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GMや大手製薬会社との提携発表、「IBM World of Watson 2016」レポート

IBMロメッティ会長「Watsonは人間の仕事や創造性を奪わない」

2016年10月28日 07時00分更新

文● 鈴木恭子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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吸入器からデータ収集、ぜんそく発作を未然に防止する――テバ

 Watsonの導入で効果を挙げている分野の1つが、医療/製薬だ。テバとの提携では、ぜんそく発作を未然に防止するプロジェクトを共同で研究すると発表した。

 すでにテバはWatsonを導入し、新薬の開発に役立てている。一方、今回の提携は別分野で、「医療関係者、患者さんとその家族を包括的に支援する」(ロメッティ氏)ものになるという。

 そのシナリオはこうだ。患者は、ぜんそくの吸入器とテバが開発した専用モバイルアプリとを連動させ、吸入器を「いつ」「どのくらいの頻度で」利用したかといったデータを記録する。この専用アプリは、医療分野に特化した「Watson Health Cloud」を利用しており、医師の知見とWatsonのコグニティブに基づき、吸入器の利用状況に応じて薬の服用を指示したり、アドバイスをしたりする。緊急の治療が必要となった場合には、患者のいる場所や時間に応じて診察可能な病院を案内するといった機能も持つ。今後はさらに、ぜんそくだけでなく、中枢神経系疾患などの慢性疾患を持つ患者向けの発作予防アプリへと水平展開していく計画だという。

ぜんそく発作を未然に防止するプロジェクトで開発が進められている専用アプリの画面(開発中のイメージ)

 このプロジェクトで興味深いのは、ぜんそく吸入器のデータに加えて、IBM傘下の米ウェザーカンパニー(Weather Company)が提供する気象データも組み込んで分析の対象としていることである。ゲスト登壇したテバ会長のアイザック ピーターバーグ(Yitzhak Peterburg)氏は、「患者にとっては天気や気温など、あらゆる外的要因が発作の原因になる。同プロジェクトの目的は、単に(ぜんそくの)発作を防止するのではなく、患者の生活の質(QOL:Quality of Life)を上げるものだ」と力説する。

 重篤な症状が出る前に対処できれば、患者にとっては医療費の削減にもなる。ピーターバーグ氏は、「今回のプロジェクトは、患者さんのQOLを向上させる取り組みの一歩に過ぎない。目指すゴールは(患者さんに)『薬』ではなく、(健康維持のための)総合的な『治療ソリューション』を提供することだ」とコメントし、今後もIBMとの協業関係を強固にしていく姿勢を示した。

テバ会長のアイザック ピーターバーグ(Yitzhak Peterburg)氏(左)

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