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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第375回

業界に痕跡を残して消えたメーカー HDDシェアNo.1だったQuantum

2016年09月26日 11時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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 業界に痕跡を残して消えたメーカー、Connerの次はQuantumを紹介しよう。

 個人的な話をすると、台数ベースで言えば筆者が一番買ったHDDが、このQuantumだ。Lightningシリーズはずいぶん使い、その前のまだ1GB品が国内で売ってなかった時期には米国からわざわざProDriveを輸入したりもした。さすがにもう1台も手元には残っていないのだが。

Quantumの3.5インチHDD「Quantum trailblazer」

5インチHDDで業界No.1のシェア

 Quantum Corporationは1980年にサンノゼで創業された。創業者はJames L. Pattersonであるが、同名の作家とは別人である。

 Patterson氏は、IBMのサンノゼ研究所からMemorexという、まるでShugart氏の経歴に似たルートを辿るが、その後System Industriesというサンノゼのお隣のサニーベールに拠点を構えていたストレージメーカーに転職、その後同僚と一緒にQuantumを立ち上げる。

 ちなみに創業当時の他のメンバーも似たようなもので、IBM、Memorex、Shugart Associatesなどからの独立組で構成されていた。

 同社が最初に手がけた製品は、Q500シリーズと呼ばれるドライブである。これはSeagateのST-506互換ながらよりコンパクトにまとめたシリーズである。また、Hardcardと呼ばれるISAのI/Fカードも同時に提供しており、1986年にはこの2つを無理矢理1つにまとめたPlus Hardcardと呼ばれる製品もリリースしている。

Plus Hardcard。ドライブとI/Fカードの間の配線を見ると、I/FがST-506そのままであることがわかる。ちなみにこの製品のドライブ容量は20MBだそうだ

 さらにSCSIの普及が始まったことを受け、SCSIに対応したQ200シリーズも投入した。

1986年のQuantum Q200シリーズのカタログより。Q250(53MB)とQ280(80MB)の2製品が用意された。ちなみにフルハイトのQ160(160MB)も一応このQ200シリーズに分類されている

 このQ200シリーズは5.25インチプラッタを使いながらもハーフハイト(5インチベイ1本分)に収まっており、また5.25インチプラッタでは初めてEmbedded Servoという、プラッタ上にあらかじめサーボ情報を書き込んでおき、これを利用して正確な位置決めを行う方式を採用した製品でもある。

 このQシリーズは、非常によく売れた。1985年には、業界全体で47万5千台の5インチHDDが出荷されたが、Quantumはおよそこの20%のマーケットシェアを獲得しており、当時競合であったPrimal CorporationやMicropolis Corporation、Control Dataなどを抑えて業界No.1のポジションについている。

 実際1982年から1986年の業績を見てみると、前回取り上げたConner Peripheralの売上げほどではないのだが、1982~85年の間に急成長したことがわかる。

Quantumの1982~1986年の業績
年号 売上 利益
1982年 1365.6万ドル 18.6万ドル
1983年 4177.9万ドル 783.8万ドル
1984年 6706.9万ドル 1067.3万ドル
1985年 1億2034.9万ドル 2097.3万ドル
1986年 1億2124.4万ドル 2224.3万ドル

 ただ1986年は、売上こそ1985年並を確保しつつも、3.5インチドライブ製品の投入が遅れ、これが理由でOEM先を2社ほど失っている。

 取締役会はこの状況を憂慮し、Patterson氏を解任。同社の子会社であったPlus Development CorporationのCEOをしていたStephen M. Berkeley氏をCEOに、そのBerkeley氏の補佐をしていたDavid A. Brown氏をCOOにする。

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