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「ロックイン回避は重要」基調講演にマイクロソフトやスタートアップなどを招き語る

AWS包囲網?HPEホイットマンCEO「Discover London」基調講演

2016年12月21日 06時50分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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スタートアップとのパートナーシップも強化、他社との差別化につなげる

 ホイットマン氏はまた、HPEによるスタートアップ投資/支援プログラム「Hewlett Packard Pathfinder」に参加する4社も紹介した。「Enterprise DC/OS(Data Center Operating System)」の開発などで知られるメソスフェア、既存セキュリティシステムの自動化/オーケストレーションを可能にするヘクサダイト(Hexadite)、データソースの統合/クレンジング/分析プラットフォームを提供するテイマー(Tamr)、Software Defined Storage(SDS)のスキャリティ(Scality)という4社だ。

(左から)HPE CEOのメグ・ホイットマン氏、メソスフェア(Mesosphere)共同創業者兼CEOのフロリアン・ライバート(Florian Leibert)氏、ヘクサダイト(Hexadite)共同創業者兼CEOのイーラン・バラク(Eran Barak)氏、テイマー(Tamr)共同創業者兼CEOのアンディ・パーマー(Andy Palmer)氏、スキャリティ(Scality)プレジデント兼COOのアーワン・メナード(Erwan Menard)氏

 HPEがスタートアップ支援を行う狙いは何か。それは、サーバーなどの自社製品にこれらのスタートアップが持つ先進的なテクノロジーを組み合わせて提供することで、他社との差別化を図ることだ。たとえばヘキサダイトの場合、HPEは同社と戦略的な再販契約を結んでおり、HPEのセキュリティポートフォリオの一部としてヘキサダイトの技術を提供している。

 SDSのソフトウェアを提供するスキャリティの場合は、「業界標準サーバー(x86サーバー)で動作するが、顧客のインストールベースを調査すると『HPE Apollo』サーバーで動かしているケースが多かった」(同社 プレジデント兼COOのアーワン・メナード氏)ことが、HPEと提携するきっかけだったようだ。

 スキャリティのSDSは、ペタバイト級に及ぶ大規模な導入事例も多い。たとえばフランスの動画サイト「DailyMotion」では、月間およそ3億ユーザーが動画のアップロードや閲覧を行う。当初はEMCのストレージを採用していたDailyMotionだが、ストレージ規模が拡大するにつれてスケールが難しくなり、スキャリティのSDSソフトウェアとApolloサーバーの導入を決めたという。

 スキャリティのメナード氏は「こうした需要は、もはやWebサービス企業に限らず、エンタープライズ(大規模企業)市場でも出てきている」と語り、HPEと共同で市場展開できることのメリットを強調した。この12カ月で、スキャリティとHPEが共同で提供したSDSインフラの容量は150ペタバイトにも及ぶという。

 テイマーの共同創業者兼CEOであるアンディ・パーマー氏は、かつてHPにカラム型データベース「Vertica」を売却した関係でもあり、「HPEと手を組むのは当然の流れだった」と語る。同社製品の導入顧客として取り上げたのは、米国のゼネラル・エレクトリック(GE)だ。HPEとの提携により、こうした大規模企業の要件にも見合うスケールが得られるという。

 「GEは、Tamrを使ってデータをクリーンにし、まずは支出分析を行った。その後、予測分析、顧客体験、ロジスティック分析と利用を拡大している。その結果、初年度に8000万ドル、翌年には3億5000万ドルのコスト削減に成功した。すでにサーバーにあるデータを分析するだけで、大きなコスト削減に貢献できる」(パーマー氏)

 直接AWSと比較してメリットを強調したのは、メソスフェアの共同経営者兼CEO、フロリアン・ライバート氏だ。メソスフェアでは、スケーラブルなクラスタ/アプリケーション/コンテナ管理プラットフォームのEnterprise DC/OS(DCOS)を提供している。

メソスフェア 共同経営者兼CEOのフロリアン・ライバート(Florian Leibert)氏

 「DCOSにより、ハードウェアの使用率とコンテナ化を最大化し、コストを削減できる。IT部門を“ハイブリッドクラウドサービス事業者”に変える」「DCOSを利用することで、『Spark』や『Hadoop』といった高速なビッグデータ技術、『Cassandra』などのNoSQL、『Kafka』などのメッセージ処理技術を、シングルクリックでHPEハードウェア上にプロビジョニングし、管理できる」(ライバート氏)

 メソスフェアがDCOS導入顧客として紹介したのが、米国の大手通信事業者であるベライゾンだ。ベライゾンではDCOSを利用して、数万台規模の物理サーバー上でハイブリッドクラウド環境を構築しているという。

 DCOSの顧客にはFortune 500企業も数社含まれるが、ライバート氏はそうした顧客の多くは「(DCOSならば)プロプライエタリなクラウドにロックインされない、という点にメリットを感じている」と語り、暗にAWSと対比させた。また、聴衆へのアドバイスとして「デジタルトランスフォーメーションを進めるにあたっては、AWSにロックインされないように」とも述べている。

 こうしたライバート氏の発言を受け、HPEのホイットマン氏も「AWSに移行すると、戻ることができないと(顧客から)よく聞く。ロックインの回避は、ITにとっては重要な課題だったはずだ」と応えた。

 ホイットマン氏は最後に、従来のSIやISVとのパートナーシップに加えて、今後はこうしたテクノロジースタートアップとの提携も積極的に進めていくと語った。「こうした取り組みにより、HPEとスタートアップの両方によるイノベーションを組み合わせ、提供することができる」(ホイットマン氏)。

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