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麻倉怜士のハイレゾ真剣勝負 第6回

【麻倉特薦】ほかに、ハープ&ギターユニット「tico moon」など

スウェーデンBIS、栄光レベルに音がいい小川典子のサティ

2016年10月29日 12時30分更新

文● 麻倉怜士(Twitter:@ReijiAsakura) 編集●HK(ASCII)

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 評論家・麻倉怜士先生による、いま絶対に聴きたい“ハイレゾ音源”集。10月の特薦は小川典子によるサティのピアノ独奏曲全曲録音や、ハープとギターのユニット「tico moon」のアルバムなどをピックアップ。秋の夜長にじっくりと耳を傾けたい音源が揃いました。各解説の下には配信形式も併記していますので、環境に合ったものをダウンロードしてみてください。ハイレゾ音源入門にもオススメです!

Satie: Piano Music, Vol. 1
Noriko Ogawa

特薦

 小川典子による話題のサティのピアノ独奏曲全曲録音。使用楽器は1890年製エラールピアノ。サティと同時代のピアノだ。スウェーデンのBISは、優秀録音を多くものしているが、本ピアノソロアルバムも、栄光のラインナップに加えられよう。まさに眼前の峻烈録音。

 サティの音楽は右手がシンプルなメロディを弾き、左手もあまり複雑ではない和声で寄り添う曲が多いが、本ピアノ演奏は音域によって表情を変える。右手の高域のメロディは、ブリリアントで天を舞うように躍動的、切れ味がシャープ、響きがカラフルでまさに主役だ。一方、左手は音像的にもやや奥に位置し、無彩色的で、主役を文字通り裏方で支えるバイプレーヤー。演奏的にも、曖昧なパリのエスプリ的なサティではまったくなく、明晰で同時に人間的なエモーションが色濃い。旋律の高貴さに感動。録音は2015年8月から9月、東京音楽大学スタジオ。

WAV:96kHz/24bit
FLAC:96kHz/24bit
BIS、e-onkyo music

ワンダーランド
アリス=紗良・オット , バイエルン放送交響楽団 , エサ=ペッカ・サロネン

特薦

 アリス=紗良・オットの演奏は、ベルリンでのグラモフォン・コンベンションで、親しく接した。本アルバムのタイトル「ワンダーランド」に掛け、「私はアリスだからワンダーランド」とまず笑いを取ってから、グリーグの抒情小曲集第3巻作品43「蝶々」を演奏。繊細で、すがすがしく、飛翔のヴィヴットさに感動。実に透明なピアニズムだった。その後、ショパン・ノクターンの憂愁と、ラ・カンパネラの色彩爆発の対比にさらに感動。

 というわけで、生を聴いた後のハイレゾだ。ピアノ協奏曲イ短調はピアノの些細な表情の変化が捉えられ、オーケストラもひじょうに解像度が高い。オーケストラとピアノのバランスも好適だ。ソロピアノの音も素晴らしい。ディテールまで繊細に、そして尖鋭だ。ペールギュント「山の魔王の宮殿」の透明感の高い音色での、クールで闊達な音進行も刮目だ。無限のハーモニーが飛び散るよう。2015年1月と2016年4月にミュンヘンとベルリンで録音。

FLAC:48kHz/24bit
Deutsche Grammophon、e-onkyo music

BIRDLAND
M.Sasaji & L.A.Allstars

特薦

ジャズピアニストでプロデューサー、作曲家、編曲家の笹路正徳氏をリーダーに戴くビッグバンド、L.A.Allstarsの豪快なジャズスタンダード集。DSDジャズとして名盤の誉れが高いアルバムだ。

編曲も笹路氏。ロサンゼルスの一流スタジオミュージシャンだけあり、実に爽快で緻密な演奏。鮮烈な音と鮮烈なジャズだ。1曲目タイトルチューン「バードランド」。快適なノリとテンポ感で音楽が進行。序々に編成を増やしていくが、リズム的にも、また音的にもまったくだれないのは、ミュージシャンの優秀さと、DSD録音の高性能さのかけ算だ。

一般にDSDはジャズに似合わないとされるが、いやいや、本作品の音的な充実度と、音楽的なボキャブラリーの豊富さは、DSDが本来持つ表現力に大いに由来していることが、聴くと分かるのである。4曲目「マイ・フェイバット・シングス」は明確なステレオ効果と共に、音場感が立体的だ。楽器の直接音が鮮烈なだけでなく、DSD的な豊潤な空気感もリッチだ。2000年にDSDマスターレコーダーにて録音。

DSF:2.8MHz/1bit
Sony Music Direct(Japan)Inc. e-onkyo music

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