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麻倉怜士のハイレゾ真剣勝負第7回

オーディオファンには根強く人気のある花火やノラ・ジョーンズ、宇多田ヒカル、そして上白石萌音

麻倉怜士推薦「いますぐ聴きたい、高音質ハイレゾ音源」

2016年11月26日 12時00分更新

文● 麻倉怜士 編集●HK(ASCII)

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 評論家・麻倉怜士先生による、いま絶対に聴いておきたい“ハイレゾ音源”集。11月はクラシックから始まりつつ、オーディオファンには根強く人気のある花火やノラ・ジョーンズ、宇多田ヒカル、そして上白石萌音など女性ボーカルも。素晴らしい音源ぞろいですのでぜひご賞味を。

 特におすすめの曲には「特薦」「推薦」のマークもつけています。e-onkyo musicなどハイレゾ配信サイトをチェックして、ぜひ体験してみてください!!

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集
フリードリヒ・グルダ
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ホルスト・シュタイン

 鬼才フリードリヒ・グルダの名アナログ録音がハイレゾ化された。ホルスト・シュタイン指揮ウィーン・フィルを従えたベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集だ。

 1970年6月(第1番、第3番、第5番)、1971年1月(第2番、第4番)、ウィーン、ゾフィエンザールでのDECCA録音。当時40代になったばかりの壮健なグルダ(1930年5月16日 - 2000年1月27日)が、1967年のソナタ全集に続いて録音したベートーヴェン・プロジェクトの第2弾であり、ジャズに入る前の、グルダの最も重要な録音遺産とされる名盤だ。

録音が素晴らしい。録音会場は1950年代半ば以降、デッカのウィーンでの専用スタジオとなっていたゾフィエンザール。今の過度にホールトーンを入れるソノリティ録音とは異なる、直接音を主体にし、ホールの美しい響きも添える、この時代、この会場ならではのデッカサウンドが耳の快感だ。

 芯がしっかりとした安定的な土台の上に、輝ける音色がきらきらとまさに万華鏡のように拡散する。ウィーン・フィルのしなやかで、麗しく、美しい音の響きが、このデッカメソッドで十全に捉えられている。今のウィーン・フィルのように国際化する前、純粋なウィーン育ちしか入団できなかった「ドナウ川で産湯を使い、ウィーンの音楽院で習い、ウィーン製の楽器を使って演奏する」時代の馥郁な音が香る。ピアノの輝かしいテクスチャーも素晴らしい。ベーゼンドルファーならではの中音域の音の豊潤さが、耳の快感。いまの録音に比べればレンジ感は狭めだが、その分、音の魅力が凝縮されている。

FLAC:192kHz/24bit
Decca、e-onkyo music

死の舞踏~魔物たちの真夜中のパーティ
モントリオール交響楽団、ケント・ナガノ

 ハロウィーンをテーマに魔女、魔物を描いた名曲を編んだ。交響詩《魔法使いの弟子》、交響詩《真昼の魔女》作品108、交響詩《はげ山の一夜》、交響詩《タマーラ》、死の舞踏 作品40、《3つの屋外の情景》 とまさに魔法、魔女、そして悪魔の饗宴だ。

 1曲目、ポール・デュカスの「魔法使いの弟子」。モントリオールの土地柄のフランス的なソノリティと透明感と色彩感のミックスが素晴らしい。ファゴットのテーマもコケティッシュで、俊敏なもたもたさ(?)が、この物語の世界観にぴったり。弦も金管もカラフルで、きらきらしている。といっても音の質感としてメタリックに傾かずに、しなやかで、上質感を保ちながら、同時にブリリアントさと色彩感を演出するという、なかなかの名演奏、名録音だ。3曲目、ムソルグスキー「はげ山の一夜」。この曲の場合、いかにもロシア的な野蛮風のキャラクターが立った演奏が多いが、ナガノとモントリオール交響楽団は、実にエレガントで、上質だ。音の進行がダイナミックで、快適。

しかし、要らぬ心配をしてしまうのが、季節モノって、季節が過ぎても売れるのだろうか。例年、クリスマスシーズンまではクリスマス・ソングが大モテだが、過ぎるとまったく演奏されない。ハロウィーン関連はどうなんだろう。本アルバムは、2015年10月29日、30日モントリオールのメゾン・シンフォニークで録音。

FLAC:96kHz/24bit
Decca、e-onkyo music

モーツァルト:ピアノ協奏曲第17番&第25番
[2016年 ライヴ・イン・クリーヴランド]

内田光子、クリーヴランド管弦楽団

 内田光子/クリーヴランド管弦楽団のコンビによるモーツァルト・ピアノ協奏曲シリーズ第5弾。かつてのジェフリー・テイト指揮のイギリス室内管弦楽団との録音も名盤だった。その第17番は1986年、第25番は1988年だったから、久方振りの再録音だ。

 秋晴れの、透明な空気に覆われた朝の、すがすがしい雰囲気にぴったりのピアノ協奏曲17番。内田光子の弾き振りだが、クリーブランド管弦楽団の弦と感の優秀さが、ひしひしと伝わってくる。ピアノがまたラブリー。左手のスタッカートの暖かく、俊敏な味わい。右手の旋律の麗しさ。このコンビは長年、モーツァルトを手掛けているが、最新作になればなるほど、完成度が上がり、モーツァルトが、かつて予約演奏会で行ったであろう、音楽的感興とソノリティが目の前で聴けるようだ。

 録音は実にナチュラル。内田光子のピアノは眼前にて微視的に虫メガネで覗くようなものではなく、会場の響きも加わり、少し離れた位置で聴いた感覚。オーケストラとの好適なバランスの中で、密度の高いソノリティが語られる。直接音と間接音が巧みにブレンドされたなかで、清涼に音場が語られる。直接音がホールで間接音を生み出し、手前から奥行きにまで広がっていく様子は耳の快感だ。

 木管の暖かい質感、弦の稠密さという音楽を楽しむにふさわしいテクスチャーが愉しい。活発で、ヴィヴット、そして優しげな音が耳を心地良く撫でる。速いパッセージでの燦めきも、一音一音から発する内田光子ならではの音の神々しさも、倍音感、響きの透明感、濃密な空気感も、すべて素晴らしく上質に再現される。秋晴れの下で聴く、文字通り、天晴れなモーツァルトだ。2016年2月11日-13日、クリーヴランドのセヴェランスホールで録音。

FLAC:96kHz/24bit
Decca、e-onkyo music

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