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ソフトベンダーTAKERU 30周年 レトロPC/ゲームを振り返る 第5回

『TAKERU』約20年ぶりのアキバ登場に大興奮!? レトロPCと一緒に展示された2日間

2016年12月06日 18時00分更新

文● 宮里圭介

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#2日目セッション1
「TAKERU時代の愛すべき名作ゲームの宴」

右から順に、ほえほえ新井氏、忍者増田氏、高橋ピョン太氏の元ログイン編集部3名が登壇。

 2日目最初のステージは、元ログイン編集部者の思い出のゲーム、80年代後半~90年代前半の年間アワード、ゲームメーカー紹介などがメインに語られた。登壇者は初日も登場した高橋ピョン太氏、忍者増田氏に、5代目編集長のほえほえ新井氏を加えた3名だ。

 ログインがどんな雑誌だったかの説明として、当時の記事をいくつか紹介。「バカチン市国 海へ行く」では、トイレのドアをサーフボードに見立てて湘南(実際は九十九里)へ行き、2日間トイレにドアがない状態で怒られたという話や、編集部の慰安旅行となる「いあ~んバカンス」では、宿で体重計をパンチして壊し出禁になったという武勇伝(?)が披露された。

トイレのドアがサーフボードに見えるからと、外して持って行ってしまう行動力がすごい。しかも1泊したので、2日間トイレにドアがなかったという。

編集部員がみんな若かったということもあり、だいぶはっちゃけていたようだ。出禁になった場所は、複数あるらしい。

 忍者増田氏が思い出の1本として挙げたのが、『ウィザードリィV』。ここから画面がグラフィカルになり、さらにダンジョンが20×20ではなく不定形、NPCが登場するなど、物語も複雑になっていった。ちなみに担当していたページが攻略に役立たないと他誌で批判され、凹んだこともあるそうだ。

システムが大きく変更されたこともそうだが、タイトル末尾の「5」がローマ数字の「V」になったことから、混乱した人もいたのでは。

 高橋ピョン太氏の思い出の1本は、『THE ATLAS』。調査結果を信じるか信じないかで地図が変わっていくという、斬新なアイディアが印象に残っているという。編集部内での会話でも、「信じない」などとよく使っていたそうだ。船長の恰好をして、よく撮影していたという。

斬新なアイディアに心をつかまれた人も多い。なお、「レジェンドパック」としてWindowsでプレー可能なものが販売中。

 ほえほえ新井氏の思い出の1本は、『ソーサリアン』。製作中からバイクにカメラを載せて立川まで取材にいったり、誌面でパラメーターを掲載したりとかかわりが深かった。ソーサリアンにある60くらいの職業を紹介するのに、イラストレーターへ4日でお願いしたこともあるなど、ゲームそのものもそうだが、雑誌での苦労も含め思い出に残っているようだ。

シナリオ形式を採用し、同じキャラで複数の物語が楽しめたのが特徴。TAKERUと縁の深い作品でもある。

 各人の思い出の1本の後は、ログインの「ベストヒット・ソフトウエア大賞」(BHS大賞)を振り返り、年ごとの話題となったゲームを紹介。また、BHS大賞では読者投票によるランキングだけでなく、「アドベンチャーゲーム賞」や「ロールプレイングゲーム賞」のようなジャンルごと、さらに「企画賞」や「技術賞」など、ゲームそのものとは関係ない部分にまで賞をあげていた。多くのゲームに賞をあげ、業界が盛り上がればとの思いがあったそうだ。

多彩な賞を出していたBHS大賞。「画面レイアウト賞」や「ポスター賞」などという、ものすごいものも。

 この後はゲームにまつわる苦労話や、当時の大手ゲームメーカーとなる日本ファルコム、システムソフト、光栄、リバーヒルソフトとの思い出話などで盛り上がっていた。

#2日目セッション2
「TAKERUとMSXの甘~い関係」

右から順に、MSXA3号氏、北根紀子氏、MSXA4号氏が登壇。

 2つ目のステージは、TAKERUとMSXとの関係について詳しく語るものとなった。登壇者はMSXアソシエーションの2名と、MSX・FANの元編集長、北根紀子氏。最初にMSXアソシエーションの活動が簡単に紹介されたあと、主にMSXとTAKERUとの関係について語られた。

MSXの各種版権管理を目的に設立された団体。公式エミュレーターや1チップMSXの開発なども行なったそうだ。

 MSXは1990年に発表された「MSXturboR」の規格が最後。それでも性能的にはPC-98やX68000などのライバルに届かず、新作ソフトはどんどん出てくなっていった。数少ないソフト入手方法として残されていたもののひとつが、TAKERUだという。MSXマガジンやログインが掲載プログラムをTAKERUで販売しているなか、MSX・FANも「ファンダムライブラリー8」を販売。TAKERUの情報ペーパーであるTAKERU PRESSにも掲載された。なお、「バックナンバーも販売予定」とあるものの、結局販売されなかったとのこと。

投稿プログラムコーナー「ファンダム」をまとめた総集編「ファンダムライブラリー」がTAKERUで販売されていた。

 MSX・FANは1987年創刊のプログラムが半分、ゲーム紹介が半分といった雑誌で、1991年からはFD付属のムックに。会場ではそのFDが実行され、どういったものかが紹介されていた。また、FDに『テグザー』や『ハイドライド』といった昔のゲームが丸ごと収録されていて、新しいソフトが出ないどころか古いゲームの入手性も悪くなっていたユーザーにとってありがたかったそうだ。なお、協力してくれたのは小さなソフトハウスが多く、大手は版権などの関係で収録できなかった。

付属FDの紹介。ファンダムのコーナーがあるため、ファンダムライブラリーとしてTAKERUで販売する意味が薄かったのかもしれない。

 TAKERUは古いソフトの販売やMSXの同人ソフトなどでも多く使われていたが、『ソーサリアン』や『ブライ下巻完結編』など、メーカーがMSX向けに出してくれなかったタイトルの移植も多い。実はこの移植を要望していたのが、MSX・FANの移植希望コーナーだ。TAKERUには読者の願いを多くかなえてもらったそうだ。

『ソーサリアン』のMSX版はTAKERUでの販売。移植にかかる費用などもブラザーが負担した。

#2日目セッション3
「TAKERUが運んだゲーム制作者の夢」

右から順に、北根紀子氏、広沢一郎氏、ルドン・ジョゼフ氏が登壇。司会補佐として、ゲーム保存協会の日下義政氏も参加。

 最後のステージは、「ゲーム制作者の夢」と題して主に同人ソフト作家とTAKERUとの関係についてがテーマ。

 元TAKERU運営チームで、ソフト集めを主にやっていた広沢一郎氏によると、最初は大手ソフトメーカーに頼んでいたが、自社のパッケージで売れるものをわざわざTAKERUで売る必要はないため、あまり相手にされなかった。かといって、売れないソフトはTAKERUでも売れるはずもなく、そもそもメーカーも売れないと思って作るソフトなどはない。TAKERUを立ち上げ、ソフトを集めようとしたときに、このことに気づいたそうだ。

 ではオリジナルソフトを作ろうとメーカーに制作を依頼しても、有名どころはいいものは自社で売るだけに、なかなか売れるものができない。その後もずっと模索を続け、ようやくTAKERUに合った形として見つけたのが、同人ソフト、名作文庫(旧作品の廉価販売)、ソフトの移植だった。

MSX・FANの最終号にあるTAKERUのソフトランキング。TAKERUへの同人ソフト応募方法の解説まで載っていた。

TAKERU PRESS上でも、同人ソフトの割合が高く。同人ソフトだけで特集が組まれることもあった。

日下義政氏のお気に入りは『無敵戦士ヤジウマン』。ゲームというよりビジュアルノベルのようなもので、ノリが好きだったという。

 欧米の同人ソフト文化について話が移ると、日本とはだいぶ事情が違っていたようだ。ゲーム保存協会のルドン・ジョゼフ氏によると、日本のようにゲームソフトを作って即売会で売ったり交流したりというのは少なく、プロを目指した真面目なビジネス用途のインディーズソフトがメインだったとのこと。同人的なサークルとしての活動となると、短い映像や音楽で構成された「デモ」を作ることが流行っていたそうだ。これも、低いスペックのPCや少ない容量でいかに作るかが競われているもので、技術のアピールがメインだ。

 このサークルつながりで驚いたのが、意外にも海外にMSXのサークルが多いこと。MSX・FANのサークル紹介ページにも「COBRA」というブラジルのサークルが載っていたりと、海外のMSXユーザーにとってもMSX・FANは重要な雑誌だったようだ。実際、定期購読で海外にも読者がいたそうだ。

日本のサークルに混ざって、ブラジルのサークルも。MSXの賛同メーカーは日本が多いとはいえ、海外でもMSX機は開発、販売されていた。

 TAKERUが稼働中はずっとソフトのマスターが保存されていたものの、それももう廃棄してしまったそうだ。今では手に入らないソフトも多数あるだけに、会場に展示してあった最後の1台に搭載されているHDDをサルベージできれば……という話にまで広がっていった。

 最後は、MSX・FAN元編集長の北根紀子氏から、サプライズで花束が広沢一郎氏に送られ、ステージの幕が閉じられた。

ステージ終了後に撮影した北根氏と広沢氏のツーショット。花束の内側の黄色は、TAKERUをイメージしてのものだろうか。

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