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まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第57回

「鷲宮には“何もなかった”から自由にできた」

らき☆すたの聖地・鷲宮が10年経っても安泰な理由

2017年01月15日 17時00分更新

文● まつもとあつし 編集●村山剛史/ASCII.jp

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これからの「聖地」鷲宮

―― 長年のらき☆すたをきっかけとした取り組みを振り返った全体の評価、そしてその評価を踏まえてこれから進むべき方向性は考えていらっしゃいますか? 市町村の合併に伴って、活動を牽引してきた坂田さんが異動になられたり、組織の論理のなかで変化もあるかと思うのですが。

鷲宮では作品の登場人物に対して特別住民票を発行したことも

坂田 そうですね……わたしは7月からこの関係からは離れてしまってますからね。

―― 今年の7月から本所に?

坂田 異動しました。いまはもうアニメのアの字もないような仕事です。ただ、本所の立場としましては、各支所の特色ある取り組みは支援していきますので(笑)

―― (笑)

松本 とてもこなた踊りをやった人とは思えない、事務的な回答だ(笑)

―― 先ほど宿泊の話が出ましたが、鷲宮に限定せず広く見ると、じつは1つの経済圏と見なせるかもしれませんね。「らき☆すた経済圏」。

坂田 いま久喜市は約半分が元の久喜市、残り半分が鷲宮・栗橋・菖蒲の3地域です。最高意思決定者は商工会の会長なのですが、昨年のお祭りを視察して、「鷲宮はこれで行くべきだ」ということで予算が降りて、今年は商店街にスピーカーが付きました。会長がお祭り好きなのもありますが、らき☆すたの力は十分認められています。

―― (電柱の)タペストリーも毎年変えていますよね。あれも枚数がありますし、おカネが掛かりますね。

 

松本 タペストリーは久喜市の行政のほうの管轄になります。らき☆すたの絵を使いたいなどの相談をよく受けますね。

―― 合併後の久喜市においても、引き続き聖地として取り組みを続けていくということですね。一方でまもなく放映から10年になろうとしていて、やはりコンテンツの力が永遠に発揮されるわけではない。そこで、脱らき☆すた的な方向性は考えていらっしゃるのでしょうか?

松本 個人的には、脱らき☆すたというのは考えにくいですね。

坂田 そこで白黒ハッキリさせることもないのが、ちょうど松本がやっている野球であり、芋掘りであり……別にらき☆すたを直接出していませんよね。ラジオもそうですし。オタ婚活はまさにそう。

―― 先ほど、鷲宮でのイベントは非日常を楽しむ場と申し上げましたが、オタクの人が週末訪れて、非日常を楽しめる、オタク同士の交流も楽しめるという、なにかそういう場所になってきているのかなという感じはします。

 お話を伺っていると、作品の人気がなくなったから別の作品を……ではなく、らき☆すたのときに培った人脈やノウハウが時代にあわせて上手につながっているなあと感じます。このへんを理解していないと、『うちの地域に今度アニメが来るから、これで行けるぞ』みたいに思っている地域は、そのアニメの人気がなくなった時点で盛り上がりも消えてしまう、なんてことになりかねないのかあ、と。

坂田 10年間見ていて、収支としてプラスだったのかというのは疑問ですよね(笑) 経済効果は別にして。イベントの運営費用と、近辺含めた商店などの売上を比べたときに、おそらく商工会としてはマイナスだよねと。

―― (笑)

坂田 だから、収益を過度に期待してはいけないのではと思います。損しなければいいかな、くらいで。あとは各商店が、何もしなければゼロだったところを、5%でも10%でも増えたならばそれで商工会の立場としては良しなのかなと。

―― 地元産業とのシナジーはいかがでしょうか?

坂田 初期は一生懸命グッズを考えていましたが、なるべく久喜・鷲宮のみではなく、近隣の有名どころまで拡げて作っていました。藍染めの携帯袋とか、ストラップも春日部が桐箪笥で有名なので桐製に。なるべく関連づけていましたね。

最初に作った絵馬ストラップも、春日部の桐箪笥を意識して桐製を選択。当初から地元だけでなく周辺地域とのシナジーも意識した企画立案だった

―― それはいまも引き続き?

松本 県内・市内の企業さんが関わっているなど、どこかしら地域とつながっている感は意識しています。

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