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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第380回

業界に痕跡を残して消えたメーカー IDEと栄枯盛衰を共にしたPromise

2016年10月31日 11時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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 前回のAdaptecの対抗といえば、Symbios Logic Incが思い出される。

 NCR Corporationの1部門としてSCSIコントローラーの開発を始めるが、AT&TによるNCR Corporationの買収にともない、同部門はHyundai Electronicsに売却。Symbios LogicとしてHyundaiの傘下でビジネスを継続するものの、同部門は1998年にLSI Logicに売却。

 LSI Logicは別に買収したSyntax SystemsとSymbiosを合併させてLSI Storage System(後にEngenioに改称)を形成するが、これも2011年にNetAppに売却、ということで流転の運命をたどっているが、53C810という型番に記憶のあるユーザーも多いだろう。

 これよりだいぶ知名度が落ちるものとしてはTekram(実はまだ会社があり、SCSI HBAを販売している!)や、QLOGIC(こちらも会社はあるが、SCSI HBAからは撤退)といったあたりは比較的メジャーだろうか。

 細かいところでは富士通もSPC(SCSI Protocol Controller)という名称でいくつかSCSIコントローラーを出している。他にも何社かSCSIコントローラーを製造・販売しているが、Adaptecに対抗できるほどの規模で製造・販売をしていたメーカーは存在しない。

 ということで今回は、Adaptecと同じく規格標準化の初期に製品を投入、圧倒的なシェアを握りつつもその規格の衰退に合わせて見事にシェアを失ったPromise Technologyを紹介したい。ただAdaptecと異なり、同社はいまだに健在である。

IDEコントローラーで
75%ものシェアを獲得

 Promise Technologyは現在は台湾の会社として認知されている。というより、実際台湾の会社であるのだが、創業そのものは米国である。1988年にサンノゼで創業され、Promise Taiwanが開設されたのは3年後の1991年となっている。

 ただ新規公開株式は米国でなく台湾証券取引所で行なっており、現在も台湾以外には上場していない関係で、一般には台湾の会社とされる。

 もっとも1997年頃の同社のページでは、本社はサンノゼにあると記されており、2001年にはミルピタスに移動、現在は台湾の新竹に置かれているので、どこかで本社を移動したのだろう。

 Promise TechnologyはIDEに特化した会社だった。創業3年後の1991年、同社は世界初のキャッシュ搭載IDEコントローラーを発売する。DC100/200/300というシリーズで、このうちDC300は秋葉原にも入ってきていた。というより筆者も持っていた。

 これは一見普通のISAハーフサイズのIDEカードなのだが、30ピンSIMMスロットが確か4つ用意されており、ここに自分でメモリーを増設することでディスクキャッシュとして利用できるという画期的な製品だった。

 ただこの初期のDC300の場合、ファームウェアがアップデートするたびに対応するHDDの種類が減っていくという謎の進化(退化?)を遂げていた製品ではあるが、それでもキャッシュ付IDEコントローラーは当時他にはなく、なんだかんだ言いながら筆者も長期間使った記憶がある。

 1992年には、SIMMが2枚に削減された廉価版のDC99も発売されていた。その1992年には、上位モデルであるDC2031も投入された。

キャッシュ搭載IDEコントローラー「DC99」。Promiseの直販ではなく代理店経由での販売だった

 この当時のPC Magazineのレビューを見ると、多くのメーカーがi486DX/50MHzのマシンにDC2031を組み合わせる形で出荷している。DC2031のキャッシュは標準が4MBで、最大16MBまで拡張可能だった。

これはAce Cache 486/WB/50というマシンのレビュー。PC Magazineのこの号はi486DX/50を搭載したマシンの一挙レビューという号で、他にもいくつかのPCがDC2031を搭載している

 ちなみにDC2031は下の画像のように、1本のIDEコネクターと4本のSIMMスロットをもつ「だけ」の製品だが、上位モデルのDC2030は、合計16本ものSIMMスロットを持つお化け製品だった。

「DC2031」。J1がIDE、J2/J3はFDDのコネクターである

上位モデルの「DC2030」。J1/J2はメモリー拡張カード用のコネクター、J3がIDE、J5がFDDでJ4はマザーボード上にIDEコネクターがあった場合にそれをつなぐためのものとされていた

J1/J2はメモリー拡張カード用のコネクター(表裏貫通だろうか?)。12本のSIMMスロットが壮観である

 このDC2030/2031に搭載されたVan Goghと呼ばれるVESA IDEコントローラーは、OEM市場で75%ものシェアを獲得するに至る。

 当時はまだチップセットにIDEコントローラーは内蔵されておらず、もしマザーボードベンダーがIDEコントローラーを搭載したいと思ったら、なにかしらチップを購入する必要があり、ここにVan Goghが入った形だ。

 ただ当時はまだオンボードのIDEは一般的ではなく、拡張カードの形でIDEコントローラーを搭載するのが普通で、ここに向けてさまざまなカードが出ていたが、この市場でもPromise純正以外にさまざまなカードにVan Goghが搭載されていたというわけだ。

 翌1993年にはEIDE(Enhanced IDE)の規格が一般的になった。EIDEは標準的な規格があるわけではなく、従来のIDEにLBA(Logical Block Addressing)やCHS/LBAロランスレーション、ATAPIのサポート、FAST ATA-2の転送モードなど、さまざまなIDEへの拡張機能を含んだ総称だ。

 HDD側ではLBAのサポートやCHS/LBA Translation、FAST ATA-2のサポートを、確かWestern Digitalが率先して行ない、他のHDDメーカーもこれにすぐさま追従したと記憶しているが、コントローラーの側でこれに最初に対応したのがPromise Technologyだった。

 やや後になるが、Promise DC4030VL-2にこのEDIE対応コントローラーが搭載されていた。こちらもVan Goghの後継ということで、さまざまなOEM向けにも幅広く採用されることになった。

DC4030VL-2ということは、初代のDC4030VLも存在したのだが、あいにく写真が見つけられなかった

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