このページの本文へ

レガシーサイトのマイグレーションに注力するプライム・ストラテジーの戦略

速いだけじゃない!進化する高速WordPressマシン「KUSANAGI」

2016年11月21日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

WordPressのシステムインテグレーションを手がけるプライム・ストラテジーは、高速なWordPress仮想マシンである「KUSANAGI」を中心に、レガシーWebサイトのマイグレーションに注力している。同社の中村けん牛氏と宮崎悟氏にビジネス概況とKUSANAGIの進化について聞いた。

プライム・ストラテジー 代表取締役 中村けん牛氏、クラウドインテグレーション事業本部 MSP事業部 開発課 課長 チーフエンジニア 宮崎悟氏

マルチプラットフォーム対応と常時SSL化で波に乗るKUSANAGI

 プライム・ストラテジーの設立は2002年にさかのぼる。当初からLAMP環境を活用したWebシステム開発を手がけており、OSS関連の書籍やWebコンテンツのライティングでエンジニアの認知度を得るようになる。2008年には自社製だったWebアプリケーションの開発フレームワークをWordPressに切り替え、現在では高速WordPress仮想マシンである「KUSANAGI」を中心に、PHPやMySQL、MariaDBなどのOSSを活用したWebシステム開発やMSPを展開している。プライム・ストラテジー 代表取締役 中村けん牛氏は、「やはりWordPress関連の書籍やメディア、コミュニティのイベントで知っていただくパターンが多い。最近ではKUSANAGIという名前が浸透してきた印象がありますね」と語る。

 同社のコアテクノロジーであるKUSANAGIは、WordPressを手軽に、セキュアに、高速に使えるようチューニングされた仮想マシンイメージで、OSSとして公開されている。LAMP環境で動作するWordPressは柔軟なページ構成が可能な反面、PHPを使うがために応答速度が遅くなりがちという問題があった。これに対してKUSANAGIは、最新のミドルウェアの採用や各種のチューニング、メモリキャッシングの効率化などを用いることで、高速なレスポンスを実現した。同社のクラウドインテグレーション事業本部 MSP事業部 開発課 課長 チーフエンジニア 宮崎悟氏は、「オンプレミス環境、キャッシングなしで検証した場合、応答速度で3ミリ秒、秒間1000リクエストを実現します。チューニングなしのものと比べると、だいたい10倍から15倍速くなります」と語る。

 当初は、こうしたスピードや応答速度を目的に導入されることが多かったが、最近では「常時SSL」という潮流を受けて、セキュリティ強化の目的で導入されることが増えている。「KUSANAGIは無償のSSLサーバー証明書であるLet's Encryptにβ版の頃から対応しています。だから、インストールする時にメールアドレスを指定するだけで、自動的に証明書を取得し、ApacheやNGNXのようなWebサーバーに設定を行なった状態で起動します」(宮崎氏)。もちろん、最新のHTTP/2にも対応しており、高速化やセキュリティ強化に寄与する。

 また、KUSANAGIはマルチプラットフォーム対応が大きな特徴となっている。AWSやMicrosoft Azureはもちろん、IBM SoftLayer(IBM)、さくらのクラウド(さくらインターネット)、ConoHa、Z.com(GMOインターネット)、S-Port(鈴与シンワート)、IDCFクラウド(IDCフロンティア)、cloud(n)(NTTコミュニケーションズ)、ALTUS(GMOクラウド)、NIFTY CLOUD(ニフティ)など、国内のパブリッククラウドの約8割をカバーする。その他、EX-CLOUD(NHNテコラス)、さくらのVPS(さくらインターネット)などのVPS、DockerやVMwareまで対応しており、幅広い環境にデプロイすることが可能だ。ちなみに同社が把握している稼働実績でもっとも多いのはGMOインターネットのConoHaで、AWSが2番目になるという。

全Webサイトの1/4を占めるようになったWordPressのインテグレーション

 KUSANAGI自体はOSSとして公開しているため、プライム・ストラテジー自体はサポートとインテグレーションをサービスとして提供している。「KUSANAGIはすべて標準技術を用いていますし、CentOS 7のサポート期間中はわれわれがすべてアップデートを保証しています。そのため、インハウスで運用も可能ですが、われわれであれば開発元ならではのメリットを活かしたサポートが可能です」と中村氏は語る。

 現在、WordPressのシェアは26%にのぼっており、世界のWebサイトの4つに1つはWordPressという状況だ。「われわれの調査でも国内の中堅・大企業の36%はWordPressを利用しています。以前は個人のブログが多かったんですが、年々エンタープライズ領域が上がるようになっています」(中村氏)。

 こうした市場動向の中、手組みのシステムや複数の業者に外部委託した結果、管理負荷が大きくなったWebサイトをKUSANAGIベースの最新プラットフォームにマイグレーションし、自社で運用まで巻き取っていくのが、同社のコアビジネスになっている。「納品したWebサイトの運用まではやっている制作会社少ないですし、カーネルやWebサーバー、OpenSSLのアップデートを放置したままのWebサイトも多いです。サポート切れているPHP使っているサイトも多くて、正直開けてビックリです(笑)」(中村氏)。

 KUSANAGI自体はグローバルでも展開しており、言語として日本語と英語が選択できるほか、世界で約30カ国のロケールでデプロイできるという。「15~16カ国で利用実績があります。ニューヨークとシンガポール、ジャカルタに拠点があるので、基本的には国内と同じサポートを提供しています」(中村氏)。

「まさか全部移行できると思わなかった」というユーザーの声

 事例としては、読売新聞社やカカクコム、テレビ朝日などメディアサイトが目立つが、実際は東京大学やブリヂストン、JAXAなどのサイトなど幅広く手がけている。最近は自社製ではなく、他社で構築したWordPressサイトをプライム・ストラテジーのマネージドサービスに切り替える例が増えているとのことだ。

「MovableTypeが5個、自家製のCMS、静的なページが延々にあるポータルサイトのマイグレーションのときは、正直データベースを見ても、どのファイルが使われているのかまったくわからなかった。だから、そのときは48時間くらいかけて、サイトの外側からクローラーを這わせて、全部スクライピングで持ってきた。目視で100パターンを定義して、データを整形し、2万記事くらいをWordPressに入れました。『まさか全部移行できるとは思わなかった』とお客様に言われましたよ(笑)」(中村氏)

 まさに力仕事。しかし、移行に成功したところは概してトップダウンで話が進むところだという。「官公庁や自治体とかは特にそうですが、1つの部門や部署だけやっても、なかなか話がまとまらない。トップが組織全体を変えるという決断を下すと、けっこうスムースに行きますね」と中村氏は語る。ちなみにパブリッククラウドでもベンダーによって導入主体の傾向は異なるという。「Azureの場合は現場よりもトップの意向で進むことが多く、AWSは現場から話が持ち上がる場合が多いので、社内調整に時間がかかる傾向があります」(中村氏)という。

Concrete5やDrupal、Zabbixも動く高速LAMP環境へ

 もともとKUSANAGIはWordPress前提に作られていたが、最新バージョンの8.0ではWordPressをインストールしないデプロイも可能になった。これにより、WordPressに限らず、concrete5やDrupalなどのCMSも利用可能になり、幅広いLAMPアプリケーションをインストールすることができるようになった。

「もともと動的なWebページを生成する環境として市場のニーズが高いWordPressが必要でしたが、高速でセキュアなLAMP環境が欲しいというのはほかのCMSでも同じです。KUSANAGIもWordPressを外して、コンフィグを書き換えてほかのCMSを入れれば済むんですが、今回は最初からプロファイルを用意して、CMSを選べるようにしました」(中村氏)

 CMS以外にも監視ツールとして人気の高いZabbixも動かせる。「Zabbixはグラフなどを動的に生成しているため、PHPの速度が重要になってきます。しかもグラフが多いので、HTTP/2の並列ダウンロードも効いてきます」と宮崎氏は語る。キャッシングの恩恵を受けにくいEC系のツールも、KUSANAGIのPHP環境で高速にWebページを生成できるようになるため、メリットが大きいという。

カテゴリートップへ

ASCII.jp特設サイト

クラウド連載/すっきりわかった仮想化技術

ピックアップ