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クラウドの力を見せつけたAWS re:Invent 2016 第1回

伝説の「AWS Innovation at Scale」がパワーアップして戻ってきた!

海底ケーブルからカスタムサーバーまでハミルトン先生が語る物理なAWS

2016年12月01日 00時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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あの航空会社の事故から学んだ電力設備の障害対策

 続いて、フォーカスされたのは電力設備の課題だ。ハミルトン氏はデータセンターの停電から多くの便が欠航・遅延した米国航空会社の事例を挙げる(おそらく今年8月に起こったデルタ航空の欠航事故)。初日だけで1000のフライトがキャンセルされたこの事故では、月の売り上げの2%にあたる1億ドルの損失を出したという。

非常にまれながら、起こると大きな損害が出る停電事故

 この事故の原因となったのは、停電の際に自家発電機に電力供給を切り替えるスイッチギアの故障だ。しかし、こうした故障を完全になくすのは難しい。「事故当日、スイッチギアのメーカーの担当者は『そういうもの(うまく切り替わらないこともある)なんです』と説明していたが、データセンターのマネージャーは唖然としていた。ほかのメーカーも同じということだった」とハミルトン氏は語る。

 これに対して、AWSでは民生のスイッチギアにカスタムのファームウェアを搭載することで、停電のような外部障害にも対応している。「2013年のSuper Ballのときも同じようなことが起こって、34分間電気がダウンした。こんなことが起こったら、誰もAWSを買ってくれない。AWSでは絶対起こってはいけないし、実際に起こしていない」とハミルトン氏は力説する。

民生のスイッチギアにカスタムファームウェアを導入

モンスターなストレージとシンプルなサーバー

 前半の最後のトピックとして披露したのはストレージとサーバーについての取り組みだ。ここでの焦点はやはり集積密度。AWSはストレージも自社設計しており、2014年のre:Inventではラックあたり880台のディスクを搭載できるストレージが披露されている。現在開発中の次世代ストレージは、42Uに1100台のディスクを搭載でき、8.8PBを収容できる。最新のディスクでは11PBまでカバーするという。

1100台のディスクを搭載可能なお手製ストレージ

 一方、サーバーは冷却と電力の効率を考慮して、極力シンプル化した。写真を見ればわかるとおり、中身はスカスカだ。しかし、全体のPUEを追求し、1%の電力効率にこだわった結果、この形状に落ち着いたという。

冷却と電力の効率を意識した1Uサーバー

 電力にこだわるハミルトン氏は、セッションの最後にAWSの再生エネルギー利用について説明した。Amazonが敷設した風力発電や太陽光発電によって、現在40%となっている再生エネルギー利用率を、2017年度までに50%にまで引き上げるとアピール。残りの日程を楽しむよう聴衆に呼びかけ、壇上から去った。

再生可能なエネルギーの利用率は現在までで45%。これを2017年度には50%まで引き上げる

 今回、ハミルトン氏がアピールしたのは、可用性と耐障害性など地味ながら非常に重要な部分だ。パブリッククラウド市場でトップを走るAWSのサービス品質は、まさにクラウドそのものの評価に直結する。そして、圧倒的な規模を誇るAWSのインフラが落ちることは、クラウドに期待する多くの顧客の信頼を裏切ることになる。しかし、過去には自然災害やオペレーションの問題、外部からの攻撃などによって、AWSもいくつかの障害を起こしてきた。ハミルトン氏、ひいてはAWS自体が過去のこうした障害からさまざまなことを学んでおり、結果として自社設計・自社開発の仕組みを多く取り入れ、自らの手でインフラをコントロールしている。まさに「ここまでやるか」というハミルトン氏の技術者魂を見えた秀逸のセッションに多くの聴衆も酔いしれたはずだ。

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