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40万円台のネットワーク対応製品を市場投入

新生ティアックが目指すのは、本物の“音作り”

2016年10月20日 09時00分更新

文● 折原一也 編集●ASCII

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 ティアック(TEAC)は10月19日、都内で新製品発表会を開催し、新ブランド戦略“NEW VINTAGE”をキーワードにしたオーディオ機器を展開していくと発表した。

 <NEW VINTAGE>とは、時代と感性に寄り添い、質と芸術性を兼ね備えた本物のオーディオ機器を作るという情熱と哲学を表したキーワード。ティアックが4月より開始した「リアクティベーション」(ブランド再生)の一貫となる。

 発表された製品はハイエンドオーディオ機器の新ブランド“Reference 7”シリーズのネットワーク対応、CD再生、プリメインアンプの「NR-7CD」、オールインワン・ネットワークコンポの「WS-A70」だ。

ティアックが同社の新製品を発表するティアック株式会社新製品発表会を開催

ネットワークCDプリメインアンプの「NR-7CD」

オールインワン・ネットワークコンポ「WS-A70」

 新製品発表にあたって、代表取締役社長の英裕治氏が登壇した。

 「当社は今年で創業63年になり、高度成長期から、オーディオ不況期までを生き抜いてきた数少ないメーカー。オーディオ市場はかつて4000億円の規模だったが、今や1500億円となり、そのほとんどがポータブル市場となった。オーディオ機器が衰退していった背景には、業界がオーディオの本質を忘れ数を追い生産や開発まで韓国や中国に丸投げしていったことがあったと思う。ティアックは今なお生き続けていますが、メーカーはものづくりの本質を忘れてはいけない」

 とコメント。さらにティアックというブランド再生へのメッセージを語った。

 「ティアックは100人のうち100人のお客様が満足するものを作ってはいけないと従業員によく話をしている。90人が満足しても10人が満足しないなら、その10人の意見を聞いてものづくりに役立てろと話をしている。木を見て森を見ずと良く言いますが、我々は森ではなく木をみないといけないと言っている。そして、今年より企業理念の見直しを進めていて、ティアックは本気でもう一度ものづくりをするということを伝えていく」

ティアック株式会社代表取締役社長の英裕治氏

<NEW VINTAGE>をキーワードとしたネットワークプレイヤー2機種

 続いて同社の音響機器事業部コンシューマオーディオビジネスユニット長の大島洋氏が <NEW VINTAGE>のコンセプトを解説。

 ハイレゾ、Spotifyといったトレンドとともにに、アナログプレイヤーのブームが再来、さらにはYouTubeやニコニコ動画といった動画配信まで音楽を聴く楽しみが拡大するとともに、ハイレゾ市場が4倍にまで拡大していることを解説。ティアックのブランドについてはティアックの製品は安いものも作っているがブランドイメージを毀損してしまっているし、ユーザーも高齢化が進んでいると指摘。

 そんな現状から立ち返るために、<NEW VINTAGE>のコンセプトがまとめられたという。

 <NEW VINTAGE>のコンセプトについては、ティアックの創業者である谷勝馬氏の言葉を引用し、時代と感性に寄り添い、質と芸術性を兼ね備えた製品を求めるブランドとなったという。

 日本のものづくりに焦点を当てたものづくりとすると共に、今だからできる事としてハイレゾとネットワーク再生に対応するという、ティアックの<NEW VINTAGE>のコンセプト紹介した。

ティアック株式会社音響機器事業部コンシューマオーディオビジネスユニット長の大島洋氏

 新製品発表会では特別ゲストとしてデジタルメディア評論家の麻倉怜士氏が登壇し「新生ティアックに期待する」のテーマで講演した。ティアック遍歴を紹介しながら「私の中のティアックは、かつてはたいへん良い、質実剛健の信頼感があるものだった。これは数十年前のイメージだが、最近はラジカセなど変なものも多く、がっかりするものばかりでした。一方、ティアック子会社のエソテリックブランドの音は素晴らしく、音楽の感動性も高い。更に業務用機器で定評のあるタスカムブランドのノウハウを入れれば、きっとティアックのブランドも良くなるでしょう」とティアック新生の期待を語った。

デジタルメディア評論家の麻倉怜士氏

 続いてティアック製品を愛用しているティアックサポーターとして雑誌「POPEYE」「BRUTUS」「ターザン」の創刊を手掛けた石川次郎氏、ギタリストで音楽プロデューサーを手がける関口シンゴ氏も登場。

 石川次郎氏は、ティアックのLPレコードプレイヤーユーザーとして仲間を集めて死蔵していた秘蔵のLPレコードを聴くイベントを開いたエピソードを披露。LPレコードと共にハイレゾも切り替えてシステムも仲間に教えているという。

 関口シンゴ氏はLPのターンテーブルとH101のユーザーとして「ギターなど音楽制作でモノが多い部屋のなかでも、H101はコンパクトでも自分の想像を超える音を聞かせてくれます」とティアック製品の音の良さを語った。

石川次郎氏

関口シンゴ氏

 イベントの最後にはテープレコーダーでアンサンブル演奏を行う3人組ユニット「オープンリールアンサンブル」によるティアック製オープリンリール、そしてティアック秘蔵のオープンリールテープを使った演奏も披露された。

「オープンリールアンサンブル」による演奏も披露

Reference 7ブランドの「NR-7CD」

 新ブランド「Reference 7」の初の製品として投入されるモデルがハイエンドのネットワークCDプリメインアンプの「NR-7CD」だ。

 ティアックがハイエンド・オーディオやプロオーディオ製品の開発で培ってきたハイレゾ再生のノウハウが投入されたモデルで、ネットワークプレイヤー、音楽CDの再生、そしてBluetoothによるワイヤレス再生までも一体化。

ハイエンドのネットワークCDプリメインアンプの「NR-7CD」

ティアック株式会社マーケティング本部の寺井翔太氏

 新製品を紹介したマーケティング本部の寺井翔太氏によると「NR-7CD」には社内に30人いる「ゴールデンイヤー」により音決めが行われ、ティアックならでの高音質設計を採用している。

 製品は「63年貫いたジャパンクオリティ」として東京・青梅の工場で同社の高級オーディオ・エソテリックと同じ工場で生産している。

 「NR-7CD」のデザインは、ビンテージオーディオと新しさを融合させた、<NEW VINTAGE>を体現したデザイン。フロント中央のCDプレイヤー部と共に、左右に独立したアナログメーターを搭載する。

 CD再生部についてはティアックが自社製の業務用機器にも採用されているオーデイオ用のドライブを搭載する。

左右に独立したアナログメーターを搭載したフロントパネル

 ハイレゾ再生の基本となるネットワークプレイヤーの機能は、OpenHome互換の再生機能を搭載。ハイレゾ音源はDSD5.6MHz、PCM192kHzまでのフォーマットに再生に対応、NR-7CD向けには再生アプリの「TEAC HR Streamer」も用意されてる。

 音楽CDの再生やBluetoothからの音源再生には、独自のハイレゾアップコンバート回路「RDOT-NEO」の搭載によりすべての音源を最大でDSD12.2MHz、PCM384kHzにまでアップコンバートして再生する。

 Bluetoothからの音源再生は、SBC、AAC、aptXの他に、ソニーが開発したハイレゾ音源の伝送が可能な「LDAC」のコーデックにも対応。ソニー以外の製品で「LDAC」対応製品は初で、ウォークマン等の対応機器との間でハイレゾ級の高音質で伝送できる。

「NR-7CD」の背面部

 プリメイン部の構成にはICEpower社製Class-Dステレオパワーアンプ50ASX2をBTL構成でL/Rch独立で搭載し、140W+140W(4Ω)の最大出力を実現する。D/A コンバーターからプリアンプ、パワーアンプまでL/Rchの基板をシンメトリーに配置したデュアルモノ回路構成「Full Stage Dual Monaural Differential Circuit」で設計され、L/Rch 相互の干渉を徹底的に低減することでチャンネルセパレーションを向上させている。回路は全段フルバランス伝送で信号経路でのノイズの影響を受けにくい回路となっている。

 2017年1月下旬の発売が予定されており、希望小売価格はオープンプライスだが42万円前後を予定している。

オールインワンネットワークコンポ「WS-A70」

 もう一つの<NEW VINTAGE>製品は、オールインワン・ネットワークコンポ「WS-A70」だ。

オールインワン・ネットワークコンポ「WS-A70」

一体型コンポながらティアックの高音質技術を投入

 「WS-A70」はワンボディのネットワークプレイヤーで、コンセプトは「木」と「布」をテーマにしたモデル。筐体はウォールナット突き板仕上げのキャビネットを採用。デザイナーの須藤玲子氏の展開する「NUNO」というブランドとコラボレーションし、部屋や季節感、音楽に合わせて布のフロントグリルは季節や好みにあわせて着せ替えられる作りとなっている。

フロントグリルを取り付けた「WS-A70」

交換可能なフロントグリル

 「WS-A70」の音質についてもティアックのゴールデンイヤーが音質設計に担当。スピーカー部の設計は130mmと25mmの同軸スピーカーを2基で背面にパッシブラジエーターを2基搭載した構成で、出力50W+50W ICEPower社製のクラスDアンプで駆動し、高音質にもこだわり抜いた設計だ。

・25 2基のスピーカーユニットと背面にパッシブラジエーターを搭載

 本体にはWi-Fiを内蔵し、ネットワークによる5.6MHz DSDおよび192kHz/24bit PCMのハイレゾ音源、アップルのAirPlayの利用にも対応。Bluetoothによる再生は、ソニーの開発したハイレゾ音源を伝送する「LDAC」もサポートしている。

 発売時期は2017年春を予定しており価格は未定。

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