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来場者が増えたCEATEC 変化の兆しに見えたおもしろさ

業界、大手、ベンチャーそれぞれの新たな動きに注目

 CEATECは変わった。そこには変化のきざしがあった。

 10月7日(金)に閉幕したCEATECだが、最終的には648の出展社/団体(昨年比22.0%増)と14万5180人の来場者数(昨年比9.1%増)となった。目標だった15万人には及ばなかったが、14万5000人を超えた入場者数には、新しい何かを求めてきた人がいて、それを外部に示せた証でもある。

 そもそも、今回のCEATECでもっとも大きな取り組みとしてあったのは、IoT(Internet of Things)、CPS(Cyber-Physical System)の取り組みだ。CEATECのグローバル発信も含めて、IoTの国際連携が大々的に発表されていたが、展示会場も含めてそこには変化があった。

オープニングレセプションには、安倍晋三内閣総理大臣も出席した

IoTでの大きな潮流とハードウェアベンチャーの活気

 IoT/CPS関連では、国家を超えた産業レベルの取り組みから、各企業での取り組みまで、大小さまざまな取り組みや展示が見られた。

 大きなところでは、約2400の会員企業が集まる日本のIoTの産官学の枠組みである“IoT推進コンソーシアム”は、米国の“インダストリアル・インターネット・コンソーシアム(IIC)”と“オープンフォグコンソーシアム”の2つの団体と覚書署名式を行なった。

 ここで目指されるのは、日本のIoT市場のグローバル化であり、プラットフォーム形成や標準化を見据えたガラパゴスではない国際連携を目指した動きだ。標準化連携や情報連携、テストベッドでの実証など、グローバルな両組織と協力していく枠組みが示された。合わせて発表されたCeBITとCEATECの連携では、ドイツが打ち出している「インダストリー4.0」との連携が想定される。

 IoT関連のベンチャー、スタートアップ側での取り組みでは、スマートホームとモビリティのビジネスマッチングであるIoT Lab Connectionのほか、インド、イスラエル、ASEAN企業と日本企業のマッチングが行われるなど、これまでの家電ショーではなかった新たな試みが見られた。

 IoT関連のビジネスマッチングや連携の取り組みのほか、実際の展示ブースはどうだったのか。

 100社以上がブース出展した“ベンチャー・ユニバーシティ”エリアでは、スタートアップ企業のプロダクトが数多く並んでいた。触感型ゲームコントローラー『UnlimitedHand』や、忘れ物防止の超小型IoTデバイス『MAMORIO』、ウェアラブル型トランシーバー『BONX』など、ASCII STARTUPでもおなじみのIoTとハードウェア関連のスタートアップも数多く出展していた。

 テーブルで操作できる飲食店向けスマート注文システム『Putmenu』を開発するボクシーズは、シャープのモバイル型ロボット『ロボホン(RoBoHoN)』と連携するデモで、大企業とベンチャーの協業事例を展示していた。

 また展示場所自体はベンチャーブースではなかったが、meleapの開発するテクノスポーツ『HADO』ブースは、パナソニックや日立に囲まれて、ひと際大きなブースで体験できるカタチでサービスをお披露目していた。ヘッドマウントディスプレーと手首に巻くセンサーウェアラブルデバイスを利用するサービスで、腕の動きに合わせて、魔法のエフェクトなどをARで現実世界に重ねて表示する対戦格闘ゲームだ。会場でもスーツ姿の人も並び、盛り上がりを見せていた。すでにナンジャタウンやハウステンボスでも導入され、エンタメ業界でも注目されているプロダクトだ。

大手家電メーカーにも意欲的な変化

 ここまでベンチャーを見てきたが、これらはあくまでCEATEC全体で見ればまだまだ一部に過ぎない。

 変化が大きかったのは、大手家電メーカーのブースだ。今までのCEATECといえば、最新の家電をお披露目する展示会であったが、今年は完成品ではなくコンセプトモデルや研究技術、成果を大きなスペースを使って展示する企業が多かった。

 パナソニックブースでは画像処理と印刷を合わせたコンセプト技術“メイクアップシート”を展示。化粧台に設置されたカメラがシミの場所などを判定して、目立たないようメイクができるシートを印刷して、顔に張り付けるというコーナーは、大きな注目を集めていた。そのほか、人と人が触れ合うことで通信できる“人体通信応用デバイス”など、未来の製品に続く技術が設置された。

 富士通は参考出展で、網膜走査型レーザーアイウェアを展示。直接、網膜に映像を投影する技術で、従来のヘッドマウントディスプレーにはない利点をもつ。視力や目のピント調節の状態に影響を受けにくく、将来代替技術になりうるコンセプトモデル。これは富士通からのスピンオフベンチャー企業のQDレーザが開発する製品だ。CEATEC JAPAN 2016において、最高位の賞である“経済産業大臣賞”を受賞した。

 例年に続いて、オムロンの卓球ロボットやセブンドリーマーズラボラトリーの全自動衣類折りたたみ機などが会場で目立つのは変わらなかったが、一方でその他の企業も意欲的な取り組みが始まっていることが感じられ、完成品を求め訪れた来場者には驚きの変化となったのではないか。

長年業界を見てきたプロの目にはどう映った?

 ITジャーナリストの西田宗千佳氏は今回のCEATECについて、「家電の最新情報を知りたい人には役に立たないが、新しい技術の芽を発見したい業界関係者にはおもしろい、非常に“玄人好み”のイベントになった、と言ってもいい」と10月11日発売の週刊アスキーの巻頭コラムで語っている。

 じつは部品メーカーのブースが多く集まるゾーンは、これまでのCEATECでも、普段見慣れた家電や展示会然としたコンセプチュアルなものと比べると、ずっと実際的で、単純な驚きがあった。

 ベンチャーや大企業の新規事業として提案される、先端的で驚きのあるサービスや製品。そのような流れが部品や素材だけに閉じたものでなかったという点で、今回のCEATECには、運営側からのはっきりとした意思表示はあった。あとは、今回のテーマ変更を出展社、入場者がどう捉えて、「変えていく」かが重要だ。

 今年のCEATECのテーマは“つながる社会、共創する未来”。ここでつながった、大企業、ベンチャー企業、異業種、海外企業がどのような成果を見せてくれるか。来年以降のCEATECで見られたとき、変化は成功だったと言えるだろう。

 移りつつある時代の境界線上にあるCEATECがあるのは確実だ。来年、日本のIoT関連スタートアップや中小、大企業も含めた、先端技術による製品やサービスが披露され、ビジネス的にもより光を浴びる場所になっていることを祈りたい。

■関連サイト
CEATEC JAPAN 2016

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