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松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 第127回

今年のテーマは諦めからの脱却―TOMODACHIソフトバンクリーダーシッププログラム2016

2016年08月19日 12時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII.jp

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 ソフトバンクは、東日本大震災以降、同社創業者の孫正義氏の出身大学でもあるカリフォルニア大学バークレー校に、地域の高校生を招いてリーダーシッププログラムを実施してきました。今年も100人の高校生がバークレーの大学寮に滞在し、3週間の米国での学びの機会を得ました。

 米国滞在を前に、100人の高校生たちにはiPadが提供され、コミュニケーション、情報収集、資料作成、プレゼンに、と活用していました。気になったのは、今回提供されたセルラー版のiPad 2。

 iOS 9ではまだまだ現役の機種ではありますが、iOS 10にはもう対応しません。すでに5世代も新しい機種が出ているので、そろそろよりパワフルなデバイスへと刷新してあげた方が良いのではないか、と思ってしまいました。

 そのこともあってか、高校生の中には、自前のMacBook Airを持ち込んでいる人もちらほら見かけました。

今年も100人の東北の高校生がバークレーを訪れました

場所は、UC Berkeleyの真新しいデザイン研究棟で

 2016年のプログラムは、新たに、The Jacobs Institute of Design Innovation(http://jacobsinstitute.berkeley.edu)が入るJacobs Hallという場所で行われました。

 真っ白で天井の高い広々とした空間、フレキシブルな配置が可能な可動式の椅子と机、透明なガラスで区切られた10人ほどが入れるワークショップスペースと、非常にモダンなデザインが施された校舎。今回は使っていませんでしたが、プロトタイピング向けに、3Dプリンタやレーザーカッターといったものづくりの設備も完備している場所です。

 ここで100人の高校生は、リーダーシップと都市のデザインを学び、バークレーの隣町のオークランドを舞台にした「若者の活動によって都市に変革を起こす」アイディア作りを行ってきました。

 ただ、オークランドはちょっとインパクトが強すぎたかもしれません。高速を車で流していると狙撃され、ポケモンGOをプレーしていると強盗に遭う、そんな地域です。フィールドワークで見聞きしたテーマとなる街は、彼らが普段住んでいる日本との断絶もより大きかったようです。

 そして最後の1週間で、自分たちの地域における「変革のアイディア」を作り上げ、8月9日の最終発表会に臨んだのです。

 前日は明け方の3時、4時までプレゼン作りに励んでいたという生徒たちに、疲れの色も見えましたが、6つのグループに分かれて、100人全員が個人でプレゼンを行う方式は、主体性を持って、自分の学びを披露する良い機会になったことでしょう。

テーマの変化から感じる、問題の変化

 筆者はここ数年、TOMODACHIソフトバンクリーダーシッププログラムを毎年取材してきました。そこで感じる、高校生たちの問題意識や心境の変化についても、非常に興味深く感じています。

 ちなみに、今回バークレーを訪れていた高校1年生から3年生は、震災時(5年前)は、10歳から13歳、つまり小学校高学年から中学1年生の時に、東日本大震災を経験したことになります。地域に残った家族もいれば、東京に移り住んだという家族もいました。

 これまで訪れてきた高校生たちは、「震災とその直後」という共通体験による連帯感が強かったのですが、震災経験がより低年齢になってきたこと、そして時間の経過が進んでいることから、抱えている問題や見ている世界がより多様化している傾向があります。

 その結果が、高校生たちが選んだテーマにも現れてきました。

 昨年までの発表で多かったのが「東北の現状を知って欲しい」という情報発信に関するテーマでした。地域ごとに、あるいは世代ごとに異なる状況を、画一的なメディアで片付けられたくないという思いから、等身大の自分たちの街を伝えたいという思いが強くなっていたそうです。

 しかし今年は、東北の外への情報発信ではなく、自分たちの連帯感を作ったり、より強くしたい、という「祭り」や「イベント」へのアイディアが目立った点に変化を感じました。

 加えて、メンタルヘルスをテーマとするプロジェクトへの取り組みも、新たに台頭してきたテーマです。気づかぬうちに震災という心の傷を受け、これがだんだん顕在化し、それに気づき始める。そんな時間の経過によって生じる新たな問題に、どう対処すべきか。 こうしたテーマは、同じように聞いている他の高校生からも共感を得ていたように思います。

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