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自社開発アプリにSASのアナリティクスエンジンを組み込める次世代プラットフォーム

インメモリ解析能力をオープンに提供する「SAS Viya」第一弾製品

2016年11月02日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 SAS Institute Japanは11月1日、アナリティクス新製品「SAS Visual Data Mining and Machine Learning」の国内提供を開始した。この製品は、SASの次世代アナリティクスプラットフォーム「SAS Viya」上で利用できる第一弾製品となる。同日の説明会では、SAS Viyaとは何か、その狙いは何かを中心に、同社プロダクトマネジメント担当VPから説明がなされた。

SAS Institute プロダクトマネジメント担当VPのライアン・シュミーデル(Ryan Schmiedl)氏

Viyaはインメモリアナリティクスエンジンを提供するプラットフォーム

 説明会冒頭、SAS Institute Japan 代表取締役社長の堀田徹哉氏は「SAS Viyaは、これまでのSAS製品の考え方を根底から変えていくプロダクトになる」と挨拶した。そのViyaとはどんなものなのか。

 Viyaは、マイクロサービスアーキテクチャで開発されたインメモリ/分散並列アナリティクスのためのプラットフォームであり、柔軟なスケールアウト性により、大規模なデータセットも高速に処理できるのが特徴だという。具体的なソリューション/アプリケーションは、このViyaプラットフォーム上で、Viyaが備えるアナリティクスエンジンやデータ管理、ビジュアライズなどの機能を活用して開発されることになる。

SAS Viyaのアーキテクチャ(概念図)

 旧来のプラットフォームとの違いとして、Viyaプラットフォームはクラウド(パブリッククラウドを含む)への展開が可能なほか、分散並列アーキテクチャによって大容量データの高速なアナリティクス処理を実現している。また、オープンプラットフォームを標榜しており、従来からのSAS独自言語だけでなく、Java、Python、Luaといった汎用プログラミング言語によるアプリケーション開発も可能だ。そのほか、REST API経由でさまざまな外部アプリケーションから、Viyaのアナリティクスエンジンを活用することもできる。

SAS Viyaプラットフォームの特徴。スケールアウト可能な分散並列処理アーキテクチャを備え、クラウドにも対応、そしてSAS独自言語だけでないオープンなアプリケーション開発環境を提供する

 こうした特徴を持つプラットフォームを提供することで、従来のSASアナリティクス製品が対象としてきたデータサイエンティスト、データアナリストだけでなく、アナリティクス機能を活用したアプリケーションを開発したい、ソフトウェア開発者も新たなユーザーとして取り込んでいく狙いだ。SAS自身の提供するマネージドクラウドサービス、さらにはパブリッククラウド上での提供も検討していくという。

Viyaを中心に、データサイエンティスト/アナリストだけでなく、ソフトウェア開発者も取り込んで行く狙い

 堀田氏は、特に日本市場ではSIベンダーによるカスタム開発アプリケーションが多く、そうした市場のなかでSASのアナリティクス能力を活用したいという需要は強いのではないかと指摘。API経由でそれが簡単に利用できるViyaの「日本における本質はそこにあるのでは」と語った。

従来のSAS 9プラットフォームとViyaは併存していく

 また、IoT環境などにおけるデータストリーム処理のために、エッジデバイス上にViyaを配置し、そこで一部の処理を実行するようなアーキテクチャも実現していくという。

 ただしシュミーデル氏は、従来から提供してきたアナリティクスプラットフォームである「SAS 9」(最新版は9.4)についても、引き続き開発投資を行い、提供やサポートを継続していくと述べた。SAS 9とViyaは並行して開発、提供され、顧客が両プラットフォームを導入し、用途によってそれを使い分けるケースもありうる。

 なお、Viyaが備えるアルゴリズムの基本セットはSAS 9と同じであり、両者間でデータや予測モデル、コードは連携が可能となっている。また「SAS/CONNECT」ツールを使うことで、SAS 9上のデータセットにSAS Viyaから直接アクセスしたり、Viyaにデータを移行したりすることも可能だと、シュミーデル氏は説明した。

 「(現行のSAS 9ベース製品のViyaへの)製品統合の方法についても検討していく。たとえばSAS Enterprise Minerも、SAS 9とViyaのスタックをまたいで使えるようなかたちを今後検討していく」(シュミーデル氏)

 現在のところ、Viyaプラットフォーム対応のSAS製品は、今回国内提供を開始したSAS Visual Data Mining & Machine Learningに加え、米国で発表済みの「SAS Visual Investigator」(2017年初旬の国内リリース予定)の2製品のみである。ただし、ViyaのWebサイトには、現行製品ある「SAS Visual Statistics」や「SAS Visual Analytics」「Analytics as a Service from SAS」のViyaプラットフォーム版も「近日登場」とアナウンスされており、従来のSAS 9プラットフォーム製品が段階的にViya対応していくものと予想される。

 なおシュミーデル氏は、今後のViya/SAS 9.xにおける強化点として「コグニティブコンピューティング」機能を挙げた。従来製品でも機械学習機能を提供してきたが、今後はさらに「イメージ認識」や「自然言語認識/解析」といったコグニティブ能力も備えていく方針で、現在、研究開発を行っている最中だという。

従来から備える機械学習機能に加え、イメージ認識や自然言語処理などのコグニティブな能力を持たせ、より幅広いユーザー/用途で活用しやすくする方針

Viyaベースの第一弾製品は予測モデリング/機械学習を高速に処理

 今回の新製品であるSAS Visual Data Mining & Machine Learningは、Viyaのインメモリ/分散並列型アナリティクスエンジンを活用し、予測モデリングや機械学習の処理を高パフォーマンスで実現する製品となる。

 同製品では、データをインメモリに保持するため、反復的な分析や複数ユーザーによる同一データ探索も高速に処理される。発表によれば、分析モデリングの処理時間は「数分、または数秒」に短縮されるという。

SAS Visual Data Mining & Machine Learningの画面(ニューラルネットワーク図)

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