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大谷イビサのIT業界物見遊山第24回

vCloud Airを経たからこそ実現したリアルハイブリッドクラウド

VMware Cloud on AWSが市場に与えるインパクトと国内市場

2016年10月14日 11時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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日本時間の10月14日、VMwareとAmazon Web ServicesはVMware環境をAWS上で提供する「VMware Cloud on AWS」を共同発表した。オンプレミスの仮想化という市場で大きなシェアを持つVMwareの戦略転換は、国内のエンタープライズ市場でのクラウド導入に大きな影響を与えるだろう。

VMware環境をAWS上で実現するハイブリッドクラウドサービス

 VMware Cloud on AWSは、AWSの物理サーバー上でvSphere、vSAN、NSXなどのいわゆるSDDC(Software Defined DataCenter)環境を実現するサービス。「シームレスに統合されたハイブリッドクラウド」と銘打たれており、オンプレミスまでを含むvCenterでの統合管理が可能になる。AWS上の任意のリージョンからVMware Cloudを立ち上げることができ、クラウド間でvMotionを用いたライブマイグレーションも実現。サブスクリプションと時間単位の課金が選択でき、既存のVMwareライセンスの持ち込みも可能になるという。提供は2017年の中旬を予定している。

 オンプレミスでの仮想化市場のリーダーであるVMwareは、近年AWSやAzure、Googleなどのパブリッククラウドの脅威にさらされてきた。これに対し、同社は通信事業者との提携の元、パブリッククラウドサービスである「vCloud Air」を展開。日本でも2014年にソフトバンクと合弁会社を設立し、IaaSサービスを開始したが、2017年3月に日本ロケーションでの提供を終了することを発表していた。一方で、2016年2月にはIBMと提携し、今回のVMware Cloud on AWSとほぼ同等のハイブリッドクラウドサービスをIBM Cloud上で提供することを発表している。

 今回の発表でVMwareはAWSやAzure、IBMとの競争をあきらめ、パブリッククラウドベンダーに対して同社の仮想化・クラウド技術を提供するパートナーになることが明確になった。一方、AWSはこれまでの弱点であったハイブリッドクラウドのソリューションを拡大することになり、PaaSレイヤーでのセールスフォース・ドットコムとの提携とあわせ、包括的なクラウドポートフォリオを実現することになる。

vCloud Airでの運用は無駄ではなかった?

 ここからは筆者の推測も大きい。このニュースを聞いた時に最初感じたのは、3年前にこの決断ができなかったのか?という点だ。パブリッククラウドベンダーの価格競争が激化し、明らかに後発であったvCloud Airの勝ち目はあまり高くなかった。オンプレミスで実績の高いVMwareの技術をパブリッククラウドにいち早く載せた方が、エンタープライズでのクラウド導入は一気に進み、名より実をとれただろうにと感じたわけだ。

 一方、自身のFacebookのやりとりで気づいたこともあるが、ようやく機が熟したとも言えるだろう。ソフトウェア企業であるVMware自身が物理データセンターの運用や管理に苦労したからこそ、インフラレイヤーをパブリッククラウドベンダーにゆだねるという今回の決定に至ったのかも知れない。その意味ではvCloud Airでの経験は無駄ではなかったとも言える。

 おりしもVMwareの親会社であるEMCとデルはデルテクノロジーズへと統合されたが、これまで通り独立した経営戦略がとれることが当初から明確だったため、今回のような決定に至ったのだろう。むしろ、デルテクノロジーズはこれまで通り、まだまだ大きいオンプレミスの市場を全力でカバーし、VMwareには今後成長が見込まれるパブリッククラウドに突っ込ませるという全方位展開を目論んでいるのかもしれない。いろいろ邪推は尽きない。

 一方、VMware Cloud on AWSの提供により、VMwareをベースにプライベートクラウドサービスを展開している事業者は軒並み事業の再編が求められるはずだ。おそらく数年に渡って、事業譲渡や自社データセンターの閉鎖が進み、IoTやAI、ビッグデータなど上位レイヤーのビジネスに大きくシフトしていく。それくらい今回の発表は大きい。いずれにせよ、仮想化が端緒についたばかりという企業もまだまだ多い日本のエンタープライズ市場において、クラウド導入が加速するのは間違いない。

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