麻倉怜士のハイレゾ真剣勝負 第7回
オーディオファンには根強く人気のある花火やノラ・ジョーンズ、宇多田ヒカル、そして上白石萌音
麻倉怜士推薦「いますぐ聴きたい、高音質ハイレゾ音源」
2016年11月26日 12時00分更新
宇多田ヒカルの8年ぶりのオリジナル・アルバムだ。「Fantome」(ファントーム)とは「幻」「気配」の意味のフランス語。
冒頭の「道」。躍動的な、同時にナチュラルな歌の進行を量感豊かなベース、透明感の高いコーラス、尖鋭なパーカッション、クリヤーなキーボードが彩る。メロディラインがヴィヴットで、オーバーダビングによる音の重層感と、俊敏なリズムの切れ味の魅力。
3曲目の「花束を君に」。柔らかいレガート感が耳に優しい。気持ちがストレートにクリヤーに伝わってくる。セカンドバースは、8ビートになり、量的にも、リズム的にもかなり主張するサウンドになるが、オーバーダビングによるヴォーカルの伸びやかな表現力は変わらず。しなやかにしてテンションが高い声はまさにワン・アンド・オンリー。録音は解像度強調型ではなく、量感を押し出す剛性的なテクスチャー。
FLAC:96kHz/24bit
Virgin Music、e-onkyo music
上白石萌音は「かみしらいしもね」と呼ぶ。chouchouは「シュシュ」と読む。大ヒット映画「君の名は。」の三葉役のシンガーのデビューアルバムだ。
1曲目映画「赤い糸」主題歌「366日」。 冒頭のアコースティックキターがリアルで美しい。声質はクリヤーにして、軽くグロッシー。私の好きなタイプの音色傾向だ。声の伸びが清涼で、耳に心地よい。録音は優秀。ギターの撥音楽器らしい質感表現がいい。叙情的な声質の解像感も高い。途中からエレキベース、パーカッションが加わるが、上質さは変わらず。音場の見渡しがとてもクリヤー。
2曲目、WOMAN(「Wの悲劇」から)。オリジナルの薬師丸ひろ子の声質にまろやかさの部分が少し似ていて、でも薬師丸ほどグロッシーなわけではない。健康的なテクスチャーが、この曲としては新鮮。6曲目のスマイルもレガートな歌唱が感動的だ。
WAV:96kHz/24bit、FLAC:96kHz/24bit
ポニーキャニオン、e-onkyo music
ロサンゼルスはサンタモニカからもほど近い、トパンガ州立公園イーグルロックは巨大一枚岩で有名だ
アメリカのポップスシーンでは「イーグルロックから第2のサイモン&ガーファンクル出現」かと騒がれている。同地出身のシンガーソングライター兼ギタリストのケネス・パッテンゲールと同ジョーイ・ライアンが組んだThe Milk Carton Kids。
確かにS&Gの再来のような繊細で、深みを持つギター2本とヴォーカル・デュエット。静謐なハーモニーは、ハイレゾ時代に新型S&Gが登場したような錯覚を受ける。中低音の太い歌声がメロディ側に、高音がハーモニー側を担うという和声構造もS&Gを彷彿とさせる。録音は素晴らしい。ギターの明瞭な音色、クリヤーな伸びが印象的で、ギターとヴォーカルのバランスも明瞭だ。二人のハーモニーが的確に捉えられ、デュオならではの魅力が十全に伝えられている。
FLAC:96kHz/24bit
Epitaph、e-onkyo music
ベルリオーズ:幻想交響曲 作品14&リハーサル
シャルル・ミュンシュ、日本フィルハーモニー交響楽団
1962年冬、往年の大指揮者、シャルル・ミュンシュが日本フィルハーモニー交響楽団を振った、東京文化会館での貴重な録音。
文化放送のラジオ番組「東急ゴールデンコンサート」の録音技師でオーディオ評論家の故若林駿介秘蔵の1/4インチ10号リールのオリジナル・マスターテープからのハイレゾ化だ。1962年12月28日 東京文化会館にてライブ収録。
ミュンシュ/日フィルの幻想交響曲は、初期のBSフジの番組でこれまでも何回も放送さているが、お世辞にも音が良いとはいえなかった。ところが、今回のリマスタリングは、びっくりするほど音が洗練されているではないか。音場の透明感が高く、弦の倍音感もすがすがしい。この録音には、これほど倍音が収録されていたのか驚くほどだ。 音像がここまでクリヤーに透徹するのか驚く。ヴァイオリンが左側、チェロが右側の定位感も確実で、しかも木管はきちんと奥に位置するのである。オケも技量は完璧ではないものの、天下のミュンシュになんとか食らいつこうという意欲は感じられる。低域が薄いのが惜しい。幻想交響曲、ダフニスとクロエ第2組曲のリハーサル記録、ミュンシュの楽員への挨拶も収録。
WAV:96kHz/24bit、FLAC:96kHz/24bit、DSF:2.8MHz/1bit
EXTON、e-onkyo music
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