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日本唯一のレコードプレス工場で、アナログの魅力を再発見

2016年08月31日 19時49分更新

文● ASCII

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 プレーヤーのテクニクス、レコード盤製造の東洋化成、レコード針のナガオカがコラボして進めている“レコード再発見プロジェクト”。その第2弾イベントが、東洋化成の末広工場で開催された。

 カッティングからプレスまでができる日本では唯一の工場(つい最近までは東アジア唯一だった)を公開したほか、アーティストの土岐麻子さんを呼んだトークイベントなども実施した。

日本だけでなく、中国や台湾からの発注も多い

 東洋化成の末広工場については、過去の記事でも紹介した。持ち込まれたソースをカッティングして原盤を作る工程から、レコードとしてプレスする工程まですべてをできる日本唯一の工場だ。プレスマシンは7台が稼働しており、1台あたり800枚程度の生産が可能だ。

 ラッカー盤に溝を掘るカッティングマシンを始めとして、1970年代に海外で作られた古い設備が現在でも稼働している。メーカー自体が解散していたり、修理ができないものもあるが、自社の努力でメンテナンスや修理などができる体制を作っているとのこと。

ドイツのノイマン製のカッティングマシン。1970年代に製造されたモデルだ。
最近はデジタルのファイルとして持ち込まれることが多いが、オープンリールなどアナログソースにももちろん対応できる。
簡単なEQ調整のうえアンプに送る。
アンプ部分。重要な部分だという。
このように溝を掘っていく
サファイア製のカッターは非常に小さい。使用していくと熱を持ち、これが滑らかな切削面を作れる理由になっている。
中央のゲージに、どのぐらいの間隔で溝が掘られるかが示される。この間隔が重要。
ルーペが付いていて、溝の状態を確認できる。
工場エントランス部分のロビーには、右のラッカー盤から作られた、マスターやプレスに使用するスタンパーなどのサンプルが飾られている。
これがレコードをプレスする機械
余った部分。すごく熱い。
スタンパー。ラベルを入れて強い力で挟む。
ドーナツ盤の場合は、最後に中央部分をくりぬく。

懐かしさを感じさせるレコード、新しさを感じさせるレコード

 元Cymbals(シンバルズ)の土岐麻子さんが登壇するイベントでは、昨年12月に発売したアナログアルバム「Bittersweet」から、イベントのために「Beatiful Day/ラブソング」をシングルカットした7インチ版を製作。9月9日の発売が予定されているアナログプレーヤー「SL-1200G」を始めとした、テクニクスのシステムで再生した。

イベント用にカットした7インチシングルを手にする土岐さん。

 土岐さんは、冒頭「レコードで(曲を)出すとDJからのウケがいい」とコメント。アナログレコードの再燃について、「自分たちの世代ではアナログというとどこか懐かしいものととらえがち」だが、より若い世代は「情報が少ないアナログの音を個性としてとらえて興味を持っているというのが新鮮で、未来があるような気がして面白いなと思います」とコメント。音楽表現のための一つの提案のようにとらえているように感じているとした。

みずから針を落とす。ちなみに普段はオートプレイの機種を使っているそうで、緊張していた

 アルバム「Beautiful Day」はCD盤が先行したが、アナログ盤では「Gift ~あなたはマドンナ~ 」等、代表曲をボーナストラックとして付けたLP2枚組でリリースしている。楽曲については「レトロなものを表現した作品なので、(アナログにすると)いい意味で古く、ぴったりマッチして、聞きたかった音はこれだと思えた」とコメント。

 Beautiful Dayでは、タマネギの皮を向いたり、区民プールに行ったり……と、ひとりで過ごす1日が描かれているが、その歌詞の中には「針を置く」というアクションも入っている。その理由として土岐さんは「ひとりで過ごしている時間の中でアナログレコードを聴く時間は外せないな」とコメント。生活の中での音楽、そしてアナログとのふれあい方の一端を参加者に垣間見せた。

 そして最後に「私の世代にとっては、アナログレコードを聴くというのは生活の一部であると同時に、永遠の憧れという気持ちがどこかあって。ミュージシャンが“アナログで作ってアナログでリリースできる幸せ”が長く続くようにがんばっていただきたいなと思います。よろしくお願いします」と締めくくった。

日本の力を結集してアナログレコードを盛り上げる

 また3社からもそれぞれ担当者が登壇した。

 パナソニック 技術本部ホームエンターテインメント開発センター係長 志波正之氏は、「MK6まではDJ専用機みたいな認識かもしれないが、新しいSL-1200Gについては外観はともかく中身はHi-Fi向けである」とコメント。ドライブにしてもアームにしても、ブランニューの設計である点を強調した。合わせてナガオカ針について「小さいころレコード店にナガオカ製のレコード針が並んだラックがあったのを覚えている」とした。

左からナガオカの寺村氏、歌手の土岐さん、パナソニックの志波氏、東洋化成の石丸氏

 東洋化成については「日本唯一のプレスメーカーで、カッティングの技術も非常に高い」などとコメントした。SL-1200Gとカートリッジ「MP-500」の組み合わせに関しては、「高級カートリッジというとMCタイプに関心が行きがちだが、MP-500はMMだがレンジ感が広くて非常に優れた再生ができる」とコメントした。

SL-1200Gの分解カット
特徴となるダイナミックドライブ

 ナガオカの技術アドバイザー 寺村博氏は「MP-500はハイエンドのカートリッジで、20kHzまでフラット。クロストークも25dB以上と高性能。とても静かなカートリッジと言える。レコードの情報をすべて取り出せると思う。針の素材としてボロンを使っている。最近では入手しにくなっているようですが、当社は十分にストックしてあり供給には問題がない」とした。

 「本当に自分のほしい音を追求するとなると、CDよりやはりアナログになる。いろいろな部品を自分で選んで使うことで音質をカスタマイズできる。趣味としては高尚な趣味ですが、十分なキャパシティを持っていると思う」

 ちなみに最近、桑田佳祐さんのソロアルバム『ヨシ子さん』の中で「“ナガオカ針”しか記憶にねぇよのフレーズ」があった。いろいろな問い合わせが来ているとのこと。「桑田さんも当社製品を使ってくれているのではないかなと思っています」とした。

 東洋化成レコード事業部部長の石丸仁氏は、品質へのこだわりについて「特にユニーク性はないが、日夜品質を管理するため努力しています。旧JIS規格に準拠して、それを満たさないものはすべてNGとしています」「すべての工程が職人的な作業を要求される。操作の仕方はすぐ覚えられるが、いろいろな条件がかかると時間がかかり、2年や3年はかかってしまう。製品づくりにも職人技が必要」などと長年培ったノウハウを実直に継承したモノづくりを続けている点を紹介した。

 なお東洋化成では、昨年から日本レコード協会から“レコードの日”(毎年11月3日)の名称を使う権利を引き継ぎ、店頭だけではなくネットを含めて、発売日を集め、レコード販売が活性化するよう働きかけているとのこと。詳細は9月上旬に発表されるという。

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