小米だけにお米はうまく炊ける!? シャオミのスマート炊飯器を買ってみた!

文●山谷剛史

2016年11月24日 12時00分

スマート家電を置く小米のリアルショップ

スマートフォンで知られている「小米」(シャオミ)の路線が「スマートフォン一筋」から「スマートフォンと、それを柱にしたスマート家電」へと変わった。

いわく「スマート家電版無印良品を目指す」そうで、そのため小米のほとんどのスマート家電はシンプルな白色のデザインとなっている。

小米のスマート家電のラインアップ

小米はもともとネット限定販売でシェアを伸ばしたが、他社が追随する中でこのビジネスモデルでの先行ボーナスもなくなり、最近ではスマート家電の小米を認知してもらうべく、中国各地でスマート家電を中心に扱う小米のリアルショップが増えつつある(ちなみに無印良品は中国で数少ない成功した日本企業の1つで、成功しているが故に小米を含め周囲に影響力を与えている)。

さて、小米のスマート家電版無印良品化ラインアップのひとつに炊飯器「米家圧力IH炊飯器」がある。

サイトによれば純米科技のトップは元三洋電機の炊飯器事業部長だという

炊飯器「米家圧力IH炊飯器」のメーカーは厳密には小米ではなく純米科技というメーカーで、サイトによると同社のトップは元三洋電機の元炊飯器開発部長である内藤氏となっている。

現在、小米の炊飯器は999元(約1万6000円)と399元(約6400円)の2機種をラインアップ。圧力IH炊飯器で、高価格モデルについては小米らしくスマートフォンとの連携機能もあり、この値段はスマートフォンと連携した他社の高級な炊飯器に比べると安い(しかも日本人の専門家による製品である)。

低価格モデルは家電量販店やスーパーで売っている一般的な炊飯器の価格帯である300元台(約4800~6400円)と競合する。

ともかく買ってみなければ新しい小米は体感できぬ、とばかりに、この小米の米家圧力IH炊飯器のハイエンドモデルを購入した。

米家圧力IH炊飯器は、角がまるまった立方体型の炊飯器で、サイズは幅212×奥行き300×高さ251mm、重さが6.45kgとなっている。容量は3Lでご飯にして5合、お粥にして1号の炊飯が可能だ。

シンプルなパッケージとシンプルじゃない説明書

小米らしいシンプルなパッケージ

スマートフォン一筋の小米のときから箱と説明書がシンプルだったが、この製品も白物家電にしてはかつてないほどシンプルだし、パッケージもまた非常にシンプルだ。

箱の中にはしゃもじなどをアイコン化した小箱が詰まっていて、それぞれの箱に何が入っているかは一目でわかる。パッケージのシンプルさに、小米らしさを感じるが、それが物欲につながるかというと難しい。

セッティングは中国語が理解できないと難しい

説明書には各種機能と裏ブタの洗い方が書いてあるのだが、取り外し方はアイコンや絵だけでは難しく、中国語の説明が書かれている。中国語が読めないと、使いこなせない製品であろう。

烈焔鉄釜

炊飯器では大事な釜は「烈焔鉄釜」という名前のフッ素(PFA)樹脂加工の7層釜を用意。釜もいいものを作ろうというこだわりが見える。

実際にご飯を炊いてみる! 味はまあまあだが……

光るLEDががぐっとくる

さて、本体の電源を入れると、白色のLEDライトが上部の操作面で光りだす。白物家電というよりは、異端なデジタル家電的遊びを入れた白物家電という感じを受け、この瞬間に筆者は少しばかりだが物欲を満たし、ニヤリとなった。

炊飯は短くて40分、長くて1時間で炊飯可能。試しにデフォルトの状態で炊いてみると、100元ちょっと(約2000円)の激安の炊飯器に比べればはるかにいいものの、300元程度の炊飯器と味の違いがわからなかった(ただし筆者は味にうるさくない)。

日本の炊飯器よりも保温は期待できない

難点を言えば、この製品しかり、多くの中国の炊飯器に当てはまることだが、保温に対するニーズが低いことからか保温が苦⼿で、⽇本の炊飯器よりも短い時間で⽶は⻩⾊く硬くなる。また、この製品の問題として、炊いたあと、フタを開けると水が少なからずたれるという問題がある。

スマホとの連動機能ももちろんアリ!

本体表面のボタン類を使って一般的な炊飯器同様、炊き方や予約などを操作できるが、この製品は加えて無線LAN経由でスマートフォンでの操作ができる。

炊飯器専用ではなく小米のスマート家電用の汎用アプリだ
アプリにさまざまなレシピがある

炊飯器限定の機能では、一部の炊飯器では紙の説明書で用意しがちな、炊飯器による各種炊き込みご飯のレシピもアプリに導入。

標高数十メートルの沿岸部と、標高1800mの雲南省昆明では沸点も異なる。そこでアプリがGPSで場所を把握。さらには米のバーコードを読み込むことで米情報を入手し、米の品種と炊く場所(標高)に合わせた最適な炊き加減調整機能を備える。

つまり、スマートフォンと連携したほうが、理論上はいい炊き加減となり、美味しくなる(味音痴で大きな変化は感じられず)。

小米のスマートデバイス全体の機能では、「起床時」「帰宅時」「お出かけ時」「睡眠時」という4つの時間を設定し、その時間に合わせて炊飯器で炊きはじめる、または空気清浄機であれば稼働を開始する、といった対応製品のアクションを設定できる。

またアプリでは、ほかの小米のスマートデバイスについて製品ラインアップを見ることもでき、小米のスマート家電を気になりだしたら、アプリ経由で他の小米の家電製品の紹介に誘導することができる。

“ハイスペックの割に安い白物家電”は魅力に欠ける!?

小米の炊飯器を購入した筆者の感想をいうと、炊き方によるはっきりとした味の違いはわからない。

だが、デザインを求めるならアリだし、小米の炊飯器購入をきっかけに統一目的で他の家電も小米でそろえるかもしれない。

とはいえ、そもそもとして白物家電はそう買い替えないので、小米の白物家電を買うまでのハードルが高い。

“ハイスペックの割に安いスマートフォン”と比べると“ハイスペックの割に安い白物家電”はそれほど魅力を感じないように思うのは筆者だけだろうか。小米のスマートフォンに比べれば、小米のスマート家電は魅力に欠けるように感じた。

それでもほかのメーカーに比べて小米のスマート家電は魅力的だ。その小米のスマート家電戦略がうまくいかないならば、その他のメーカーのスマート家電はこれ以上はうまくいかないのではないかと思えてならない。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。書籍では「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)、「日本人が知らない中国インターネット市場」「日本人が知らない中国ネットトレンド2014」(インプレスR&D)を執筆。最新著作は「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 」(星海社新書)。

■関連記事