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Sleipnirのフェンリルが作ったこだわりのB2Bクラウド

ゲーム開発の現場を変えたレビューサービス「Brushup」

2016年12月08日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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フェンリルの「Brushup(ブラッシュアップ)」は、イラストや写真、動画、ドキュメントなどのレビューサービス。ゲーム開発でのイラストレビューを効率化すべく作られたサービスの概要についてフェンリルの水谷好孝氏に聞いた。

イラストにコメントを入れて、タイムラインで共有できる

 Brushupはイラストなどに複数のユーザーが直接コメントを入れ、タイムライン上で管理できるレビュー用のサービス。PSDやAIなどのデザインファイルやOfficeデータもアップロードすれば、自動的に画像形式に変換し、Webブラウザ上でプレビューすることが可能だ。動画に関しても、閲覧しながら、気になった箇所と時間にコメントを入れられる。「当初は『デザインチームのためのプロジェクト管理ツール』だったのですが、あくまで関係者同士でイラストについてやりとりするレビューツールという風にコンセプトを大きく変えました」と水谷氏は語る。

タブレット版のBrushup。イラストに直接修正内容やコメントを書き込める

 一言でレビューと言っても、直接会ったり、メールや電話でやりとりしたり、いろいろなやり方がある。しかし、今までのやり方ではどうしても課題が出てきてしまうとフェンリル Brushup プロダクトオーナーの水谷氏は指摘する。「直接会うとニュアンスは伝わりますが、エビデンスが得られず、距離的な制約があります。メールは多くの人とやりとりできて、文字にも残りますが、逆にニュアンスが伝わらず、大きいファイルを送ったり、ファイル形式を変換するのが大変といった課題もあります」という。これに対してBrushupは、両者の弱点を補いつつ、タイムライン形式で過去からの履歴がわかる、第三者に引き継ぎやすいなどの特徴を持つ。

フェンリル 事業本部 新規事業部 次長 水谷好孝氏

 機能面では、イラストのレビュー機能からスタートし、ドキュメントや動画などのファイルフォーマットを追加した。意識しているのは、極力シンプルでわかりやすいユーザーインターフェイスで、画面内の用語に関しても、ITリテラシの高くないユーザーが理解できるようにしているという。

非効率だったメールベースでのレビューが変わる

 Brushupは、もともとWebサービス事業者のグリーのために開発したシステムを一般ユーザー向けに外販したもの。国産のWebブラウザ「Sleipnir(スレイプニール)」などを手がけるフェンリルが受託開発で作ったサービスを自社プロダクトとして展開している。

 「当時、グリーさんはゲームタイトルあたり500枚近いイラストのディレクション業務をすべてメールでやっていました。添付ファイルを開いて、チェックして、またメールで戻すという作業。あまりにも非効率だと言うことで、弊社に問い合わせをいただき、作ったイラスト制作管理ツールがBrushupの原型です」と水谷氏は語る。グリーは現在でもBrushupを社内ツールとして大きく活用している。

 一方、水谷氏も自らがマネージャーとして受託開発を手がける中、こうした非効率なワークフローが多いと感じたという。こうしたフェンリルはグリーの快諾を得て、水谷氏が受託開発事業のマネージャをやるかたわらで事業化を推進。2015年3月に自社プロダクトとしてBrushupを立ち上げることになったわけだ。

 プランはユーザー10人、ワークスペース1つ、容量100MBで無償の「エントリー」のほか、「スタートアップ」「ベーシック」「エンタープライズ」の4つを用意。30名のスタートアッププランでも月額3000円なので、スモールビジネスであれば十分カバーできるだろう。

 「無償のβ版とはいえ、プロモーションもなにもしなかったのに、スタートから2~3日で200ユーザーがついた」(水谷氏)という好調な滑り出しを遂げたBrushup。同年6月の正式版・課金開始を経てもユーザーは増え続け、現在では800社を超えてきた。これを受けて、受託開発のマネージャーを担当していた水谷氏も、いよいよBrushup専任になり、開発者とデザイナーを確保し、Brushupの機能強化や認知度の向上に注力しているという。

プレビューが一覧表示でき、シンプルな使い勝手を追求しているという

 現在はイラストや写真のチェックなどクリエイティブ系の作業での利用が多いが、レビューという作業は、ホワイトカラーの業務の中で日常的に見られる作業だ。「たとえば、新聞社であれば現場の写真でフォーカスしたいところに印を付ければいいし、今後は教育現場で使うコンテンツのチェックや、ブランド偽造品の鑑定現場など、さまざまなところでBrushupが活用できます」と水谷氏は語る。今後はアプリやAPIの開発を進めるほか、イラスト等のレビューにとどまらない幅広い利用用途を提案していきたいとのことだ。

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