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アスキーエキスパート第17回

各地に広がる、オープンイノベーションを活用したリノベーション

2016年11月03日 09時00分更新

文● 井田広之/アスキーエキスパート

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国内の”知の最前線”から、変革の先の起こり得る未来を伝えるアスキーエキスパート。鳥取県庁の井田広之氏による地方都市でのオープンイノベーションについての最新動向をお届けします。

※2016年10月に、筆者の住む鳥取県の中部で、大きな地震が起こりました。幸い、テレビなどで報道された大きな被害を受けた地域・建物はごく一部で、現在では、県内の観光地は通常どおり営業しています。皆様がこれまでどおり鳥取県に遊びに来てくださるのが復興に向けた大きな励みになります。どうぞよろしくお願いします。

 リノベーションという言葉を筆者が耳にするようになったのは、ここ2、3年前くらいからだ。定義は様々だが、筆者は“古い建物を改修し、新たな価値を生み出すこと”と捉えている。

 首都圏在住の30~50代を対象に行なわれた最近の調査(amidus株式会社)によると、リノベーションという言葉について意味も含めて知っていると答えたのは約40%で、多くの人が「こだわりが発揮できる」、「ローコスト」、「個性的」といった好意的なイメージを抱いている。

 また、住宅リフォーム関連の調査結果(富士経済グループ)によると、リノベーションの国内市場規模は、2015年度で見込み1370億円(前年比約5.4%増)、2018年度で1650億円の予想と拡大傾向にある。前述の好意的なイメージも貢献しているのだ。

オープンイノベーションを活用したリノベーションの動き

 一方、地方などで増えつつある空き家や空きビルをリノベーションによって再生させ、自分たちのまちや暮らしを自分たちの手でデザインしていこうという“リノベーションまちづくり”という動きがある。そして、これを実際に実現していく場のひとつとして、“リノベーションスクール”というプログラムが国内の各地に広がりつつある。

 このスクールは、空き家などの有効活用したい具体的な物件を持つ不動産オーナーに対し、多様なバックグラウンドを持つスクール参加者がチームを組み、建築分野などの第一線で活躍する方々のサポートを受けながらリノベーションプランを短期集中で作成して提案するものだ。提案の結果、オーナーからゴーサインが出ればプランを実行に移して事業化し、まちや暮らしを自分たちの手で少しずつ変えていくのである。

 2011年に北九州市で始まり、最近では国内の各地で開催されており、これまでスクール開催を通じて、カフェ、ゲストハウス、コワーキングスペースなど、20件以上が事業化されたという。

 筆者の住む鳥取県内でもまちづくりに熱い想いを持つ人々の奔走により2014年から毎年開催されており、スクールから以下のような事例も生まれている。

ブック・カフェ“ホンバコ”

 鳥取市のまちなかにあった元喫茶店を“本を介して人とまちがつながる”ブックカフェとして再生するリノベーションプランを不動産オーナーに提案し、スクール受講生のひとりであった岡田良寛氏が店長に名乗り出て事業化を実現した。街の人々が持ち寄った本が置かれているくつろぎの空間には多くの人が訪れる。

まるにわプロジェクト

 かつて多くの遊具があり親子連れでにぎわった、鳥取駅前の老舗百貨店“鳥取大丸”の屋上を、みんなが活用できる市民の庭に生まれ変わらせるプラン。地元銀行勤務との二足のわらじをはく齋藤浩文氏がリーダーとなり、ワークショップ等を通じ住民の手づくりで準備を進め、2016年11月にグランドオープン。

 これらが特徴的なのは、スクールに参加する多様なバックグラウンドを持つ人々の知恵が事業プランに結集されること、また参加者に加え、スクールの関係者や、地元メディアのニュースなどで知った地域の人々に、開業の前からプランを認知してもらい、ファンや応援団を増やしつつスタートできるということがある。従来からの関係者である不動産オーナーや建築関係者に加えて、多様で多くの人々が共創するプロジェクトとなり、まちの変化へと繋がって行きやすいのである。

 スクールを通じたリノベーションまちづくりというのは、地域のオープンイノベーションが実際に行なわれている現場と言える。

IoTがリノベーションの可能性を広げる

 さらに、最近注目されているIoT(Internet of Things)は、住宅分野でも多様な展開が期待されている。これは暮らしの空間や建物にはさらに有効活用できる余地があることを提案するものであり、空き家や古いビルをいかに活用するかという制約のあるリノベーションとも親和性が高い分野ではないだろうか。

 学生ベンチャーを立ち上げた後、ソニーや楽天の執行役員として活躍しシリコンバレー在住の起業家・本間毅氏は、“HOMMA”を立ち上げ、住宅にはイノベーションの余地がまだたくさんあるとして、世界を相手にしたスタートアップを始めるなどの動きもある。

 ちなみに、本間氏は鳥取県出身でもあることから、地元鳥取県や地方のリノベーションまちづくりなどとも何らかのコラボが生まれたらおもしろくなりそうだと筆者は妄想している。

 筆者は2016年11月に鳥取県で開催されるリノベーションスクールに、参加する機会を得た。地元や全国から来る多様な参加者とチームとなることで、どんな価値が生み出せるのか、今からワクワクしている。オープンイノベーションの現場に当事者として関わりながら、鳥取県や他の地方の活性化の役に立てれば幸いである。

■関連サイト
とっとりとプロジェクト

井田広之(いだひろゆき)

著者近影 井田広之

全国の生活者と鳥取県の企業が新商品を共創する「とっとりとプロジェクト」で、全国知事会「先進政策大賞」、日本デザイン振興会「グッドデザイン賞2015」を受賞。最近では、日本一に輝いた鳥取の美しい星空と宇宙をテーマに地域経済活性化を目指す「星空県」構想を提唱し、民間月面探査チームとのコラボもスタート。
経済産業省プログラム「始動Next Innovator」第1期生。中小企業診断士。神戸大学経営学部卒、山陰合同銀行を経て、鳥取県庁にて産業振興分野を10年担当。

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