このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

クロスクラウド戦略が見えたVMworld 2016レポート 第1回

AWSもAzureもIBM Cloudも統合運用可能に、ヴイエムウェア ゲルシンガーCEO基調講演

VMworld 2016で“クロスクラウドな”新アーキテクチャ発表

2016年08月31日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 ヴイエムウェア(VMware)が米国ネバダ州ラスベガスで開催中の「VMworld 2016」。会場には約2万3000人の参加者が詰めかけ、日本からも同社顧客やパートナーなど約300人が参加した。

 今年のVMworldのテーマは「be_TOMORROW」。デジタル時代においては、ビジネスにおけるIT活用は不可欠となる。IT部門はそこに向けた準備を行わねばならず、ヴイエムウェアがそれを支援していくことを呼びかける意味を持たせたという。

ヴイエムウェア CEOのパット・ゲルシンガー(Pat Gelsinger)氏。先日、ラケットボールをプレイ中に足を負傷し、現在はやっと「ゆっくりだが歩けるようになった」とのこと

VMworld 2016は、ラスベガスのマンダレイベイコンベンションセンターで開催された。ラスベガスでの開催は2011年以来、5年ぶり

クラウドにはまだまだ成長余地が残されている

 「現在は、これまでの歴史にないような破壊的な変化が起きている。だが、そんな時代に生きているということは、チャンスがあるということでもある」。8月29日午前の基調講演に登壇したヴイエムウェア CEOのパット・ゲルシンガー(Pat Gelsinger)氏はこう切り出した。

 「Googleの検索ワードでトップになっているのが『デジタルトランスフォーメーション』。すべてのビジネスプロセスが、クラウドやモバイルなどによって牽引される時代が訪れており、『デジタル』と『トラディショナル』が共存する時代が訪れている」(ゲルシンガー氏)

 すでに多くの業界リーダーが指摘しているとおり、すべての企業が「デジタル変革(デジタルトランスフォーメーション)」に取り組まなければならない時代がやって来ている。しかし、企業の現実はその変化にまったく追いつけていない。IDCのデータによると、デジタル変革のリーダーと呼べる企業はわずか20%にすぎず、それ以外の企業は「旧来の企業文化とレガシーなITシステムに縛られ、技術進化を享受できない」段階にあるという。企業のクラウド活用もまだまだ余地が残されている。

 「(グーグルの)エリック・シュミット氏が初めて『クラウドコンピューティング』という言葉を使った2006年当時、パブリッククラウドを使うワークロードは全体のわずか2%で、残りの98%は従来型のITシステムだった。その後も、2011年には87%が、2016年には73%が、依然として従来型のITシステム上で動いている。パブリック/プライベートを合わせたクラウドシステムが半数を占めるようになるのは2021年、さらにパブリッククラウドだけで過半数を占めるには2030年までかかる」(ゲルシンガー氏)

企業ワークロードの過半数がパブリッククラウド上で稼働するようには、2030年まで待たねばならないとゲルシンガー氏

 裏を返せば、クラウド事業者にはまだ巨大な成長余地が残されているということだ。ゲルシンガー氏は、今年、サービスプロバイダーのデータセンターサービスを利用する企業が、データセンターを自社で構築する企業を初めて上回ったことに触れたうえで、ホスティング市場は現在の600億ドルから2021年には1100億ドルに拡大すること、マネージドクラウドは年18%の成長率を示していることなどを紹介した。

 「モダンで、効率性が高いエンタープライズグレードのクラウドデータセンターが登場してきていることがその背景にある。120カ国、4200社のvCloud Air Networkパートナーには大きなチャンスが生まれる」「これまでは、パブリッククラウドの利用が拡大することで、IT業界は小さくなっていくのではないかと指摘されていた。しかし、わたしはそうは思っていない。クラウド活用が根付き、ITのコスト効果が高まれば、最終的にはIT投資がさらに拡大すると考えている」(ゲルシンガー氏)

 かつて、ゲルシンガー氏がインテルの幹部を務めていた時代には、「CPUが高性能化すると使われるCPUの数が減り、CPUの出荷数も減ってしまう」と言われたことがある。しかし現実には、高性能なCPUが低価格化することで、むしろCPUの出荷数量は増加した。「クラウド市場でも同じことが起きる」というのが、ゲルシンガー氏の主張だ。

 さらにゲルシンガー氏は、IoTの浸透もクラウドプロバイダーの事業機会につながると見ている。IoTデバイスの数は今後5年で4.5倍の180億個になり、2019年には人間が利用するデバイスよりもモノどうしがつながるデバイスのほうが多くなる。そして、その大半が双方向のデータのやり取りをするため、よりセキュアにデータを蓄積/処理する環境が求められるようになるからだ。

前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事