライバルAd Libを倒産に追い込む

 これでへこたれないSim氏は、C/MSの上にALMSCと同じくOPL2ことヤマハのYN3812チップを搭載し、独自のDSP(いわゆる“Digital Signal Processor”ではなく、PCMの録音/再生機能を持つ“Digital Sound Processor”)チップまで搭載、さらにゲームポートを追加と、機能てんこ盛りにして1989年に投入したのがSound Blasterである。

Sound Blaster。左上の大きなDIPがDSP、その下のシールがはがれかけてるチップがSAA1099、その右にある太めのDIPがOPL2と思われる

 OPL2チップを追加したことでAdLib互換となり、これまでAdLibしかサポートしてこなかったゲームなどでも普通に音が出るようになったうえ、ゲームポートを標準搭載したことでジョイスティックなどのゲームデバイスをそのままつなげることが可能になり(*1)、またDSPの搭載によってゲームにおける効果音などの再生ができるようになった。

 これによりゲーム業界は急速にAdLib互換からSoundBlaster互換にシフトを始める。AdLibも負けじと、OPL3ことYMF262チップを積んだAdLib Gold 1000を1992年にリリースする。

 こちらもゲームポートを搭載するなど、SoundBlasterへの対抗心は明白であったが、AdLib互換(というかOPL2互換)ではあったものの、SoundBlasterとの互換性を欠いたために、結局ほとんど売れることはなく、Ad Lib自身も1992年5月に倒産してしまう。

 Creative TechnologyもAd Libの資産買収に動くが、結局独Binnenalster GmbHがAd Libの全資産を買収。同社はAdLib Multimediaと名前を変えて引き続きAdLib Goldを販売するものの、売れ行きはあまり芳しくなく、1994年に台湾Soft-Worldにその全資産を売却してしまう。

 Soft-Worldがこの資産をどうしたのかは不明だが、同社は現在MMPROGの大手であって、とりあえずサウンドカードに関してはもう償却され終わってどこかに打ち捨てられてしまったのではないかと思う。

 こうしたAd Libの苦境を尻目に、Creative Technologyは次々に新製品を出して、その地位を磐石のものとする。1992年にはNASDAQにも上場し(*2)、売上げも順調に伸びていき、2年後となる1994年には6億5000万ドルに達している。ただその前に立ちはだかったのが、今回紹介するMedia Visionである。

*1:それまではゲームポートの拡張カードが必要だった。
*2:NASDAC上場は、シンガポール企業としては初めてのこと。

プロ向けのサウンドカードを製造する
Media Vision

 Media Visionという会社は複数存在しており、日本のゲーム会社であるMedia.Visionを連想される方も多いかと思うが、こことはなんの関係もない。創業者はPrabhat(Paul) Jain氏で、ファンドなどからおおよそ100万ドルを集めて1990年に会社をスタートした。ちなみにJain氏の前職は、Video-7というビデオカードメーカーのCEOである。

 最初の製品が1991年に出たPAS(Pro Audio Spectrum)で、ついでPAS Plusを経て1992年には非常に有名なPAS16をリリースする。

 初代のPASは8bit ISAのカードだが、OPL2をデュアル搭載しており、両方を同時に駆動して、アナログミキサー経由でまとめて出力できるという、ややプロ向けで一般には使いにくい製品で、大きく成功したとは言いがたかった。

 これにSoundBlaster互換のCD-ROM I/F(*3)や、16bit音声の再生機能をつけたのがPAS Plusで、SoundBlasterとの互換性を高めた製品である。

 ただ本命は次のPAS16であった。こちらはOPL3を搭載したほか、コーデックチップにCrystal Semiconductorの16bit CODECを搭載。さらにCD-ROM用にはNCR5380互換のSCSIチップを搭載しており、おまけにSoundBlasterのDSPと互換の音声チップ(*4)を搭載するという、これまた全部入りの製品であり、急速にゲーム業界やプロオーディオ業界の支持を集めることになる。

 PAS16は、ちょうどCreative Technologyが1992年に出したSound Blaster 16と真っ向勝負することになり、北米地域では実際良い勝負になっていた。

左のSCSIコネクターのすぐ脇にOPL3、その上にThunderチップがある。そのやや右脇の大きなものがおそらくSCSIコントローラーだ

 Media VisionはPAS16の成功に続き、ビデオカード向けにも参入し、独自のMVV452コントローラー+Cirrus LogicのCL-GD5402を搭載したProGraphics 1024や、メモリー搭載量を増やしたProGraphics 1280などを1993年にリリースしている。

ProGraphics 1024。CL-GD5402はDOSとの互換性専用で、Windowsモードでは左端のMVV452が利用された。右にあるMVV462はDACと思われる

 またPASシリーズは、Windows 3.xにマルチメディア機能を追加するWindows Multimedia Extensionに最初に準拠した製品ともなっており、これもPASシリーズの売上げに弾みをつける要因となった。

*3:IDEあるいはSCSIではなく、34ピンケーブルを利用する独自規格のもの。
*4:Media VisionがThunder Boardとして販売していた低価格SoundBlaseter互換ボードに搭載されていたもの。

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

最新記事

ASCII.jp特設サイト

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

富士通パソコンFMVの直販サイト富士通 WEB MART

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン